411 / 443
積み重ねられた嘘の瓦解
391
しおりを挟む
ーーー滅びゆくルマン家の当主。
そう言われたアバリシア・ルマンは血液が沸騰する程の怒りに襲われていた。
未知なる者への恐怖心も、目の前の娘の美貌を羨む醜い想いも、全て吹き飛ぶ位に目の前が真っ白になるほどの怒りであった。
「何と無礼な娘だ!
お前など、獣と戯れていた島暮らしの小娘のくせに!!
龍の姫巫女と祭り上げられて、良い気になりおって!!
我がルマン家は、フロドゥール国が建国されてから、今日まで国を支えた英雄の家門だ。
田舎者に侮られる言われわないわ!!」
憤怒に駆られ、皺の増えた手を握りしめた事により手袋に血が滲んでいたが、その痛みも決して怒りを鎮めてはくれない。
「あら、思っていたよりも素直に龍の姫巫女と認めてくれるのね。」
楽しそうにクスクスと笑ったリリィは今度は可愛そうな者を見る様に眉を下げた。
「偽りと欺瞞の世界しか見てこなかった哀れなアバリシア。
龍を獣と蔑みながらも、その力を涎が出るほど欲しているのに、その欲望の愚かしさすら気づかない。」
芝居じみたリリィの身振り手振りにアバリシア・ルマンは立ち上がった。
「黙れ!!」
なりふり構わず殴りかかろうとした、その瞬間だった。
「黙るのは、貴様の方だ。」
今度は聞き馴染みのある男の声が部屋に轟く。
「陛下・・・?」
幾度となく酒を交わし、自分の機嫌すら乱さなければ可愛がってきた年下の国王が唐突に姿を現したのだ。
国王レイド・フロドゥールはアバリシア・ルマン女侯爵の屋敷に集まった者達を見渡し顔を顰めた。
「成程・・・私を謀り容易に情報操作できるわけだ。」
椅子から転げ落ちていた大臣の1人は国王の出現に顔面蒼白になりならが弁明しようと口を開けたが、パクパクと魚のように動かすだけで何も声を発する事が出来ずにいた。
伯爵夫婦は青白くなった顔を伏せ、無駄だと悟りながらも、国王の視界に入らないように願っていた。
その他の者も心境は同じだろう。
呼ばれてやって来ただけなのに、国王に己がアバリシア・ルマンの手の中にいると知られてしまったのだ。
居心地悪そうに顔を背けている。
「陛下っ!
これは何の悪戯でしょう?
他国の者に我が屋敷に無断で侵入を許し、加えて同胞である我らを糾弾するような姿勢。
ルマン家の当主として抗議いたします!」
金切り声を上げる様子のアバリシア・ルマンに嘗て持っていた美貌の欠片すら見えない。
これまでと同じく、国王レイド・フロドゥールを御する事を厭わない姿に、国王本人は悲しみを携えた瞳で見つめた。
そんな時だった。
「無断で屋敷に侵入?
ならば、私はロンサンティエ帝国の皇帝として無断で我が帝国内で暗躍し、王宮並びに後宮を危険に晒した根源である貴方に責任をとって貰わなければならない。」
その時になってアバリシア・ルマンは、国王の後ろから現れた美しい若者が射殺す様な目で己を見ているのに気がついた。
そう言われたアバリシア・ルマンは血液が沸騰する程の怒りに襲われていた。
未知なる者への恐怖心も、目の前の娘の美貌を羨む醜い想いも、全て吹き飛ぶ位に目の前が真っ白になるほどの怒りであった。
「何と無礼な娘だ!
お前など、獣と戯れていた島暮らしの小娘のくせに!!
龍の姫巫女と祭り上げられて、良い気になりおって!!
我がルマン家は、フロドゥール国が建国されてから、今日まで国を支えた英雄の家門だ。
田舎者に侮られる言われわないわ!!」
憤怒に駆られ、皺の増えた手を握りしめた事により手袋に血が滲んでいたが、その痛みも決して怒りを鎮めてはくれない。
「あら、思っていたよりも素直に龍の姫巫女と認めてくれるのね。」
楽しそうにクスクスと笑ったリリィは今度は可愛そうな者を見る様に眉を下げた。
「偽りと欺瞞の世界しか見てこなかった哀れなアバリシア。
龍を獣と蔑みながらも、その力を涎が出るほど欲しているのに、その欲望の愚かしさすら気づかない。」
芝居じみたリリィの身振り手振りにアバリシア・ルマンは立ち上がった。
「黙れ!!」
なりふり構わず殴りかかろうとした、その瞬間だった。
「黙るのは、貴様の方だ。」
今度は聞き馴染みのある男の声が部屋に轟く。
「陛下・・・?」
幾度となく酒を交わし、自分の機嫌すら乱さなければ可愛がってきた年下の国王が唐突に姿を現したのだ。
国王レイド・フロドゥールはアバリシア・ルマン女侯爵の屋敷に集まった者達を見渡し顔を顰めた。
「成程・・・私を謀り容易に情報操作できるわけだ。」
椅子から転げ落ちていた大臣の1人は国王の出現に顔面蒼白になりならが弁明しようと口を開けたが、パクパクと魚のように動かすだけで何も声を発する事が出来ずにいた。
伯爵夫婦は青白くなった顔を伏せ、無駄だと悟りながらも、国王の視界に入らないように願っていた。
その他の者も心境は同じだろう。
呼ばれてやって来ただけなのに、国王に己がアバリシア・ルマンの手の中にいると知られてしまったのだ。
居心地悪そうに顔を背けている。
「陛下っ!
これは何の悪戯でしょう?
他国の者に我が屋敷に無断で侵入を許し、加えて同胞である我らを糾弾するような姿勢。
ルマン家の当主として抗議いたします!」
金切り声を上げる様子のアバリシア・ルマンに嘗て持っていた美貌の欠片すら見えない。
これまでと同じく、国王レイド・フロドゥールを御する事を厭わない姿に、国王本人は悲しみを携えた瞳で見つめた。
そんな時だった。
「無断で屋敷に侵入?
ならば、私はロンサンティエ帝国の皇帝として無断で我が帝国内で暗躍し、王宮並びに後宮を危険に晒した根源である貴方に責任をとって貰わなければならない。」
その時になってアバリシア・ルマンは、国王の後ろから現れた美しい若者が射殺す様な目で己を見ているのに気がついた。
152
お気に入りに追加
1,020
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~
ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎
2024年8月6日より配信開始
コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。
⭐︎書籍化決定⭐︎
第1巻:2023年12月〜
第2巻:2024年5月〜
番外編を新たに投稿しております。
そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。
書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。
改稿を入れて読みやすくなっております。
可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。
書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。
いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。
山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。
初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15をつけました
※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。
作品としての変更はございませんが、修正がございます。
ご了承ください。
※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。
依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる