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龍の姫巫女の嗜み
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まるで龍達は、どれが自分の拠り所なのか分かるように飛んでいく。
赤龍のカシャは棚の上に置かれたおしゃれなランタンの中に灯された火の中に入った。
そのランタンの取手にはルビーで出来た飾りがシャランと可愛らしく付いている。
双子の琥珀龍であるサンとノームが向かったのは、2階への階段を上がった所の陽が照らされたオリーブの植木で、植木鉢の中の土からは大きな琥珀が埋め込まれているのが見えた。
ファヴィリエ・ルカの指から飛び立った緑龍のジンは窓辺に置かれたウィンドチャームをグルグルと観察する様に見て回ると、チェーンで繋がっていたマカライトに巻きつき、ユラユラと居心地良さそうに揺れ始めた。
最後に美しい陶器で出来た口の広い皿の中に、スルリと入ったのは青龍のスイテンだった。
中には水が張ってあり、サファイヤと共に水面に揺れる水草がキラキラと浮かんでいた。
「・・・これが拠り所か。」
思わず声を上げたディミトリオ・ハクヤにリリィはクスッと笑った。
「まぁ、寝床って意味もあるんだけど、この子達って実は何処でも寝るのよね。
じゃあ、意味あるの?って言われそうだけど、心穏やかに過ごせる自分の縄張りを増やすという事に関しては、とっても重要なの。
龍は常に心穏やかでいたいのよ。
怒ったり、悲しんだりしたら、こうやって落ち着ける場所で過ごすの。
本来住んでいた“龍王島”ならば、全てが聖域だから問題ないんだけど、離れた今は彼らにとって心配なく休める場所が必要なの。」
勿論、離宮“百合の宮”も彼らにとって心穏やかな場所である事は間違いない。
しかし、これからリリィが過ごす王宮の中にも彼らの拠り所がある方が龍にとっては過ごしやすいのだ。
「それならば、私の執務室にも拠り所を作っておいた方が良いのではないか?」
ファヴィリエ・ルカの言葉にリリィの顔がパァッと明るくなった。
「良いの?
嬉しい。お願いしようと思っていたの。」
その他の龍はまだしも、ファヴィリエ・ルカにはいつも緑龍のジンが側にいる。
リリィの言葉通りならば、緑龍ジンはいつも気を張っている事になる。
ウィンドチャームをチーン♪と鳴らしならが揺れている緑龍ジンを申し訳なさそうに見つめたファヴィリエ・ルカの腕をリリィが優しく撫でた。
「理解してくれた。それで良いのよ。
この部屋のリフォームは終わったから、次は貴方の執務室に手を加える事にするわ。
その時に、龍の拠り所も置かせてもらうわね。」
「あぁ、そうしてくれ。
有難う。リリィ。」
ファヴィリエ・ルカは婚約者の笑顔に心が満たされていくのを感じていた。
『ククク。小僧が、一端にリリィの男の顔になりおって。』
ウィンドチャームの方から緑龍の声がした。
『調子乗るなよ。人間が!
燃やすぞ。』
ランタンの炎から顔を出した赤龍が睨みつけている。
『仲良しこよし♪』
『ヘタレの皇帝♪』
オリーブの木から琥珀の双子龍の歌う声が聞こえた。
『・・・静かに。
煩い。』
水皿から顔を出した青龍が不機嫌な声で眠そうにしている。
『ふふふ~ん♪
ルカの部屋の拠り所が楽しみだねぇ。』
白銀の龍の何とも不穏な言葉にファヴィリエ・ルカの顔が引き攣るのだった。
赤龍のカシャは棚の上に置かれたおしゃれなランタンの中に灯された火の中に入った。
そのランタンの取手にはルビーで出来た飾りがシャランと可愛らしく付いている。
双子の琥珀龍であるサンとノームが向かったのは、2階への階段を上がった所の陽が照らされたオリーブの植木で、植木鉢の中の土からは大きな琥珀が埋め込まれているのが見えた。
ファヴィリエ・ルカの指から飛び立った緑龍のジンは窓辺に置かれたウィンドチャームをグルグルと観察する様に見て回ると、チェーンで繋がっていたマカライトに巻きつき、ユラユラと居心地良さそうに揺れ始めた。
最後に美しい陶器で出来た口の広い皿の中に、スルリと入ったのは青龍のスイテンだった。
中には水が張ってあり、サファイヤと共に水面に揺れる水草がキラキラと浮かんでいた。
「・・・これが拠り所か。」
思わず声を上げたディミトリオ・ハクヤにリリィはクスッと笑った。
「まぁ、寝床って意味もあるんだけど、この子達って実は何処でも寝るのよね。
じゃあ、意味あるの?って言われそうだけど、心穏やかに過ごせる自分の縄張りを増やすという事に関しては、とっても重要なの。
龍は常に心穏やかでいたいのよ。
怒ったり、悲しんだりしたら、こうやって落ち着ける場所で過ごすの。
本来住んでいた“龍王島”ならば、全てが聖域だから問題ないんだけど、離れた今は彼らにとって心配なく休める場所が必要なの。」
勿論、離宮“百合の宮”も彼らにとって心穏やかな場所である事は間違いない。
しかし、これからリリィが過ごす王宮の中にも彼らの拠り所がある方が龍にとっては過ごしやすいのだ。
「それならば、私の執務室にも拠り所を作っておいた方が良いのではないか?」
ファヴィリエ・ルカの言葉にリリィの顔がパァッと明るくなった。
「良いの?
嬉しい。お願いしようと思っていたの。」
その他の龍はまだしも、ファヴィリエ・ルカにはいつも緑龍のジンが側にいる。
リリィの言葉通りならば、緑龍ジンはいつも気を張っている事になる。
ウィンドチャームをチーン♪と鳴らしならが揺れている緑龍ジンを申し訳なさそうに見つめたファヴィリエ・ルカの腕をリリィが優しく撫でた。
「理解してくれた。それで良いのよ。
この部屋のリフォームは終わったから、次は貴方の執務室に手を加える事にするわ。
その時に、龍の拠り所も置かせてもらうわね。」
「あぁ、そうしてくれ。
有難う。リリィ。」
ファヴィリエ・ルカは婚約者の笑顔に心が満たされていくのを感じていた。
『ククク。小僧が、一端にリリィの男の顔になりおって。』
ウィンドチャームの方から緑龍の声がした。
『調子乗るなよ。人間が!
燃やすぞ。』
ランタンの炎から顔を出した赤龍が睨みつけている。
『仲良しこよし♪』
『ヘタレの皇帝♪』
オリーブの木から琥珀の双子龍の歌う声が聞こえた。
『・・・静かに。
煩い。』
水皿から顔を出した青龍が不機嫌な声で眠そうにしている。
『ふふふ~ん♪
ルカの部屋の拠り所が楽しみだねぇ。』
白銀の龍の何とも不穏な言葉にファヴィリエ・ルカの顔が引き攣るのだった。
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