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第2章 「俺の【成り上がり】編」(俺が中二で妹が小四編)

第37話 俺は星川先輩とツイスターゲームをした

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 【四大元素】の繊細なコントロールを身につけた俺は、今や無敵と言っても過言ではない。
 俺はどのくらい強いんだろうか。【異能】ではない金髪ピアスたち櫛木グループじゃ相手にならない。俺は無性に【四大元素】を実戦形式で試したい欲求に駆られた。
 そこで考えたのが模擬戦だ。組織――御伽原建築本社ビル――にある、訓練施設を使って組織の【異能】相手に、俺の【四大元素】で戦うのだ。
 この名案を思いついた俺は、早速教官のお姉さんに連絡をとった次第だ。

 夕食後のこの時間、俺はスマホを見ていた。表示されている連絡先は、星川先輩だ。バレンタインデー以降、先輩とは良く話をするようになった。今ではすっかり馴染んで「星川先輩」と呼んでいる。ホワイトデーのお返しに贈ったハンカチも、喜んでくれていたし俺への好感度もさぞや上がっているだろう。ちなみに俺にチョコをくれた女性陣には漏れなくお返しを渡したため――大石には渡してないが別に構いやしない――、俺のお年玉は枯渇寸前だ。

 菜月は今風呂に入っている。アイツが風呂から上がったら、寝るまでの間少しだけTVゲームで遊ぶ約束をしている。なので、今のうちにやるべきことを済ませよう。
 俺はスマホから星川先輩の連絡先を呼び出して、電話をかけた。先輩はすぐに出たので用件を伝える。先輩からオッケーが出たので、俺は明日に備えることにした。ベッドの下を覗き込む。以前買ってから一度も使ってなかったコレを、通学カバンとは別のバッグに押し込んだ。


    ◇ ◇ ◇


 翌日の放課後、俺は電車で御伽原建設本社ビルに来ていた。
 ここで、星川先輩と待ち合わせをしている。
 予定時間の五分前に、先輩は手を振りながら駆け足でやってきた。

「ごめーん、待ったー? あーし、めっちゃ急いだんだけど、電車乗り遅れてぇ」
「いや、五分前ですから、大丈夫ですよ。俺も今着いたばっかりなんで」
「昨日急に隼人っちから、電話きてー、あーしホントにいいタイミングって思ったのー」

 俺は今日このビルの地下にある訓練施設で、星川先輩と模擬戦をする約束を取りつけた。
 ビルに入り受付で教官のお姉さんを呼んでもらう。それほど待たずにお姉さんが来てくれて、一緒に地下の訓練施設へと向かった。
 お姉さんは別の部屋で自主トレをするらしいので、俺は先輩と模擬戦を始めることにする。普通に実戦形式の模擬戦をすると言ったら、お姉さんが立ち会うと言い出すのは織り込み済みなので、俺は二人で自主トレをするとしか言っていない。
 俺と先輩は訓練着に着替えを済ませ、今向かい合っている。

「先輩、ただ模擬戦をするだけじゃ面白くもないんで、負けたほうが罰ゲームってことにしません?」
「んー、いいねー! 面白そうじゃん! 罰ゲームは何にするー?」
「ツイスターゲームなんてどうですか?」
「何それ? あーし知らないんだけど?」
「簡単なゲームですよ」

 俺はサラリと触りだけ簡単に説明して、星川先輩の了承を得た。
 模擬戦の前に時間をかけて、しっかり柔軟などのストレッチをして体を温める。
 こうして、俺と先輩の模擬戦が始まった。
 まず動いたのは先輩だ。お互い五メートル離れた距離だが、全力ダッシュで一気に詰めてくる。俺は先輩が繰り出した右の掌底を、【四大元素】で軌道を変えて捌く。動きが見え見えですよ先輩。しかも今のでわかった。先輩も【異能】で掌底を強化していたはずだから、その軌道を変えさせたと言うことは俺の【四大元素】のほうが上回っているという証明だ。
 俺は空振りした先輩の腕を右手で掴んで引っ張ると、体勢を崩した先輩の右脇腹に左フックをお見舞いした。俺の攻撃を食らった先輩は横に吹っ飛ぶ。

「インパクトの瞬間ずらされたか」
「いったー! 何そのパンチ力! あり得なくない?」

 星川先輩は脇腹を押さえながらも、苦しそうに片目を瞑って立っている。
 それでも相当のダメージが通ったか。
 それから俺は色々試した。【四大元素】を押さえてダメージが通る限界を探ったり、その逆で【四大元素】を押さえてダメージを通さない限界を体に叩き込む。繰り返し反復することで、体に感覚を覚えさせる。一番キツかったのは【四大元素】を使わないで、先輩の攻撃を受けたらどうなるかと言う実験だ。正直、死ぬかと思った。怪我こそしなかったものの、胃の中のものをリバースしかけた。ちなみに直前でビビってしまい、無意識に最低限の【四大元素】を纏っていたようだ。でなけりゃ、骨の一本や二本は折れてたかもしれない。

 五分ほど攻防を繰り返すと、お互いヘロヘロで息も上がっていた。
 よし、十分実験できたし、ここらで終わりにするか。
 俺は最後の攻防に移ろうと息を整える。星川先輩もそのつもりのようだ。

「はぁ……決着を、……つけましょうか!」
「あーしも……、そろそろ……限界っ!」

 俺が床を蹴って右拳を振りかぶる。それを見た星川先輩は急制動をかけて、後ろ回し蹴りで迎撃態勢に入った。反時計回りで回転した先輩の左足が、俺の左側頭部を狙う。
 だけど、読めてました先輩。
 俺は【四大元素】で右腕を加速させると、そのまま先輩の左足をブン殴った。
 バランスを崩して片膝をついた先輩の頭に、俺の左手が添えられる。これで相手が火村みたいな凶悪な【逆徒】なら、頭をドカンだ。

「俺の勝ちっす」
「あー、負けたー! ……うっそでしょ!?」

 星川先輩はよっぽど悔しかったようだ。先輩が【異能】で最大加速した蹴りのスピードを俺の【四大元素】のスピードが上回った。しかも俺は途中まで、先輩のほうが早いと思わせてからの本気の【四大元素】だ。初めから俺もトップスピードだったら、先輩も蹴りで合わせることはなかったかもしれない。
 いい勉強になった。

 五分後。

「さて、ツイスターゲームを始めましょうか」

 俺は昨日の夜に用意していたバッグから、ツイスターゲームを取り出した。まさか、これを女性とすることになろうとは。にんまり。

「それ、いつも持ち歩いてんの?」
「そんわけないでしょう! 今日は星川先輩とやるために持ってきただけです!」
「……あ、そぅなんだ……」

 怪訝な顔で見つめる星川先輩を無視して、俺は粛々とマットを広げる。このマットには緑・黄・青・赤の四色の丸が、それぞれ六つずつ描かれている。
 これをスピナーと呼ばれるルーレットを回して、指定された部位と色――右足・赤、左手・緑という風に――を押さえていくだけの簡単なゲームだ。
 二人で遊ぶ場合は交互にスピナーを回すのだが、俺にはこのスピナーを先輩に触らせたくない理由があった。なので、今回は罰ゲームということもあり、俺がスピナーを回して、先輩がひとりでツイスターするという遊び方で楽しもうと思う。
 俺は先輩に遊び方を説明すると、先輩は「ちょ、その前に着替えていいっしょ?」と訊いてきた。
 ふむ、警戒したかな? 流石に薄々の訓練着でやれば、大変なことになるかもしれない。でも、先輩今日は制服でしたよね? それはそれでアリだな。
 俺は大きく首肯した。
 先輩が着替え終わるのを待ってる間に、俺も着替えておこう。色々と困るからな。
 そして先輩の着替えが終わり、罰ゲームのツイスターゲームが始まる。
 ゲームは三回行うことにした。
 それでは一回戦スタート!
 俺はスピナーを回して、指定された部位と色を告げる。

「左手、青」
「こんなの簡単じゃん。はい」

 星川先輩はこのゲームを舐めていた。俺は次々とスピナーを回していく。

「左足、緑」
「はい、楽勝。次は?」
「左足、赤」

 二分もすると、徐々に星川先輩の顔から余裕が消えていった。
 先輩、このスピナー俺の【四大元素】でどうにでもなるんです。先輩がスピナーに触れればそれに気づいたかもしれない。だから俺はこのスピナーを触らせたくなかったのだ。

