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英傑の記憶②〜帰還〜
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元々優しい子であった。
真面目で親の手伝いも率先して行い、村の子供達の手本となる子だった。
穏やかなフランコ・トワの周りには子供達だけじゃなく大人達まで集まり、いつの間にか中心にいる事が多い。
それでいて、何処か抜けていて支えてやらなきゃとフランコ・トワの弟達や妹はしっかり者ばかりだ。
腹を空かす村の者達に魚を食べさせようとフランコ・トワが海に入って行った日。
程よい風のある快晴の気持ちの良い日だった。
それが唐突に嵐となり、息子の姿が消えたとフランコ・トワの両親は泣き叫んで海に飛び込もうとした。
それを止めたのがレアンダであり村の人間達だった。
数時間で止んだ嵐の後に村人総出で探し回ったが、痕跡1つ見つけられずに老人達が涙を流しながら「フランコ・トワは海に帰ったのだ。」と宣言した。
村中が喪失感に包まれたのは、村の未来を支える若者の1人が命を散らした事だけでなく、フランコ・トワという存在を失った事が大きかった。
あの誰の心をも掴んでしまう若者は、それほどに皆を支えてきたのだ。
暗闇の中で再会したレアンダは、自分が死んでしまったのだと錯覚した。
それくらい、フランコ・トワの生還に現実味がない。
しかし、享楽に乱れる盗賊達を見て、幼子の様な純真さで涙を流す彼を見たレアンダは、姿を消していた間のフランコ・トワは何をしていたのだろうと思わずにはいられなかった。
目をグッと拭ったフランコ・トワは、懐から袋を取り出すと広げた。
現れた紫色の粉に軽く息を吹きかけると風に乗って酒に溺れる盗賊達の元に届いていく。
「行こう。」
フードを被ったフランコ・トワが堂々と中央をスタスタ歩いて行くが、酒を楽しむ盗賊達は気づく様子すらない。
その異様な光景にレアンダと案内を強いられていた盗賊の男が驚きながらも、後に続いた。
「何をしたんだ?」
問いかけるレアンダにフランコ・トワは優しく微笑んだ。
「今よりもずっと酔いの世界に潜り込んでもらったんだよ。」
「でも、俺等を見る事もないですよ。」
怯える案内の盗賊は、酒を煽る男達を得たいの知らない物でも見るように見つめ震えた。
「見てないんだよ。
自分達以外が、此処にいるわけない。
その安心が彼等に錯覚させ幻覚を見せているんだ。」
フランコ・トワの寂しそうな声に2人の男は顔を見合わせた。
「旦那・・・あの、右手にあるのが東の牢屋の入り口です。
あそこには見張りもゴロゴロいるはずですぜ。」
「うん。分かった。
大丈夫。
何とかなるよ。」
振り返ったフランコ・トワは、やはりニッコリと笑っていた。
そこには何の迷いも消えた様な柔らかい笑顔があった。
真面目で親の手伝いも率先して行い、村の子供達の手本となる子だった。
穏やかなフランコ・トワの周りには子供達だけじゃなく大人達まで集まり、いつの間にか中心にいる事が多い。
それでいて、何処か抜けていて支えてやらなきゃとフランコ・トワの弟達や妹はしっかり者ばかりだ。
腹を空かす村の者達に魚を食べさせようとフランコ・トワが海に入って行った日。
程よい風のある快晴の気持ちの良い日だった。
それが唐突に嵐となり、息子の姿が消えたとフランコ・トワの両親は泣き叫んで海に飛び込もうとした。
それを止めたのがレアンダであり村の人間達だった。
数時間で止んだ嵐の後に村人総出で探し回ったが、痕跡1つ見つけられずに老人達が涙を流しながら「フランコ・トワは海に帰ったのだ。」と宣言した。
村中が喪失感に包まれたのは、村の未来を支える若者の1人が命を散らした事だけでなく、フランコ・トワという存在を失った事が大きかった。
あの誰の心をも掴んでしまう若者は、それほどに皆を支えてきたのだ。
暗闇の中で再会したレアンダは、自分が死んでしまったのだと錯覚した。
それくらい、フランコ・トワの生還に現実味がない。
しかし、享楽に乱れる盗賊達を見て、幼子の様な純真さで涙を流す彼を見たレアンダは、姿を消していた間のフランコ・トワは何をしていたのだろうと思わずにはいられなかった。
目をグッと拭ったフランコ・トワは、懐から袋を取り出すと広げた。
現れた紫色の粉に軽く息を吹きかけると風に乗って酒に溺れる盗賊達の元に届いていく。
「行こう。」
フードを被ったフランコ・トワが堂々と中央をスタスタ歩いて行くが、酒を楽しむ盗賊達は気づく様子すらない。
その異様な光景にレアンダと案内を強いられていた盗賊の男が驚きながらも、後に続いた。
「何をしたんだ?」
問いかけるレアンダにフランコ・トワは優しく微笑んだ。
「今よりもずっと酔いの世界に潜り込んでもらったんだよ。」
「でも、俺等を見る事もないですよ。」
怯える案内の盗賊は、酒を煽る男達を得たいの知らない物でも見るように見つめ震えた。
「見てないんだよ。
自分達以外が、此処にいるわけない。
その安心が彼等に錯覚させ幻覚を見せているんだ。」
フランコ・トワの寂しそうな声に2人の男は顔を見合わせた。
「旦那・・・あの、右手にあるのが東の牢屋の入り口です。
あそこには見張りもゴロゴロいるはずですぜ。」
「うん。分かった。
大丈夫。
何とかなるよ。」
振り返ったフランコ・トワは、やはりニッコリと笑っていた。
そこには何の迷いも消えた様な柔らかい笑顔があった。
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