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とある男の転換期

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「国を食い物にしている商人達を滅ぼしたいの。
 楽しそうでしょ?」

 彼女は確かにそう言った。

 何もない場所に利益を産ませる。
 それが、広がりを見せれば多くの人間が豊かになる。
 それは国を統治する国主達の考え方だ。
 彼らは、全てを生かし守らねばならない。

 でも、商売人は違う。
 自分に利益をもたらす為ならば、時には他人を蹴落とす事もするだろう。
 元に、今市場が乱れているのはそう言うことだ。

 シオン・ポリティスの懸念を聞けば、リリィは和かに頷いた。

「そう。
 その、悪徳商人達を排除したいのです。
 旧政権で己の行いを顧みる事なく、甘い汁を貪っていた貴族の粛清が行われました。
 次は、国民に直接関係する商人達のテコ入れが必要でしょう。」

 ポリティス伯爵は小さく頷いた。

「その通りですが・・・。」

 リリィは香り高い紅茶に口をつけると微笑んだ。

「良き商人がいるのは承知しているし、全てに鉄槌を下そうというのではありません。
 簡単なとろこで言えば、旧時代でも儲けを出していた商人を削っていきます。」

 可憐で愛らしい?
 いや、目の前の女性は龍の姫巫女だった。

「大体、話に聞いた旧時代で商売で儲けを出すのは無理でしょう?」

 リリィの端的な疑問にポリティス伯爵は苦笑した。

「大方は難しいでしょう。
 リリィ様のおっしゃる人物達は、何故利益を産んでいたのか?
 はい。
 違法な事にも手を染めていたからに過ぎません。
 粛清された貴族達、今も生き残っている貴族達の中にも彼らと手を組んでいる者達がいるのも確かです。
 そこに手を出されるのですね?」

「彼らを法的に粛清するのは陛下の領分です。
 私は商売で彼らを疲弊させていきたいのですよ。」

 なるほどとポリティス伯爵は思った。

「彼らを追い落とすライバル商会を作るのですね?」

「そうです!やっぱり、ポリティス伯爵は賢いですね。
 彼らが弱れば弱るほど陛下のお仕事が捗るでしょう?」

「リリィ様のお考えは分かりました。
 ではリリィ様は私に何をお求めでしょう?」

 それまで以上にリリィはニッコリとした。

「信頼し手を組める人材を集めています。
 皆が、それぞれ儲けを出せるように組織するのです。
 悪徳商人とて協力しているでしょうが、所詮は己さえ儲ければ良いはず。
 ならば、私達は巨大なカンパニー型組織として立ち向かいます。」

 流れる様に力説するリリィの不思議な言葉にポリティス伯爵は首を傾げた。

「カンパニー型組織?
 初めて聞く言葉です。」

「本来は複数の事業を持つ商会が各事業を商会化させ1つの組織として運営する形態の事です。
 しかし今回の場合、信頼する商会同士助け合いましょう。
 そして、皆で大きな利益を生みましょう。
 と言う事です。」

 これまでの考えとは違う仕組みにポリティス伯爵は考え込んだ。

「それは確かに信頼出来る人材が必要ですね。
 ・・・でも、確かに面白そうです。」

 ポリティス伯爵はリリィを見つめるとニヤリとした。

 
 
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