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058 ルスタリオ暦
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「昨日はカジノのクエストがあったんでしょ?」
「え……あ、ああ……うん」
隣のシマンを見ると目を逸らされた。ヒナに喋ったのはシマンのようだ。まさか、追加報酬のチップを全額使い切ったとか余計なことは言ってないよな?
「それで、どういった経緯でロキちゃんが私たちのパーティーに?」
ヒナが俺の隣に立っているロキに視線を向ける。
「あの、ちゃん付けは止めていただきたいのです。前にも言いましたがロキと呼んでください」
「そうだよヒナちゃん。ロキがそう呼んでくれと言ってるんだから、呼び捨てでいいじゃん」
「……あなたに言われると少し腹立たしくなりますね」
ロキが嫌そうな顔で言うと、シマンは「なんで俺だけ!」と軽くショックを受けたようだ。
昨日、六番カジノでロキと再会した俺たちは、彼女からパーティーに入れて欲しいと言われた。
理由は山賊の再結成を目論んでいるかもしれない狼頭の獣人を見つけるためだ。どうやら、今後俺たちが山賊と遭遇しても連絡を寄越さないのではと疑っているらしい。そこで俺たちに同行すると申し出たのだった。
ヒナに昨日の話をかいつまんで説明する。
「そうだったのね。ロキ……ちゃん。えっと、なんか妹ができたみたいで可愛いから、私はロキちゃんって呼びたいわ」
「えっ……妹……ですか?」
ロキが一瞬照れたように目を泳がせたのを俺は見逃さなかった。
「ごめんなさい。やっぱり駄目かしら? 本当に嫌なら無理強いはしないけれど……」
「……いいですよ、別に」
今度はハッキリわかるぐらいデレた。……なんだ? ヒナみたいに魅力的な女の子は同性からも好意的に捉えられるということか。
俺たち三人のパーティー結成歴は長いのか訊かれるが、期間は短いしリアルでは同じ学校で知り合いだと伝えた。
ロキは俺が簡単にリアルの話を出したことで警戒心が薄れたのか、自身が高校生だと教えてくれた。口には出さなかったがアバターが中学生ぐらいの容姿だったので、もっと年下のイメージを持っていたが、俺たちより一つ下の高校一年生らしい。
同じ高校生ということで親近感が湧く。ヒナなんかはロキに抱きついていた。さすがと言う他ない。これはスクールカースト上位のなせる技だろう。コミュ力が高い。
ヒナがいるおかげでロキとも上手くやれそうで、俺は安堵する。
「よし、じゃあ俺たちは今から四人パーティーだ。ヒナとシマンもロキとフレンド登録をしたほうがいいんじゃないか?」
「環も入れて五人ですね」
大事な仲間を忘れるなと言わんばかりにロキが訂正する。
「そうね。ロキちゃん、フレンド申請送ったから確認してみて」
「あ、俺も送ったぞ」
三人が互いにフレンド登録を済ませる。その流れでロキのパーティーにいた黒猫の環ともフレンド登録をした。
現在のレベルは俺が40、ヒナが53、シマンが48で、環が54、ロキが55だ。
チート級のバフを付与できる【使い魔】の環と【魔導師】のロキ。どちらもクラス3ジョブで非常に強力だ。
ロキたちが加入して大幅に戦力は向上したことだろう。
「それにしても、お店のピンチを救ったわりには、報酬が10,000Gだなんてついてないわね。☆印が付いてたんじゃ無視できないものね」
ヒナがカジノクエストに話を戻した。
「……ああ、そうだな」
どやらシマンは追加報酬自体をなかったことにしたようだ。まぁ、それがいいだろう。ロキも知らない話だし口を挟むことはないはずだ。
「あ、そう言えばルスサイまでもうすぐだなー」
カジノの話に戻したくなかったシマンが、話題を変えるように俺の知らない情報を出した。
「ルス……サイ?」
初めて聞く単語を確かめるように口に出してみる。
「ルスタリオ祭。略してルスサイよ。でも、まだ十一月に入ったばかりだから二ヶ月も先よ」
もちろん<DO>内での話だ。現実世界では夏真っ盛りの八月二十四日である。
<DO>内の日時は視界の端に表示されていて、現在は『ルスタリオ暦2435年 11月3日 午後12:18』となっている。
現実世界の西暦に対し、<DO>ではルスタリオ暦というものがある。
<DO>のサービス開始日は現実世界の日本時間で西暦二〇五〇年四月一日午前一時で、ルスタリオ暦二四三四年四月一日午前四時だ。
<DO>内では現実世界の四倍ものスピードで時間が経過するので、ゲームが始まってからこの世界では一年半もの月日が流れているのだ。
シマンが言っていたのは一月一日に実施されるであろう年越しイベント――ルスタリオ祭、通称ルスサイ――のことで、前回のルスタリオ暦二四三五年一月一日に年越しを祝うお祭りイベントが実施されたそうだ。
運営から次回も実施されるというアナウンスはないのだが、多くのプレイヤーは期待しているらしい。
各地方の主要な町では祭りの縁日のように屋台が並び、大通りではパレードが行われたりしたそうだ。
その当日にだけ発生するクエストや、出現するモンスターがいたらしい。ログアウトしたときに攻略サイトでも見ておくか。
なんにせよ新たな仲間が加入した。
もうこのパーティーで今すぐにでも<ウルカタイの迷宮>に挑戦したいぐらい、気持ちは高まっている。
しかし、ヒナのお兄さんを探すことに加えて狼頭の獣人か。ザックスほど厄介ではないだろうが、気を引き締めておいたほうがいいだろう。
「え……あ、ああ……うん」
隣のシマンを見ると目を逸らされた。ヒナに喋ったのはシマンのようだ。まさか、追加報酬のチップを全額使い切ったとか余計なことは言ってないよな?
