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舞踏会と言う名の
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「代官様!!
おはよう御座います!」
「おはよう。
農園の調子はどうだ?」
「今日の薬草も生き生きしてますよぉ。
こないだお伝えした新薬に使えそうなのが順調です。」
「それは良い。
乾燥させて保管してくれ。」
「はーい。」
かつてオレゴ伯爵家の領地であった薬草農園は変わらずに青々と輝いていた。
代官と呼ばれた男の名はヤコボ。
家名を失っても、かつての地で代官として暮らしている。
姪が先帝の側妃として皇姫と皇子を産み落としたが、その尊き龍の血筋を虐待という卑劣な行為で傷つけていた。
その大罪は決して許される事ではない。
その後も再び、皇姫と皇子に絡んだ事件を起こす血族の為に彼は伯爵位を返上した。
罪を背負い、平民として生きていく覚悟を決めた彼を救ったのは若き皇帝陛下だった。
爵位を返上し貴族でなくなったヤコボが皇帝に会える事はない。
代わりに宰相であるフィリックス・ガルシアが王都の屋敷を整理するヤコボの元を訪ねてきた。
「皇帝陛下はオレゴ伯爵領の薬草農園は国民の健康を支える重要な場所だと考えておられます。
故に、皇帝陛下直轄領となる事が決まりました。
しかし、それには現地を管理する者が必要でしょう。
そこで、これまで薬草農園を運営されてきた貴方に代官の任命します。」
皇帝陛下の采配にヤコボと家族達は驚いた。
まさか、仕事が貰えるとは思ってもいなかった。
フィリックスは必要書類を次々と置いていくとヤコボと、その家族を見渡した。
「領地の住まいも今のままで構わないそうです。
しっかりと励んでください。
・・・働きによれば、息子さんの代には男爵に叙爵出来るかもしれません。
どうぞ、これまで通り帝国に力を貸して下さい。」
妻は泣き崩れ感謝を口にした。
息子は目に涙を溜めながらも自分の役目に覚悟し頷いた。
「皇帝陛下の御好意に感謝致します。
我が身の全ては帝国の為。
皇帝陛下の御代をより良くする為に彼の地で励みます。」
ヤコボの言葉にフィリックスはニッコリと笑った。
「半年に1度は王宮に報告にいらして下さい。
私がお相手致します。
それと、こちらを。」
フィリックスは懐から手紙を2通取り出した。
「こちらはユニエ・アミ殿下とテムズ・ダン殿下からのお手紙です。
どうぞ。」
姪の産んだ皇姫と皇子。
ヤコボは挨拶程度なら交わした事があるが、茶を共にした事すらない。
ヤコボは震える手を押さえながら恭しく手紙を受け取った。
「両殿下は現在、料理に興味を持っておられます。
食こそが人々を豊にするとリリィ様とマドレーヌ様より学んでおられるのです。
将来はロンサンティエ帝国の食を支える道に進みたいと励んでおられます。
薬草農園の中には食材に使える物も多いとか。
両殿下とも、いつかは訪れたいと申されておりました。」
それを聞いたヤコボは初めて目にジンワリと涙を浮かべ微笑んだ。
「それは、大変名誉な事でございますな。
両殿下がいらっしゃるのでしたら、しっかりと薬草農園を守らねば。」
いつか来る再会を楽しみに、ヤコボはかつて自分の領地だった場所に帰っていくのだった。
おはよう御座います!」
「おはよう。
農園の調子はどうだ?」
「今日の薬草も生き生きしてますよぉ。
こないだお伝えした新薬に使えそうなのが順調です。」
「それは良い。
乾燥させて保管してくれ。」
「はーい。」
かつてオレゴ伯爵家の領地であった薬草農園は変わらずに青々と輝いていた。
代官と呼ばれた男の名はヤコボ。
家名を失っても、かつての地で代官として暮らしている。
姪が先帝の側妃として皇姫と皇子を産み落としたが、その尊き龍の血筋を虐待という卑劣な行為で傷つけていた。
その大罪は決して許される事ではない。
その後も再び、皇姫と皇子に絡んだ事件を起こす血族の為に彼は伯爵位を返上した。
罪を背負い、平民として生きていく覚悟を決めた彼を救ったのは若き皇帝陛下だった。
爵位を返上し貴族でなくなったヤコボが皇帝に会える事はない。
代わりに宰相であるフィリックス・ガルシアが王都の屋敷を整理するヤコボの元を訪ねてきた。
「皇帝陛下はオレゴ伯爵領の薬草農園は国民の健康を支える重要な場所だと考えておられます。
故に、皇帝陛下直轄領となる事が決まりました。
しかし、それには現地を管理する者が必要でしょう。
そこで、これまで薬草農園を運営されてきた貴方に代官の任命します。」
皇帝陛下の采配にヤコボと家族達は驚いた。
まさか、仕事が貰えるとは思ってもいなかった。
フィリックスは必要書類を次々と置いていくとヤコボと、その家族を見渡した。
「領地の住まいも今のままで構わないそうです。
しっかりと励んでください。
・・・働きによれば、息子さんの代には男爵に叙爵出来るかもしれません。
どうぞ、これまで通り帝国に力を貸して下さい。」
妻は泣き崩れ感謝を口にした。
息子は目に涙を溜めながらも自分の役目に覚悟し頷いた。
「皇帝陛下の御好意に感謝致します。
我が身の全ては帝国の為。
皇帝陛下の御代をより良くする為に彼の地で励みます。」
ヤコボの言葉にフィリックスはニッコリと笑った。
「半年に1度は王宮に報告にいらして下さい。
私がお相手致します。
それと、こちらを。」
フィリックスは懐から手紙を2通取り出した。
「こちらはユニエ・アミ殿下とテムズ・ダン殿下からのお手紙です。
どうぞ。」
姪の産んだ皇姫と皇子。
ヤコボは挨拶程度なら交わした事があるが、茶を共にした事すらない。
ヤコボは震える手を押さえながら恭しく手紙を受け取った。
「両殿下は現在、料理に興味を持っておられます。
食こそが人々を豊にするとリリィ様とマドレーヌ様より学んでおられるのです。
将来はロンサンティエ帝国の食を支える道に進みたいと励んでおられます。
薬草農園の中には食材に使える物も多いとか。
両殿下とも、いつかは訪れたいと申されておりました。」
それを聞いたヤコボは初めて目にジンワリと涙を浮かべ微笑んだ。
「それは、大変名誉な事でございますな。
両殿下がいらっしゃるのでしたら、しっかりと薬草農園を守らねば。」
いつか来る再会を楽しみに、ヤコボはかつて自分の領地だった場所に帰っていくのだった。
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