「あっつ……、ちょ、隼人っち。あーし今……背中吊りそうなんだけどっ」
「頑張って星川先輩! ブリッジ耐えてっ!」

 星川先輩は体をプルプルしながら、ブリッジしている。もちろん俺の位置からはパンツが丸見えだ。た、堪らん! ありがとうございますっ!
 しかも必死にブリッジしている先輩からは、俺が見えないという好条件。 
 スンスン。
 何とも心地よいスメルが、俺の鼻を刺激する。

「えっ、何!? 嘘でしょ!? 隼人っち、顔近づけてるっしょ? 息が当たって……、あんっ、匂いを嗅ぐな変態っ! 殺すよ?」
「俺に息をするなと? いくら俺の【四大元素】でも、それは無理ですよ。とりあえず、深呼吸します」

 星川先輩のパンツから俺の鼻先までの距離僅か十三センチ。エキサイトし過ぎて、身を乗り出していた俺だった。

 一回戦終了。
 新しいルールが追加されました。
 俺はこの定位置から動いてはいけない。何があろうともだ。
 では、第二回戦スタート!

「星川先輩、プルプルしてますよ。大丈夫ですか?」
「くっ……! 話しかけないでっ……!」

 今、俺の目の前では星川先輩が両足を開くという、とんでもなく熱い光景が広がっている。
 所謂、M字開脚というやつだ。
 俺は先輩のM字開脚を食い入るように凝視する。目の前にパンツがあってそれを見ないやつは、男じゃない。

「あっ……、隼人っち。それはダメっしょ!」
「いや、俺は定位置から一歩も動いてないですから。顔すら動かしてないですもん。これは不可抗力というやつです。じー」
「あー、もうダメっ!」

 二回戦終了。

「じゃあ、三回戦始めましょうか?」
「はぁ……、ちょっと休憩させて……くんない? はぁっ……」
 
 星川先輩が息を切らせているので、休憩がてらに色々と話をする。
 
「あーし、もうすぐ就活しなきゃなんだよねー」
「大学とか行かないんですか?」
「別に興味ないしー、親もどっちでもいいっていうからさー。最悪、蘭子さんトコで社員にしてもらうのもアリっしょ?」
「……ナシでしょ」

 あ、なんかいいな。女の子と二人で他愛もない会話とか。
 彼女が欲しいよ。
 俺が物思いに耽っていると、部屋のドアが開く音が耳に入る。

「こら! 櫛木くん、何遊んでいるのよっ! もう、星川さんまで一緒になって!」

 背後から急に叱られて俺が振り返ると、腰に手をあてて怒っている教官のお姉さんがいた。

「あ、いや、これは……」
「もう、こんなゲームまで持ってきて。ここは【異能】の訓練施設なのっ。このゲームは私が没収します」
「え、そんなぁ……」

 ツイスターゲームはお姉さんに没収されてしまった。
 くそう。明日以降も、椎名先輩やマイちゃん、菜月と蘭子さんともそれで遊ぶ予定だったのにっ!
 結局、三回戦はできず。代わりとして、星川先輩が帰り道でアイスを奢ってくれた。
 一緒に電車に揺られて、同じ駅で降りる。先輩の家とは駅を挟んで、反対側だ。

「じゃねー。また、時間が合えば一緒に訓練しよー。バイバーイ!」
「是非! じゃあ、また!」

 俺は星川先輩を見送って、家路に就いた。
 ちなみに明日からも模擬戦をする予定を入れている。このあとの模擬戦の予定は、明日は椎名姉妹、次が菜月、その次が教官のお姉さん、最後に蘭子さんだ。いや、蘭子さんのあとは葛葉さんとやってみるか。コテンパンのギッタギッタにしてやろう。めっちゃ楽しみ。
 ツイスターゲームが没収されたから、明日以降の罰ゲームも考えないといけないな……。
 まあ、何はともあれ、模擬戦一勝。
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