239 / 473
とある男の転換期
238
しおりを挟む
ポリティス伯爵家は国内でも有数の大商会を所有する一族だ。
その流通は国内に留まらずに近隣諸国から遠くの諸外国へと多岐にわたる。
国内有数と言われているが、実際には国の資源が枯渇し始めた数代前から、経営不振に陥る事もあったポリティス家である。
現当主であるシオンが一族を率いる事になってからは、比較的問題を起こさずに立ち回っているが、商売人としてなら本来もっと羽振りの良い貴族もいる。
シオン・ポリティスは皇帝の提案を受け入れるか、その戸惑いを悟られない様に考えていた。
それもその筈だった。
龍の姫巫女がロンサンティエ帝国に現れてから貴族だけでなく多くの商人達までもが彼女への目通りを願っていた。
だが、先の舞踏会が開かれるまでに1度も面会の機会は設けられた事はない。
聞けば、その後とて個人的に会ったのはノルディン公国の国主であるカーライル・ザッツ・ノルディンしかおらず、それとて彼女を帝国まで誘ったディミトリオ・ハクヤ太公の存在が大きい。
太公の弟であるカーライル・ザッツ・ノルディンが龍の姫巫女い目通り叶ったと噂が広まれば、羨望と嫉妬で様々な憶測が飛んだものだ。
「・・・何故、私なのでしょう?」
つまらない質問をしてしまったと悔やむポリティス伯爵の想いなど関係なく皇帝ファヴィリエ・ルカは微笑んだ。
「不安そうだな。
何故、シオン・ポリティスでなければいけないのか・・・。
それは何となくだな。」
明確な言葉が出てこないファヴィリエ・ルカにポリティス伯爵は眉間に皺を寄せた。
それでもファヴィリエ・ルカはお構いなしだ。
「強いて言うなら、商売を扱う貴族の中でポリティス伯爵だけが何も言ってこなかったから。
だな。」
確かに、詰めかける貴族や商人達の中でポリティス伯爵家は挨拶状を送った事以外の動きを見せていなかった。
「今も、毎日の様に無用な謁見願いが届いて煩わしい。
何も自分達の都合ばかりを押し付けるなと文句を言っている訳ではない。
例え、貴殿の静観が計算だとしてもだ。
今の時期に騒ぎ立てる者達よりかは我等の現状を理解しているという事だし、商いをするにしても、その位の強かさは重要だろう?」
ポリティス伯爵は若き皇帝の言葉に苦笑するしかない。
「ごもっともです。」
「そうだろう?
私は、どちらかと言うと素直な方だそうだ。
己の領分も知っているし、リリィ程の才能豊かな能力もない。
だが、彼女を支え、彼女が求める物を与える事はできる。
何よりも、彼女が自由であればあるほど帝国の為になると信じているんだ。」
ニッコリと微笑むファヴィリエ・ルカにポリティス伯爵は口元を緩めた。
「陛下のお考えを理解しました。
まずは龍の姫巫女様にお会いし、お話を聞いてみたいと存じます。
お許し頂けますでしょうか?」
「そうか!
会ってくれるか。
良かった。」
誰しもが目通り願う相手にも関わらず、皇帝ファヴィリエ・ルカの言い方だとポリティス伯爵の方に選択肢がるように見える。
皇族を支える貴族として戸惑いがない訳ではないが、ポリティス伯爵は若き皇帝を人となりを見た気がした。
「1つ忠告をしておく。
リリィと共に仕事をすると決めたからには、何事にも楽しんだ方がいい。
今までの常識など、塵にも同じだ。」
ポリティス伯爵は、すぐにこの言葉の意味を知る事になる。
その流通は国内に留まらずに近隣諸国から遠くの諸外国へと多岐にわたる。
国内有数と言われているが、実際には国の資源が枯渇し始めた数代前から、経営不振に陥る事もあったポリティス家である。
現当主であるシオンが一族を率いる事になってからは、比較的問題を起こさずに立ち回っているが、商売人としてなら本来もっと羽振りの良い貴族もいる。
シオン・ポリティスは皇帝の提案を受け入れるか、その戸惑いを悟られない様に考えていた。
それもその筈だった。
龍の姫巫女がロンサンティエ帝国に現れてから貴族だけでなく多くの商人達までもが彼女への目通りを願っていた。
だが、先の舞踏会が開かれるまでに1度も面会の機会は設けられた事はない。
聞けば、その後とて個人的に会ったのはノルディン公国の国主であるカーライル・ザッツ・ノルディンしかおらず、それとて彼女を帝国まで誘ったディミトリオ・ハクヤ太公の存在が大きい。
太公の弟であるカーライル・ザッツ・ノルディンが龍の姫巫女い目通り叶ったと噂が広まれば、羨望と嫉妬で様々な憶測が飛んだものだ。
「・・・何故、私なのでしょう?」
つまらない質問をしてしまったと悔やむポリティス伯爵の想いなど関係なく皇帝ファヴィリエ・ルカは微笑んだ。
「不安そうだな。
何故、シオン・ポリティスでなければいけないのか・・・。
それは何となくだな。」
明確な言葉が出てこないファヴィリエ・ルカにポリティス伯爵は眉間に皺を寄せた。
それでもファヴィリエ・ルカはお構いなしだ。
「強いて言うなら、商売を扱う貴族の中でポリティス伯爵だけが何も言ってこなかったから。
だな。」
確かに、詰めかける貴族や商人達の中でポリティス伯爵家は挨拶状を送った事以外の動きを見せていなかった。
「今も、毎日の様に無用な謁見願いが届いて煩わしい。
何も自分達の都合ばかりを押し付けるなと文句を言っている訳ではない。
例え、貴殿の静観が計算だとしてもだ。
今の時期に騒ぎ立てる者達よりかは我等の現状を理解しているという事だし、商いをするにしても、その位の強かさは重要だろう?」
ポリティス伯爵は若き皇帝の言葉に苦笑するしかない。
「ごもっともです。」
「そうだろう?
私は、どちらかと言うと素直な方だそうだ。
己の領分も知っているし、リリィ程の才能豊かな能力もない。
だが、彼女を支え、彼女が求める物を与える事はできる。
何よりも、彼女が自由であればあるほど帝国の為になると信じているんだ。」
ニッコリと微笑むファヴィリエ・ルカにポリティス伯爵は口元を緩めた。
「陛下のお考えを理解しました。
まずは龍の姫巫女様にお会いし、お話を聞いてみたいと存じます。
お許し頂けますでしょうか?」
「そうか!
会ってくれるか。
良かった。」
誰しもが目通り願う相手にも関わらず、皇帝ファヴィリエ・ルカの言い方だとポリティス伯爵の方に選択肢がるように見える。
皇族を支える貴族として戸惑いがない訳ではないが、ポリティス伯爵は若き皇帝を人となりを見た気がした。
「1つ忠告をしておく。
リリィと共に仕事をすると決めたからには、何事にも楽しんだ方がいい。
今までの常識など、塵にも同じだ。」
ポリティス伯爵は、すぐにこの言葉の意味を知る事になる。
330
お気に入りに追加
1,035
あなたにおすすめの小説
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる