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再起の果て
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「ダチェット侯爵殿・・・ダチェット侯爵殿・・・」
遠くの方で自分を呼ぶ声がする。
気のせいかと再び眠りの底に赴こうとした時であった。
グラグラと乱暴に揺さぶられた。
「ダチェット侯爵殿!!」
今度はハッキリと聞こえた。
重たい目を持ち上げれば、目の前に知らない男が仁王立ちしていた。
「・・・貴殿は?ここは何処だ?」
先程まで豪華な馬車に乗せられていたのというのに、高い天井の広い部屋に座らされているようだ。
「起きました。」
問いかけた質問に答える事なく振り返った男は身を翻して立ち去って行った。
その時になってダチェット侯爵の視界が明らかになった。
高い天井、決して友好的とは思えない集まった人間達、そして強烈な存在感を放っていたのは玉座に座った1人の男だった。
「よくもまぁ、ぐっすりと眠れるものだ。」
男の侮蔑の籠った声にダチェット侯爵は身震いした。
「あの・・・あの。」
尻込みして声が出ずにいるダチェット侯爵を顎でしゃくると男は隣にいた老人に声をかけた。
「おい。
客人に説明してやれ。」
男に深く首を垂れた老人は2歩ほど前に進むとダチェット侯爵を見下ろした。
「ロンサンティエ帝国より参られたダチェット侯爵。
お間違えございませんな。」
「・・・その通りです。」
現状の理解が及ばないダチェット侯爵は戸惑いながらも頷いたが、玉座に座る男には心当たりがついていた。
そんなダチェット侯爵の事などお構いなしに老人は話し始める。
「こちらに座すはフロドゥール国国主であられるレイド・フロドゥール様にございます。
貴殿は国境を越えられ我らが国に参られた。
随分とお疲れだったのでしょう。
国境より出発なさり3日経った現在、ようやくお目覚めになられたようだ。」
「3日っ!?」
あまりの衝撃にダチェット侯爵は驚愕した。
老人は、そんなダチェット侯爵の戸惑いに付き合う気はないらしい。
「貴殿には以前からロンサンティエ帝国の情報をお送りして頂きましたが、どうやら状況が変わったご様子。
我らが王は貴殿の身を案じておられる。
まさか、帝国に我らとの関係を明かしてはいないかとね・・・。」
ギョロリと睨みつける老人にダチェット侯爵は慌てて立ち上がった。
「まさか!
そんな訳はございません!」
随分と前から、それこそ龍の姫巫女が現れるずっとずっと前からダチェット侯爵はロンサンティエ帝国の情報をフロドゥール国に売っていた。
それは王宮の人の出入りだったり、後宮の内情だったり様々な事だった。
他国に自国の情報を売る事は一番の利益を上げていた商売だった。
「その割には随分とお粗末な終焉を迎えているようではないか。」
説明を老人に任せていた国王レイド・フロドゥールが感情の籠っていない瞳でダチェット侯爵に声をかけた。
粗末な終焉・・・。
それは自分の現状の事を言っているのだろう。
「私個人の商売の事を言っているのでしたら、汚くも龍の姫巫女を利用しているポリティス伯爵という男に先を取られましたが、貴国への情報提供は怠っていないはずですが?」
何を言っているのだと眉を顰めるダチェット侯爵に見物していたフロドゥールの貴族からは失笑が聞かれ、老人は大きな溜息を吐いていた。
「馬鹿めがっ!
後宮の呪印が露見した事も知らなんだか。
簡単な事も出来ぬ痴れ者が!」
玉座から身を裂くような声が飛んできたダチェット侯爵は顔面蒼白になるのだった。
遠くの方で自分を呼ぶ声がする。
気のせいかと再び眠りの底に赴こうとした時であった。
グラグラと乱暴に揺さぶられた。
「ダチェット侯爵殿!!」
今度はハッキリと聞こえた。
重たい目を持ち上げれば、目の前に知らない男が仁王立ちしていた。
「・・・貴殿は?ここは何処だ?」
先程まで豪華な馬車に乗せられていたのというのに、高い天井の広い部屋に座らされているようだ。
「起きました。」
問いかけた質問に答える事なく振り返った男は身を翻して立ち去って行った。
その時になってダチェット侯爵の視界が明らかになった。
高い天井、決して友好的とは思えない集まった人間達、そして強烈な存在感を放っていたのは玉座に座った1人の男だった。
「よくもまぁ、ぐっすりと眠れるものだ。」
男の侮蔑の籠った声にダチェット侯爵は身震いした。
「あの・・・あの。」
尻込みして声が出ずにいるダチェット侯爵を顎でしゃくると男は隣にいた老人に声をかけた。
「おい。
客人に説明してやれ。」
男に深く首を垂れた老人は2歩ほど前に進むとダチェット侯爵を見下ろした。
「ロンサンティエ帝国より参られたダチェット侯爵。
お間違えございませんな。」
「・・・その通りです。」
現状の理解が及ばないダチェット侯爵は戸惑いながらも頷いたが、玉座に座る男には心当たりがついていた。
そんなダチェット侯爵の事などお構いなしに老人は話し始める。
「こちらに座すはフロドゥール国国主であられるレイド・フロドゥール様にございます。
貴殿は国境を越えられ我らが国に参られた。
随分とお疲れだったのでしょう。
国境より出発なさり3日経った現在、ようやくお目覚めになられたようだ。」
「3日っ!?」
あまりの衝撃にダチェット侯爵は驚愕した。
老人は、そんなダチェット侯爵の戸惑いに付き合う気はないらしい。
「貴殿には以前からロンサンティエ帝国の情報をお送りして頂きましたが、どうやら状況が変わったご様子。
我らが王は貴殿の身を案じておられる。
まさか、帝国に我らとの関係を明かしてはいないかとね・・・。」
ギョロリと睨みつける老人にダチェット侯爵は慌てて立ち上がった。
「まさか!
そんな訳はございません!」
随分と前から、それこそ龍の姫巫女が現れるずっとずっと前からダチェット侯爵はロンサンティエ帝国の情報をフロドゥール国に売っていた。
それは王宮の人の出入りだったり、後宮の内情だったり様々な事だった。
他国に自国の情報を売る事は一番の利益を上げていた商売だった。
「その割には随分とお粗末な終焉を迎えているようではないか。」
説明を老人に任せていた国王レイド・フロドゥールが感情の籠っていない瞳でダチェット侯爵に声をかけた。
粗末な終焉・・・。
それは自分の現状の事を言っているのだろう。
「私個人の商売の事を言っているのでしたら、汚くも龍の姫巫女を利用しているポリティス伯爵という男に先を取られましたが、貴国への情報提供は怠っていないはずですが?」
何を言っているのだと眉を顰めるダチェット侯爵に見物していたフロドゥールの貴族からは失笑が聞かれ、老人は大きな溜息を吐いていた。
「馬鹿めがっ!
後宮の呪印が露見した事も知らなんだか。
簡単な事も出来ぬ痴れ者が!」
玉座から身を裂くような声が飛んできたダチェット侯爵は顔面蒼白になるのだった。
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