「それで、どういった経緯でロキちゃんが私たちのパーティーに?」
ヒナが俺の隣に立っているロキに視線を向ける。
「あの、ちゃん付けは止めていただきたいのです。前にも言いましたがロキと呼んでください」
「そうだよヒナちゃん。ロキがそう呼んでくれと言ってるんだから、呼び捨てでいいじゃん」
「……あなたに言われると少し腹立たしくなりますね」
ロキが嫌そうな顔で言うと、シマンは「なんで俺だけ!」と軽くショックを受けたようだ。
昨日、六番カジノでロキと再会した俺たちは、彼女からパーティーに入れて欲しいと言われた。
理由は山賊の再結成を目論んでいるかもしれない狼頭の獣人を見つけるためだ。どうやら、今後俺たちが山賊と遭遇しても連絡を寄越さないのではと疑っているらしい。そこで俺たちに同行すると申し出たのだった。
ヒナに昨日の話をかいつまんで説明する。
「そうだったのね。ロキ……ちゃん。えっと、なんか妹ができたみたいで可愛いから、私はロキちゃんって呼びたいわ」
「えっ……妹……ですか?」
ロキが一瞬照れたように目を泳がせたのを俺は見逃さなかった。
「ごめんなさい。やっぱり駄目かしら? 本当に嫌なら無理強いはしないけれど……」
「……いいですよ、別に」
今度はハッキリわかるぐらいデレた。……なんだ? ヒナみたいに魅力的な女の子は同性からも好意的に捉えられるということか。
俺たち三人のパーティー結成歴は長いのか訊かれるが、期間は短いしリアルでは同じ学校で知り合いだと伝えた。
ロキは俺が簡単にリアルの話を出したことで警戒心が薄れたのか、自身が高校生だと教えてくれた。口には出さなかったがアバターが中学生ぐらいの容姿だったので、もっと年下のイメージを持っていたが、俺たちより一つ下の高校一年生らしい。
同じ高校生ということで親近感が湧く。ヒナなんかはロキに抱きついていた。さすがと言う他ない。これはスクールカースト上位のなせる技だろう。コミュ力が高い。
ヒナがいるおかげでロキとも上手くやれそうで、俺は安堵する。
「よし、じゃあ俺たちは今から四人パーティーだ。ヒナとシマンもロキとフレンド登録をしたほうがいいんじゃないか?」
「環も入れて五人ですね」
大事な仲間を忘れるなと言わんばかりにロキが訂正する。
「そうね。ロキちゃん、フレンド申請送ったから確認してみて」
「あ、俺も送ったぞ」
三人が互いにフレンド登録を済ませる。その流れでロキのパーティーにいた黒猫の環ともフレンド登録をした。
現在のレベルは俺が40、ヒナが53、シマンが48で、環が54、ロキが55だ。
チート級のバフを付与できる【使い魔】の環と【魔導師】のロキ。どちらもクラス3ジョブで非常に強力だ。
ロキたちが加入して大幅に戦力は向上したことだろう。
「それにしても、お店のピンチを救ったわりには、報酬が10,000Gだなんてついてないわね。☆印が付いてたんじゃ無視できないものね」
ヒナがカジノクエストに話を戻した。
「……ああ、そうだな」
どやらシマンは追加報酬自体をなかったことにしたようだ。まぁ、それがいいだろう。ロキも知らない話だし口を挟むことはないはずだ。
「あ、そう言えばルスサイまでもうすぐだなー」
カジノの話に戻したくなかったシマンが、話題を変えるように俺の知らない情報を出した。
「ルス……サイ?」
初めて聞く単語を確かめるように口に出してみる。
「ルスタリオ祭。略してルスサイよ。でも、まだ十一月に入ったばかりだから二ヶ月も先よ」
もちろん<DO>内での話だ。現実世界では夏真っ盛りの八月二十四日である。
<DO>内の日時は視界の端に表示されていて、現在は『ルスタリオ暦2435年 11月3日 午後12:18』となっている。
現実世界の西暦に対し、<DO>ではルスタリオ暦というものがある。
<DO>のサービス開始日は現実世界の日本時間で西暦二〇五〇年四月一日午前一時で、ルスタリオ暦二四三四年四月一日午前四時だ。
<DO>内では現実世界の四倍ものスピードで時間が経過するので、ゲームが始まってからこの世界では一年半もの月日が流れているのだ。
シマンが言っていたのは一月一日に実施されるであろう年越しイベント――ルスタリオ祭、通称ルスサイ――のことで、前回のルスタリオ暦二四三五年一月一日に年越しを祝うお祭りイベントが実施されたそうだ。
運営から次回も実施されるというアナウンスはないのだが、多くのプレイヤーは期待しているらしい。
各地方の主要な町では祭りの縁日のように屋台が並び、大通りではパレードが行われたりしたそうだ。
その当日にだけ発生するクエストや、出現するモンスターがいたらしい。ログアウトしたときに攻略サイトでも見ておくか。
なんにせよ新たな仲間が加入した。
もうこのパーティーで今すぐにでも<ウルカタイの迷宮>に挑戦したいぐらい、気持ちは高まっている。
しかし、ヒナのお兄さんを探すことに加えて狼頭の獣人か。ザックスほど厄介ではないだろうが、気を引き締めておいたほうがいいだろう。
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