溜息だって吐きたくなるわっ！〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

とある男の転換期

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「なんだ此処？」
「いや、分からん。」

　王都の一角に不思議な建物が出来た。
　人々は何の商会が出来たのだろうと噂するが看板すらなく分からない。

　そこに颯爽と男と女が現れた。

「あぁ・・・此処か。」
「どうやら、そのようね。」

　2人が建物を見上げているのを、周囲に群がっていた者の中から1人の少年が恐る恐る声をかけた。

「おじさん。ここが何の商会のか知ってるの？」

　声を掛けられた男は少年をギロリと見つめた。

「・・・おじさん。」

　すると、隣にいた女が咳払いをしてから少年に教えた。

「コホンッ。
　此処はね。
　ハンターギルドって言う場所よ。」

「ハンターギルド？
　それは何なの？」

　少年が不思議そうに首を傾げると、今度は男が話し始めた。

「魔獣の討伐や薬草の収集などの依頼を受け付けてるんだと。
　俺たちは魔獣を討伐して買い取って貰うんだ。
　金額も安定しているらしい。
　通常だったら、デカい商会に雇われるんだろうが、自分達の好きに仕事が出来るって話だ。」

　耳を傾けていた者達が騒然とする中、少年は不安そうな顔で男を見上げた。

「でも、僕みたいな子供は魔獣の取り方分からないからな・・・。
　雇ってもらえないだろうな。」

　すると、女が少年の前に膝をついた。

「そんな事はないわ。
　此処はね。
　戦闘の仕方や魔獣の取り方も教えてくれるらしいわよ。
　それから、文字の読み書きや金銭の計算の仕方も習う事が出来るから、騙される事もなくなるわ。
　それに坊や、間違ってはいけないわ。
　私達は誰かに雇われるんじゃないの。
　自分達で仕事を選んで、依頼人の願いを叶えるのよ。」

　少年はキョトンとした顔で女性を見つめた。

「雇われるんじゃないの？
　依頼人がいるって、そう言う事でしょ？」

　女性は首を横に振った。

「いいえ。
　依頼したい人がいて、依頼をこなす人がいる。
　お互いが持ちつ持たれずって事よ。
　ほら、そうすれば今と違って小さい商会の人は原価で魔獣の部位を購入出来るのよ？」

　少年達の話に周囲の大人達がハッとしている。

　帝国が疲弊して久しい。
　仕事もなく路上で苦しい思いをしている者も多い。
　でも、今の話を聞けば自分達も食べていける様になるかもしれない。

　小さな商会を営む者は唖然としていた。
　大きな商会に暴利な取引を持ちかけられても断る事の出来ない現状が変わっていくかもしれない。

　そんな群衆の気持ちを代弁するかの様に少年が問いかけた。

「でも、お高いんでしょう？」

　すると、男は笑いながら言った。

「そんな事はないぞ。
　確か、ハンターギルドに所属するのに銀貨3枚。
　払えない奴は仮契約して、数週間の間、街の清掃やら補修に従事すれば免除になる筈だ。
　戦闘や文字・計算の訓練は無料って聞いたし、依頼する方の金額も決められていて銀貨数枚からだって話だ。」

　それを聞いた群衆から喜びの声が上がった。

「分からなければ、取り敢えず聞いてみれば良いんじゃないか？
　俺達は登録しにいくけど、坊主も行入ってみるか？」

「うん！
　話を聞きに行くならタダだもんね。
　僕も行くよ！」

　扉に入った男は少年の頭をガシガシと撫でた。

「ロメオ。見事だ。」

　少年は汗を掻きながらもニッコリとして頷いた。

「コテツさん・・・上手くいって良かったです。
　緊張しました。」

　男・・・コテツは珍しく微笑んだ。

　すると、女・・・アリスがロメオの頬を優しく撫でた。

「十分です。
　これで、人々が先導されれば文句なしですよ。」

　3人が見つめる先で扉が開き、男が1人顔を出した。

「あの～。
　ハンターギルドについて話を聞きたいんですけど・・・。」

　恐る恐ると問いかける男を見て、3人は任務完了と満足気に微笑むのだった。