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舞踏会と言う名の

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 舞踏会は静寂から一変、華やかさが戻り、ダンスを踊る者や談笑する声が聞こえていた。

 皇帝ファヴィリエ・ルカと婚約者である龍の姫巫女であるリリィの元には国内貴族や近隣諸国の王侯貴族がひっきりなしに挨拶に訪れていた。

「ノルディン公国国主カーライル・ザッツ・ノルディンに御座います。
 ロンサンティエ皇帝ファヴィリエ・ルカ様と龍の姫巫女・リリィ様にご挨拶申し上げる。」

 それまで定例な挨拶しか返さずにいたファヴィリエ・ルカが立ち上がりり、リリィの手を引き階段を降りて行く。

「よくぞ来てくださいました。叔父上。」

 カーライル・ザッツ・ノルディンに礼を尽くすファヴィリエ・ルカの様子を見ていたリリィは微笑んだ。

「お目にかかる事ができて光栄です。
 ノルディン公。リリィです。」

 リリィが差し出す手の甲にカーライル・ザッツ・ノルディンは軽く唇を付けた。

「こちらこそ、光栄で御座います。
 リリィ様におかれましては、ロンサンティエでの生活はいかがお過ごしですか?」

「とても良くして頂いています。
 今は、婚姻までの時間に必要な事を勤しんでいます。」

「それは、よろしゅう御座いました。
 御2人の仲睦まじい姿を拝見でき安堵しております。」

 リリィに友好な姿勢を見せるカーライル・ザッツ・ノルディンに若き2人が和かに微笑む。

「叔父上。
 もし、許されるのなら明日にでも昼食をご一緒しませんか?
 大公と共にする約束をしているのです。」

 大公とは彼の父ディミトリオ・ハクヤの事であり、カーライル・ザッツ・ノルディンにとっては義兄である。

 特別な誘いにカーライル・ザッツ・ノルディンは嬉しそうに頷いた。

「御一緒させて頂きましょう。」

 了承の返事を得たファヴィリエ・ルカは後に控える宰相フィリックス・ガルシアに視線を送った。
 フィリックスは心得たと頷く。

「では、また明日。」

 短い挨拶には、明日への楽しみな感情が含まれていた。

 ファヴィリエ・ルカがリリィと共に玉座に戻っていくと、カーライル・ザッツ・ノルディンは頭を下げて見送った。
 そして、2人が席に座ると次の者に場を開け群衆の中に戻って行った。
 
「あの人は良い人なのね。」

 クスクスと笑うリリィにファヴィリエ・ルカは苦笑した。

「先帝にノルディン公国を与えられて維持する事に苦労をされたと聞いたよ。
 自国の為に思惑もあるだろうが、先帝が退位したのをきっかけに父に今までの謝罪をされたそうだ。」

「生き残る為には頭を使わなきゃね。
 まぁ、ルーチェが騒がないから、大丈夫でしょう。」

 リリィが腕輪を撫でると、腕輪はくすぐったそうにキラキラと光った。

 
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