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その後のあれこれ

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「龍と戦う・・・?
 何故です?私にそんなつもりはないっ!
 私はただ・・私が正当なロンサンティエの跡継ぎだと認めてほしかっただけだ。」

 何故、己が正当な権利を求めれば、龍と戦う事になるのだ?
 マルト・ジュンには理解できなかった。

 そんなマルト・ジュンにカーライル・ザッツ・ノルディンは哀れな感情を抱いていた。

「先程も言ったが、世界がファヴィリエ・ルカ陛下をロンサンティエ帝国の皇帝と認めた。
 彼は良き皇帝として帝国、そして世界を平和に導く為政者となるだろう。
 貴殿が自分の権利を掲げ、ファヴィリエ・ルカ陛下の打倒に動けば、世界は再び争いへと突き進む事になる。
 人々の平和を望んでいる“龍王”がそれを許すとは思えない。」

 ゆっくりと諭すように言うカーライル・ザッツ・ノルディンの言葉の意味を少しづつ理解し始めたマルト・ジュンは顔を青褪めさせた。

「私が帝位を望めば世界が戦争になる。
 そうなるならば“龍王”は邪魔な私を消せば良い?
 だから・・・龍と戦う気かと。」

 本当のところ“龍王”の考えなどカーライル・ザッツ・ノルディンには分からない。
 だが、今マルト・ジュンが口にした内容を考えている者は確かにいるだろう。
 その者達は自分達を犠牲にしてでもマルト・ジュンの命を狙う事も厭わない。
 
 カーライル・ザッツ・ノルディンは、そう考えていた。

 権利ばかりを主張していたマルト・ジュンに、その気骨があるはずがなく実行する思考もない。
 現に、目の前でブルブルと震え頭を抱えている。

「ファヴィリエ・ルカ陛下は皇帝として生きると覚悟した。
 例え、陛下が龍の姫巫女を皇妃に迎えようが、帝国の君主はファヴィリエ・ルカであり、その責任は重大なものだ。
 1人で、何百何千何万もの民の命を預かる皇帝に怠惰など許されない。
 ロンサンティエの血筋の1人である私には、ロンサンティエ帝国の皇帝を見定める使命がある。
 彼が間違った道を選ぶのなら、私はこの身を炎に包まれようと止める事だろう。
 君主が負う責任とは、己の身一つでは賄えないのだよ。」

 目の前の若者に、この事実を教える者がいなかった。
 これはとても不幸な事だ。

 イースタン公国に渡ったサツキ・ミーナは、皇族として生まれながら死すれば平民と同じであると、嫌と言うほど知ったのだ。

「妹殿・・・サツキ・ミーナ殿が言っていた言葉を思い出してほしい。
 母の様になるなと彼女は言わなかったか?」

 コクンと頷くマルト・ジュンは、恐怖で最初の威勢はない。

「知らなかったかい?
 サツキ・ミーナ殿の母君カラ殿は、自分の娘をロンサンティエ帝国の皇帝とするべく暗躍し、龍の怒りを買う前に娘の手にかかった。
 サツキ・ミーナ殿は、再び世界を混乱の世にしようとした母君を己の手で止めたのだ。」

 マルト・ジュンはあまりの事に目を見開いた。

 妹の悲しみの理由を彼は初めて知ったのだった。
 
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