306 / 443
遠く昔の誰かの記録
307
しおりを挟む
「ねぇ。本当に私も入っていいの?」
ファヴィリエ・ルカが皇室しか入室が認められていない秘蔵書簡庫の鍵を開けている間にリリィはディミトリオ・ハクヤに問い掛けた。
「いいさ。
どの道、リリィは皇室の一員になるんだ。
それに・・・。」
ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカが鍵穴に自分の血を一滴垂らしているのを指差した。
「この部屋の扉には龍の加護で護られていると言われている。
不思議な事にフランコトワの血筋以外が扉を開ける事が出来ない仕様になっているんた。
龍の加護ならば、リリィも大丈夫だろう。
龍がリリィを拒むなんてあり得ない。」
「開きました。」
ファヴィリエ・ルカがドアノブを押し込むと、小さく軋む音を立てながら扉が開け放たれた。
書簡庫と言われていたから小さい部屋を想像していたリリィであったが、入って見れば奥行きの広い立派な図書館の様な造りになっていた。
ディミトリオ・ハクヤが中央に置かれた広いテーブルを優しく撫でた。
「父と入った子供の時以来だ。
多分、その時から誰か入室した事はないだろう。
何せ、我が一族は勤勉ではないからな。」
自嘲するディイトリオ・ハクヤの背中に、どこか哀愁が漂っていた。
恐らく、兄ハイゴール・ウィリの時代には近寄る事も禁じられいたのだろう。
「初めて入りました。
もっと古く埃っぽいイメージがあったのですが、何とも空気も澄んでいて保管されている蔵書の状態もいい様ですね。」
これが龍の加護を得ていると言われる要因なのかもしれない。
キラキラとした光の玉が浮遊しているのを見ると、此処にも妖精がいるようだ。
「この書簡庫には皇族にしか伝わらない話が纏められている。
中には日記などもあるそうだ。
幼少期には、こんな部屋があると言う事を教えてもらったくらいで本を手にした事はない。」
振り返ったディミトリオ・ハクヤにリリィは小さく頷いた。
「少し離れていて。」
リリィが前に出ると、ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカを守ように立った。
「何が始まるんです?」
不思議そうなファヴィリエ・ルカにディミトリオ・ハクヤがニヤリと笑った。
「リリィのズルだ。」
それを耳にしたリリィはディミトリオ・ハクヤを揶揄うように意地悪な顔で笑顔を見せた。
「ズルで結構。
ある能力を使わない方が馬鹿よ。
それに、結構疲れるのよ。これ。」
リリィは胸の前で手を握ると祈るような体勢になった。
ブツブツと何かを唱えるとリリィの美しい白い髪が輝きを見せる。
その白銀の髪が踊るように舞いだすと、腕を広げたリリィに誘われるように本や書簡が自ら棚から飛び出てグルグルと空中で回転し始めた。
「あれは・・・。」
「読んでいるんだよ。」
邪魔をしないようにディミトリオ・ハクヤが息子の口元に指を当てた。
その光景が暫く続くと本は元の場所に戻り、再び眠りについたように大人しくなった。
それと同時に髪も落ち着いたリリィが振り返り自分の頭を指でトントンとした。
「知識は全部入れ終わったわ。」
それを聞いたファヴィリエ・ルカは言わずにはいられなかった。
「ズルッ!!」
ファヴィリエ・ルカが皇室しか入室が認められていない秘蔵書簡庫の鍵を開けている間にリリィはディミトリオ・ハクヤに問い掛けた。
「いいさ。
どの道、リリィは皇室の一員になるんだ。
それに・・・。」
ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカが鍵穴に自分の血を一滴垂らしているのを指差した。
「この部屋の扉には龍の加護で護られていると言われている。
不思議な事にフランコトワの血筋以外が扉を開ける事が出来ない仕様になっているんた。
龍の加護ならば、リリィも大丈夫だろう。
龍がリリィを拒むなんてあり得ない。」
「開きました。」
ファヴィリエ・ルカがドアノブを押し込むと、小さく軋む音を立てながら扉が開け放たれた。
書簡庫と言われていたから小さい部屋を想像していたリリィであったが、入って見れば奥行きの広い立派な図書館の様な造りになっていた。
ディミトリオ・ハクヤが中央に置かれた広いテーブルを優しく撫でた。
「父と入った子供の時以来だ。
多分、その時から誰か入室した事はないだろう。
何せ、我が一族は勤勉ではないからな。」
自嘲するディイトリオ・ハクヤの背中に、どこか哀愁が漂っていた。
恐らく、兄ハイゴール・ウィリの時代には近寄る事も禁じられいたのだろう。
「初めて入りました。
もっと古く埃っぽいイメージがあったのですが、何とも空気も澄んでいて保管されている蔵書の状態もいい様ですね。」
これが龍の加護を得ていると言われる要因なのかもしれない。
キラキラとした光の玉が浮遊しているのを見ると、此処にも妖精がいるようだ。
「この書簡庫には皇族にしか伝わらない話が纏められている。
中には日記などもあるそうだ。
幼少期には、こんな部屋があると言う事を教えてもらったくらいで本を手にした事はない。」
振り返ったディミトリオ・ハクヤにリリィは小さく頷いた。
「少し離れていて。」
リリィが前に出ると、ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカを守ように立った。
「何が始まるんです?」
不思議そうなファヴィリエ・ルカにディミトリオ・ハクヤがニヤリと笑った。
「リリィのズルだ。」
それを耳にしたリリィはディミトリオ・ハクヤを揶揄うように意地悪な顔で笑顔を見せた。
「ズルで結構。
ある能力を使わない方が馬鹿よ。
それに、結構疲れるのよ。これ。」
リリィは胸の前で手を握ると祈るような体勢になった。
ブツブツと何かを唱えるとリリィの美しい白い髪が輝きを見せる。
その白銀の髪が踊るように舞いだすと、腕を広げたリリィに誘われるように本や書簡が自ら棚から飛び出てグルグルと空中で回転し始めた。
「あれは・・・。」
「読んでいるんだよ。」
邪魔をしないようにディミトリオ・ハクヤが息子の口元に指を当てた。
その光景が暫く続くと本は元の場所に戻り、再び眠りについたように大人しくなった。
それと同時に髪も落ち着いたリリィが振り返り自分の頭を指でトントンとした。
「知識は全部入れ終わったわ。」
それを聞いたファヴィリエ・ルカは言わずにはいられなかった。
「ズルッ!!」
284
お気に入りに追加
1,020
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~
ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎
2024年8月6日より配信開始
コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。
⭐︎書籍化決定⭐︎
第1巻:2023年12月〜
第2巻:2024年5月〜
番外編を新たに投稿しております。
そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。
書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。
改稿を入れて読みやすくなっております。
可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。
書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。
いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。
山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。
初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15をつけました
※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。
作品としての変更はございませんが、修正がございます。
ご了承ください。
※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。
依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる