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契約者たちの戦い方

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 瞬く間に大幅に人員を減らした“ドラゴニルス”は目の前の惨劇を受け入れる事が出来ずにいた。

 30人を要した戦いに相手は、たった2人の男女だった。
 この人数も本来なら龍を相手にする事を想定して組まれた人員だ。
 当然ながら、他の離宮よりも能力の高い者達が選ばれていた。

 にも関わらず・・・

「何なのだ、これは・・・。」

「バケモノ・・・。」

 辛うじて残った者達は、顔色の変わらぬ男女を怯えた様子で見つめた。

「“ドラゴニルス”こんなものか。」

「時代が過ぎ、質が下がったのかしら。」

 男・・・コテツはつまらなそうに侵入者達を見下げた。

 女・・・アリスは期待外れだと言いたげな顔で溜息を吐いている。

「何をそんなに怯えている?
 龍を捕獲に来たのだろう?
 そう簡単な仕事とでも思っていたのか?」

「龍は馬鹿でないわ。
 嘗てのような悲劇を繰り返す事がないように対策を取るくらいはしますよ。」

 息の一つも乱れる事なく語る男女を前に侵入者達はギリギリと悔しそうに顔を歪めるだけだ。

「この中の責任者は?」

 コテツの問いに、顔を見合わせるだけで侵入者達は答える気がないらしい。

「もしかして、もう塵になった?
 それとも・・・いないのかしら?」

 アリスの確信めいた言葉に侵入者達はビクリとした。

「いない?」

 不思議そうなコテツにアリスがクスクスと笑った。

「ほら、この人達って人の平等を口にしているでしょ?
 龍から人類を解放するってアレ。
 この人達の言う平等って何かなって思っていたの。
 そうしたら、リリィが・・・我らが姫様が仰ったのよ。
 本来、思想とは与えられるものではなく、自然と根付くものではないかって。」

 コテツはアリスの言いたい事を理解し始めた。

「“人の物を盗んではいけない”という決め事は法律として与えられるのではなく、人と共存する中で争う事なく生きる上で自然と身に付いていく。
 ・・・みたいな事か?」

「そうね。
 “人の物を盗んではないけない”
 言われてみれば当たり前なのだけど、生まれたばかりの赤子には、その概念がないでしょう?
 誰かに教わったり、自分で実感して自然と身に付いていくのよね。
 だから、この人達も同じなんじゃないかって。」

 龍を悪と思い、利用する事が正義であると自然と受け入れた者達。

「それじゃ・・・。」

 コテツは今やビクビクとしている侵入者達に目を向けた。

「本当の意味で実態がない。
 それが“ドラゴニルス”なんじゃないかってリリィ様は言っていた。
 確かに嘗て龍を使役した愚か者達には、明確な目的があったのでしょう。
 人類と唐突に縁を切った龍達に戸惑い、再び平和や富を得るために欲を出した。
 その結果、黒龍を生み出し“龍王”の怒りを買い、世界は天災に塗れ人々は必要以上に苦難を強いられたのよ。」

 喧騒としていたはずの戦場はアリスの見解に静まり返っていた。
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