231 / 276
龍の姫巫女の嗜み
230
しおりを挟む
トンテンカンテン♪
リズムを刻むトンカチの音
ギーコ♪ギーコ♪
音を奏でるノコギリの音
新たな主人を迎える皇妃の執務室から、様々な楽しげな音がする。
ガッシャーン!!ドガンッ!ドンドン!
木箱を持って扉の前に立っていた少年は不安そうに隣に立つ男を見上げた。
「あの。コテツ様。
これは何の音ですか?」
普段、感情の読み取りにくいコテツが眉間に皺を寄せている。
「これは・・・創造と破壊の音だ。」
少年・・・ロメオは
《あっ、これはただの破壊だ。》
と余計な事を考えるのをやめた。
「ノックをすれば中に常駐する騎士が対応する。
お前はリリィ様の侍従になったのだから、騎士達にも顔を覚えてもらえ。」
「はい。
宜しくお願いします!」
廊下に立つ騎士に少年がペコリと頭を下げると、扉の前に立っていた騎士がコクリと頷いた。
「行くぞ。」
コテツがそう言うと、騎士が扉を開けてくれた。
中にいた騎士にも挨拶を済まし、応接室を抜け、もう1つの扉を叩く。
すると、侍女のジュディが扉を開けてニッコリと微笑んだ。
「お帰りなさいませ。
ロメオもお疲れ様。」
「はっ はい!」
ロメオがペコリと頭を下げる隣でコテツがズンズンと執務室に入っていく。
「順調か?」
「今は、吹き抜けの2階の書庫エリアに手を加えておられます。
それが終わり次第、一度休憩されますので、コテツ様もご一緒にどうぞ。」
ジュディの報告を受けてコテツはコクンと頷いた。
「それなら、ガトーショコラがいい。
今朝、リリィが作っていた。」
目敏いコテツに苦笑するとジュディは了解して部屋の奥にある扉に向かって行った。
目で追っていたロメオが木箱をテーブルに置きながらコテツに問いかけた。
「あの扉が離宮につながっているのですか?」
「そうだ。
お前も使うようになるのだから覚えておきなさい。」
「・・・はい。」
不安そうなロメオにコテツは視線を送った。
「リリィの力は絶大だ。
だから心配いらない。
不可思議な事を恐れているばかりでは駄目だ。」
自分の弱さを指摘されと思ったロメオをシュンっとなった。
「だって、そんなの、つまらないだろう?
訳わかんない事は楽しむに限る。
リリィと過ごせば、そんな事ばかりだ。」
コテツは弱さを指摘したのではない。
未だに気の抜く事の出来ないロメオを励ましているのだ。
その不器用な励ましの言葉にロメオは弱々しく微笑むと頷いた。
この数週間、ロメオはコテツの元で侍従の心得を学んでいた。
彼の近くにはいつもボビーと名付けられたカンカラという動物がいた。
何処から来たか分からない珍しい動物もロメオを気に入ったのか、良き相棒の様になっている。
誰かの回し者と疑っていたコテツであったが、リリィと龍に脅されたボビーが今更、悪さをするとは思えなかった。
「あれは、寧ろトラウマになるな。」
その時の様子を思い出してクスッと笑うコテツだった。
リズムを刻むトンカチの音
ギーコ♪ギーコ♪
音を奏でるノコギリの音
新たな主人を迎える皇妃の執務室から、様々な楽しげな音がする。
ガッシャーン!!ドガンッ!ドンドン!
木箱を持って扉の前に立っていた少年は不安そうに隣に立つ男を見上げた。
「あの。コテツ様。
これは何の音ですか?」
普段、感情の読み取りにくいコテツが眉間に皺を寄せている。
「これは・・・創造と破壊の音だ。」
少年・・・ロメオは
《あっ、これはただの破壊だ。》
と余計な事を考えるのをやめた。
「ノックをすれば中に常駐する騎士が対応する。
お前はリリィ様の侍従になったのだから、騎士達にも顔を覚えてもらえ。」
「はい。
宜しくお願いします!」
廊下に立つ騎士に少年がペコリと頭を下げると、扉の前に立っていた騎士がコクリと頷いた。
「行くぞ。」
コテツがそう言うと、騎士が扉を開けてくれた。
中にいた騎士にも挨拶を済まし、応接室を抜け、もう1つの扉を叩く。
すると、侍女のジュディが扉を開けてニッコリと微笑んだ。
「お帰りなさいませ。
ロメオもお疲れ様。」
「はっ はい!」
ロメオがペコリと頭を下げる隣でコテツがズンズンと執務室に入っていく。
「順調か?」
「今は、吹き抜けの2階の書庫エリアに手を加えておられます。
それが終わり次第、一度休憩されますので、コテツ様もご一緒にどうぞ。」
ジュディの報告を受けてコテツはコクンと頷いた。
「それなら、ガトーショコラがいい。
今朝、リリィが作っていた。」
目敏いコテツに苦笑するとジュディは了解して部屋の奥にある扉に向かって行った。
目で追っていたロメオが木箱をテーブルに置きながらコテツに問いかけた。
「あの扉が離宮につながっているのですか?」
「そうだ。
お前も使うようになるのだから覚えておきなさい。」
「・・・はい。」
不安そうなロメオにコテツは視線を送った。
「リリィの力は絶大だ。
だから心配いらない。
不可思議な事を恐れているばかりでは駄目だ。」
自分の弱さを指摘されと思ったロメオをシュンっとなった。
「だって、そんなの、つまらないだろう?
訳わかんない事は楽しむに限る。
リリィと過ごせば、そんな事ばかりだ。」
コテツは弱さを指摘したのではない。
未だに気の抜く事の出来ないロメオを励ましているのだ。
その不器用な励ましの言葉にロメオは弱々しく微笑むと頷いた。
この数週間、ロメオはコテツの元で侍従の心得を学んでいた。
彼の近くにはいつもボビーと名付けられたカンカラという動物がいた。
何処から来たか分からない珍しい動物もロメオを気に入ったのか、良き相棒の様になっている。
誰かの回し者と疑っていたコテツであったが、リリィと龍に脅されたボビーが今更、悪さをするとは思えなかった。
「あれは、寧ろトラウマになるな。」
その時の様子を思い出してクスッと笑うコテツだった。
応援ありがとうございます!
273
お気に入りに追加
973
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる