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契約者たちの戦い方

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 キャッキャと子供達の笑い声が響いた。

 当代のロンサンティエ帝国皇帝ファヴィリエ・ルカの母であるマドレーヌ妃は、龍達と戯れる幼い皇子や皇姫達に優しい微笑みを浮かべていた。

「あちらは、どうなっている事でしょう。」

 先代ハイゴール・ウィリ・ロンサンティエの愛妾の1人であった女性・・・マムが少し不安そうな顔で呟いた。

「リリィ様のなさる事です。
 大きな問題は起こらないでしょう。」

 マドレーヌ妃は侍女のカヌレが入れた桃の香りのする紅茶で唇を濡らした。

《フロドゥール国の来賓達がいる間、離宮を離れ皇妃の執務室で過ごして欲しい。》

 龍の姫巫女リリィに、そう告げたれたのはフロドゥール国王が到着する1日前の事だった。

 後宮の離宮を安全な場所にする為に尽力していたはずのリリィの突然の願いにマドレーヌ妃は、何を置いても了承した。

 ロンサンティエ帝国とフロドゥール国の緊迫した関係はマドレーヌ妃も知っていたし、フロドゥール国の至宝であったステラ姫の悲劇をリリィに教えたのもマドレーヌ妃だった。

 何かあるのだ。

 この日マドレーヌ妃は、皇子や皇姫と共にリリィの執務室でゆったりとした時間を過ごしていた。

 まさか、客人達も自分達が限りなく近くにいる事に気がついていないだろう。

 何より、この部屋はリリィが入念に計画して作られた要塞のようなものだ。

 離宮と同じくらい安全な事は間違いなく、落ち着く空間となっていた。

 加えて言うと、今日に限って龍達がリリィの側ではなく、この部屋で時間を過ごしていた。

 火龍カシャに何故と問い掛ければ、『臭い連中と同じ空間にいたくない』と心底嫌そうな顔で顰めていた。

 1つの部屋に閉じ込められて嫌がると思っていた子供達も龍と共に遊べる事で時間を忘れているようだ。

 中でも年長者のユニエ・アミとテムズ・ダンの双子は何かあると察しているようだが、年少の皇子や皇姫達が怖がらないように気を使っていた。

 優しい子達

 マドレーヌは人を受け付けなかった双子の成長に感慨深く微笑んだ。

 子供が好きな琥珀の双竜は、子供達をくすぐり笑わせ、本来なら滅多に“百合の宮”を離れない青龍は清らかな水が注がれた皿に寝転び、時々覗きにくる子供達に尻尾で水を掛けて楽しませていた。

 気難しいわりに、子供達の声に拒否反応を見せない火龍はマドレーヌ妃やマムと共に茶会を嗜み、緑龍はチャームを鳴らし部屋を華やかに彩らせた。

 白銀の龍が『リリィに呼ばれたぁぁ』と片手を挙げて挨拶をし姿を消して久しい。

 カチャリ

 そこに、リリィの離宮“百合の宮”に続く扉が開き侍女であるローラ・ウィットヴィルが現れたのだった。
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