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フロドゥールの後始末

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 ーーー黒龍の力を使っている。

 リリィの凍てつく様な怒りの声が周辺を緊迫させた。

 遊泳していた龍達の視線が一気に“ドラゴニルス”の残党に襲いかかった様だった。

「「「「グハァッ!!ッ・・・。」」」」

 堪えられず‘ドラゴニルス”の残党達が苦しみ出した。

「黒龍から搾り取ってきた龍気が、そろそろ枯渇する。
 だからこそ、貴方達は他の龍を手に入れようとしているのでしょう?
 ここ一帯に件の幼龍の負の感情が溢れているわ。
 肉体を失いながらも利用され続けた哀れな子・・・。
 今こそ幼龍の全てを解放する。」

 リリィの真っ白な髪が踊るように舞い上がった。
 赤・青・琥珀・緑・・・そして白銀に染まっていくリリィの髪。

 いつの間にかリリィを中心に赤龍・サシャ、青龍・スイテン、琥珀の双竜であるサンとノーム、緑龍・ジンが姿を現していた。

「「「「おおぉぉ・・・。」」」」

 その美しさは苦しみの中にいるにも関わらず“ドラゴニルス”の残党達が感嘆の声を上げる程だった。

「貴方達に“龍王”より伝言よ。
 《人間が持てる力には限界がある。
 欲をかけば己の身すら焦がすだろう。
 今こそ、我らが子である幼龍を返してもらう。》」

 レティーウェル返還

 “ドラゴニルス”の残党達からドス黒い煙がモヤモヤと湧き出ると、黒い煙は一気に優しい光に包まれた。

 リリィの発した古代の呪文は祈りの様だった。
 続けて、リリィと集まった龍達が怒れる幼龍をあやす様に歌い出した。

 黒龍となった幼龍の記憶が流れてくる。

 憎しみ、苦しみ、悲しみと、憎悪含む言葉から徐々に子供のように声を上げて泣き出す幼龍の悲痛が聞こえてきた。
 
 次第に負の感情が吐き出し終わると、泣き声が少しづつ小さくなっていく。
 
 幼龍は“龍王島”での暮らしを思い出したかの様に嘗ての姿を取り戻していった。

 ーーー若葉色に輝く幼龍
 
「さぁ。帰ろう。
 貴方の愛する“龍王島”へ。」

 リリィが手を伸ばすと幼龍は、甘える様に顔を擦りつけてから空を覆う龍の群れの中へと飛んでいった。

「ようやく・・・ようやくね。」

 静かに涙を流すリリィは、全ての龍の群れが姿を消すのを見守った。

 残ったのは、空っぽになり惚ける様に座り込む“ドラゴニルス”の残党達だけだった。
 彼らの目は、すでに何も写していない。

 リリィは指を龍の爪へと変化させると、スッと横に1文字に引いた。

 一斉に胴から頭がゴロンと転がり落ちていく。

 “ドラゴニルス”の残党は1人として意識を取り戻す者はいなかった。

「私達も帰りましょうか。」

 全てを見届けたディミトリオ・ハクヤが姿を現すと、リリィは弱々しく微笑んだ。

「少し、疲れたわ。
 お風呂に入って、甘いもの食べて、ゆっくりと紅茶を楽しみたい。」

「そうだね。
 色々ありすぎた。
 私達には休息が必要だと思うよ。」

 龍の姫巫女、龍の使者は互いに労いを口にすると愛する者が待つ場所へと帰るのだった。
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