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遠く昔の誰かの記録
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しおりを挟む龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
彼が辺境の地へ行ってしまって3日が経った。
ロンサンティエ帝国の軍も国境沿いに到着したそうだ。
期待と安堵が湧き上がる中、魔獣の数が減らないとの報告が気分を滅入らせる。
王都では混乱を招かない様に情報は伏せられている様だが、それがいつまで保つか分からない。
私に何が出来るのだろうか。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
フロドゥール軍とロンサンティエ帝国軍の共軍のお陰で魔獣の暴走が鎮圧されたと報告された。
本当に良かった。
現地で戦った騎士に感謝する。
しかし、辺境の地は魔獣に蹂躙され被害が大きいと聞く。
母上の許可を得て、侍女達と協力して傷ついた子供達へ服やお菓子を用意し、支援物資の中に追加して貰った。
こんな事しか出来ない悔しさが胸を締め付ける。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
本日、トルン・ルマン侯爵が指揮を取った先兵隊が帰還した。
今回の件に最初から国防に携わってくれた英雄の一団だ。
皆、お疲れの様子であったが父への報告の為に登城してくれたのだ。
先兵隊の帰還を目にした事で彼が帰って来た時を想像し喜びが増す。
謁見が終わると、父上に呼ばれたルマン侯爵と目が合った。
何か物言いたげな侯爵は、私に何を言いたかったのだろう。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
彼が死んだと父上が言う。
母上が泣いて私を抱きしめた。
何かの間違えだ。
ピウス・プラントが私との約束を違えるはずがないのに。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
彼の棺が御実家に帰ってきたそうだ。
にも関わらず、私は彼の元に行く事が叶わない。
父上は私が王城から出る事に許可を出して下されなかった。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
彼の死に実感が湧かない。
皆が私を偽っているようだ。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
兄様が父上に内緒でプラント家の領地に連れて行ってくれた。
初めての外の世界は灰色だった。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
彼との再会は、約束した王都の屋敷ではなく彼の故郷の彼の墓地だった。
冷たい石碑には彼の名が刻まれていた。
彼の御両親は、彼を失った悲しみを隠し私に謝罪をした。
結婚叶わず申し訳ないと・・・。
優しい人達だ。
龍歴〇〇〇〇年◯月◯日
王城に戻れば、父上と母上に叱られると覚悟していたが抱擁で迎えられた。
心配そうな顔をした侍女に手を引かれて自室に戻れば、一度だけ戦場から届いた彼からの手紙がテーブルに置かれていた。
もう、読む勇気の出ない封筒を撫で、私は彼を愛していたのだと悟った。
皆が言うように溢れる涙は、いつかヒビ割れた心を癒してくれるのだろうか。
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