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義心の先にあるもの
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フロドゥール国からやって来た国王一行が、もっともっと驚愕したのはロンサンティエ帝国の帝都に入った時だった。
それまでにない華やかな街並みに嫌でも自国と比べてしまう。
フロドゥールの街並みは、よく言えば質実剛健であり、悪く言えば質素である。
ロンサンティエ帝国の様に光の玉や花が舞い散る光景など見た事もなかった。
最初は他国の王族が来たが為に歓迎をしているのかと思えば、そうでもない。
生活の営みは途切れる事なく、こちらに微笑みを向けているくらいだ。
馬車の外に目を凝らしていたレイド・フロドゥールは騎乗したまま帝国民に手を振っているディミトリオ・ハクヤに声を掛けた。
「ロンサンティエの帝都ではいつもこの様な?」
この2日間ほど、あまり言葉を交わそうとしてこなかった客人にディミトリオ・ハクヤはニコッと笑った。
「我が国の帝都も、他国と変わらず酷い有様でした。
店から品物が薄れ、路地には孤児達が身を縮こませ、病気の老人達はただ死を待つのみ。
そんな先帝の時代に龍の姫巫女が現れたのです。」
「これが全て龍の姫巫女の力だと言うのか?」
眉を顰めるレイド・フロドゥールは優しく微笑むと首を横に振った。
「彼女がした事といえば、枯れ果てた宝樹に龍気を満たした事。
そして、強者の横暴が故に飢えていた者達にキッカケを与えたに過ぎません。
立ちがったのは民1人1人の力ですよ。」
レイド・フロドゥールには理解が出来ない。
孤児が、どうやって食い繋いでいくのか?
弱者が強者に立ち向かうなど、後の大きな犠牲を考えれば無意味なことだ。
「リリィ曰く。
国の王が変わろうが、民は逞しく生きていくのだそうです。
なぜなら、彼らには生きる意味がある。
子や親を守る為。
恋人や隣人を支える為。
顔も知らない、酒すら酌み交わした事のない皇帝がいくら変わろうが彼らには大した問題ではない。
一時的には影響があるでしょうが、逞しい彼らにとっては変化を受け入れるだけです。
国だ。帝位だ。と騒いでるのは、宮殿の中と貴族達だけ。
リリィ・・・龍にしてみたら、我らも民と同じ、一瞬で命を散らす弱き人間に過ぎないのですよ。」
考え込む客人にディミトリオ・ハクヤはカラッと笑った。
「龍は人が使役するものではない。
彼らは存在し、時には力を貸してくれるでしょう。
しかし、その逆鱗に触れれば龍は天災となり襲いかかってくる。
我らなど、所詮そんなものに過ぎないのです。」
一時でも“龍王島”と呼ばれる異界の地に足を踏み入れたディミトリオ・ハクヤにとって生きる事の定義がガラッと変わってしまっていた。
そんなディミトリオ・ハクヤの言葉を聞いたレイド・フロドゥールは答える事なく考え込む様子で馬車が止まるまで大人しくしているのだった。
それまでにない華やかな街並みに嫌でも自国と比べてしまう。
フロドゥールの街並みは、よく言えば質実剛健であり、悪く言えば質素である。
ロンサンティエ帝国の様に光の玉や花が舞い散る光景など見た事もなかった。
最初は他国の王族が来たが為に歓迎をしているのかと思えば、そうでもない。
生活の営みは途切れる事なく、こちらに微笑みを向けているくらいだ。
馬車の外に目を凝らしていたレイド・フロドゥールは騎乗したまま帝国民に手を振っているディミトリオ・ハクヤに声を掛けた。
「ロンサンティエの帝都ではいつもこの様な?」
この2日間ほど、あまり言葉を交わそうとしてこなかった客人にディミトリオ・ハクヤはニコッと笑った。
「我が国の帝都も、他国と変わらず酷い有様でした。
店から品物が薄れ、路地には孤児達が身を縮こませ、病気の老人達はただ死を待つのみ。
そんな先帝の時代に龍の姫巫女が現れたのです。」
「これが全て龍の姫巫女の力だと言うのか?」
眉を顰めるレイド・フロドゥールは優しく微笑むと首を横に振った。
「彼女がした事といえば、枯れ果てた宝樹に龍気を満たした事。
そして、強者の横暴が故に飢えていた者達にキッカケを与えたに過ぎません。
立ちがったのは民1人1人の力ですよ。」
レイド・フロドゥールには理解が出来ない。
孤児が、どうやって食い繋いでいくのか?
弱者が強者に立ち向かうなど、後の大きな犠牲を考えれば無意味なことだ。
「リリィ曰く。
国の王が変わろうが、民は逞しく生きていくのだそうです。
なぜなら、彼らには生きる意味がある。
子や親を守る為。
恋人や隣人を支える為。
顔も知らない、酒すら酌み交わした事のない皇帝がいくら変わろうが彼らには大した問題ではない。
一時的には影響があるでしょうが、逞しい彼らにとっては変化を受け入れるだけです。
国だ。帝位だ。と騒いでるのは、宮殿の中と貴族達だけ。
リリィ・・・龍にしてみたら、我らも民と同じ、一瞬で命を散らす弱き人間に過ぎないのですよ。」
考え込む客人にディミトリオ・ハクヤはカラッと笑った。
「龍は人が使役するものではない。
彼らは存在し、時には力を貸してくれるでしょう。
しかし、その逆鱗に触れれば龍は天災となり襲いかかってくる。
我らなど、所詮そんなものに過ぎないのです。」
一時でも“龍王島”と呼ばれる異界の地に足を踏み入れたディミトリオ・ハクヤにとって生きる事の定義がガラッと変わってしまっていた。
そんなディミトリオ・ハクヤの言葉を聞いたレイド・フロドゥールは答える事なく考え込む様子で馬車が止まるまで大人しくしているのだった。
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