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舞踏会と言う名の

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 挨拶に来る人の流れが切れない。
 
 隣で対応するファヴィリエ・ルカもよく耐えているものだと関心するなか、列の中に見知った顔を見つけてリリィは心の中でニヤリとする。

 そこには粛々と順番を待ちながらも、リリィの目にはソワソワして見えるガク・ブランチ辺境伯と息子のサイラスがいた。

 ガク・ブランチ辺境伯は、既に息子へ爵位を引き渡し、引退という名目で王都に居を構えると公言している。

 それは全てはリリィの側にいる為であり、祖先が龍王に助けられた恩を返すと意気込んでいる。

 今ではリリィにとっては、可愛いお爺さんに見えるのだが、コテツとアリスにとっては天敵であり、彼が王都に来ると聞いてから舌打ちが止まらない。

 そんな老貴族が興奮を隠しながら列に並んでいるのをリリィは笑いを堪えた。

 ブランチ辺境伯の挨拶が次に控えた時だった。
 リリィの脳を危険信号が駆け巡る。

 リリィの強い視線を受けたファヴィリエ・ルカが驚いた様に手を握った。

「どうしました?」

「何か良くないものが紛れ込んだわ。」

「この大広間に?」

 声を落としたファヴィリエ・ルカが宰相フィリックス・ガルシアに視線を向けた。
 彼は何かを感じ取り近づいてきた。

「如何しました。」

「分からん。
 リリィが良くないものが紛れ込んだと。」

 それを聞き顔色を変えたフィリックスがリリィに尋ねる様に顔を向けた。

「待って。
 琥珀の双竜が怒ってる。
 “芍薬の宮”よ。
 子供達の所に招かざる者が来たのね。」

「“芍薬の宮”には護衛を配置しましたが、直ぐに騎士を向かわせます。」

 リリィの言葉にフィリックスは近くにいた騎士に声を掛けると、騎士は近くにいた仲間と共に走り出した。
 
 リリィが後を向くとコテツとアリスが頷き去って行く。
 彼らが行くのなら心配はいらない。
 元々、琥珀の双子龍が結界を張っているだ。
 余計な者が侵入する事は不可能だ。
 恐らく、“芍薬の宮”に侵入しようと手をこまねいている輩がいるのだろう。

 そこにディミトリオ・ハクヤが近づいてきた。

「どうした?」

 リリィの様子がおかしいと精霊から聞き、やって来たのだろう。

「“芍薬の宮”に侵入者です。」

 フィリックスの報告にディミトリオ・ハクヤは顔を顰めた。

「舞踏会に紛れて皇室の子供らに近づいたのか。」

 リリィは彼らに安心を与える。

「今日は“芍薬の宮”を琥珀龍に守ってもらっているの。
 人間如きが侵入は不可能よ。
 でも、サンとノームが怒っている。
 騎士だけじゃなくて、コテツとアリスを向かわせたわ。
 問題はないはず。
 でも、子供達を怖がらせたくないわ。」

 大広間では何か問題が起こったのかと心配する声も聞こえる。
 リリィにしてみたら、そんな外野の声はどうでも良かった。

『終わった。
 もう安全だよ。』

 リリィの腕輪からルーチェの囁き声が聞こえた。

 玉座に集まった者達は大きな溜息を吐き安堵するのだった。
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