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この時期、誰しもが忙しい
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王宮で茶会と舞踏会が開催されると国内外に知せ届けば、さまざまな思惑を持った国内貴族達や、近隣諸国の王国貴族が喜び溢れた。
龍の姫巫女に目通りを望む者。
娘を皇帝の側室に望む者。
金銭の援助を求む者。
王宮に士官を目指す者。
そんな貴族の欲望などお見通しのファヴィリエ・ルカは目下気になるのは婚約者でもある龍の姫巫女・リリィの事だった。
皇妃の執務室の改装に加えて、皇帝の執務室にも手を加えるとあって忙しさが増している。
もっと言えば、夫婦の憩いの場となる離宮“百合の宮”にも改装が必要とあって設計士と大工の仕事が山積みだった。
ブツブツと文句を言いながらも、夜な夜なドレスを仕立てるリリィを訪問すれば、それでも互いに気遣い仲良く時間を過ごしていた。
最初に言っておくと、茶会は良かった。
娘を皇帝の側室にと望む親達の思惑とは裏腹に、デビュタントを迎えていない若い貴族の子息女を多く集めた茶会は、ちょっとした見合いの席となっていた。
親達としてみたら皇帝との会話に励んで欲しいところであったが、寧ろ皇帝ファヴィリエ・ルカと婚約者リリィの仲睦まじい姿は若い貴族令嬢達の憧れの的となった。
神々しくも美しいリリィと端正な顔立ちで艶のある真っ黒な髪をしたファヴィリエ・ルカの揃った姿は大変な評判となり、欲まみれの親達の欲望は若き者達の純粋な心に打ち消されてしまった。
好評な内に茶会は何の問題もなく終了したのだった。
「問題は夜会です。」
険しい顔を見せたのはリリィの侍女として加わったローラ・ウィットヴィルだった。
先帝の弟と婚約していた彼女は経験から社交界に対して警戒心を持っていた。
「先の粛清の折に腐敗した多くの貴族がいなくなったとはいえ、影響力を持った貴族は他にもいます。
寧ろ、有力な貴族が少なくなった事で力を増していると言った方が良いでしょう。
皇帝陛下が即位して、まだ日が浅い。
その時期に自分達の立場を主張してくるはずです。
それには、自分の娘や親戚筋の娘を皇帝の側室に押し込むのが一番の近道なのです。
夜会では必ず仕掛けてきます。」
ローラが熱弁を振るう相手は現在、ペンを耳に刺して針仕事に取り組んでいた。
「うーん。ここに刺繍入れた方が良い?」
「そうですね。
美しいと思いますが、この腰のラインの邪魔になりませんか?
あの・・・リリィ様、話聞いてました?」
社交界の話よりもドレスの刺繍の方を気にしているリリィにローラは不安そうに問いかけた。
「うん。聞いてたよ。
まぁ、想像通りという感じね。
でも、龍の姫巫女だって人間に挑んでくるわけだから素晴らしいお嬢さん達なんでしょうね。」
皇帝陛下を誘惑しようとしてくる者を相手にしてもしていないリリィにローラは自分の浅はかさを知った。
そして、自分の主人は何者も恐れぬ強さを持っているのだと胸を張る。
「いいえ。
頭が足りない馬鹿達でしょう。」
言い切ったローラにリリィは顔を上げると「やっぱり貴方とは仲良くなれそうね。」と楽しそうに笑った。
龍の姫巫女に目通りを望む者。
娘を皇帝の側室に望む者。
金銭の援助を求む者。
王宮に士官を目指す者。
そんな貴族の欲望などお見通しのファヴィリエ・ルカは目下気になるのは婚約者でもある龍の姫巫女・リリィの事だった。
皇妃の執務室の改装に加えて、皇帝の執務室にも手を加えるとあって忙しさが増している。
もっと言えば、夫婦の憩いの場となる離宮“百合の宮”にも改装が必要とあって設計士と大工の仕事が山積みだった。
ブツブツと文句を言いながらも、夜な夜なドレスを仕立てるリリィを訪問すれば、それでも互いに気遣い仲良く時間を過ごしていた。
最初に言っておくと、茶会は良かった。
娘を皇帝の側室にと望む親達の思惑とは裏腹に、デビュタントを迎えていない若い貴族の子息女を多く集めた茶会は、ちょっとした見合いの席となっていた。
親達としてみたら皇帝との会話に励んで欲しいところであったが、寧ろ皇帝ファヴィリエ・ルカと婚約者リリィの仲睦まじい姿は若い貴族令嬢達の憧れの的となった。
神々しくも美しいリリィと端正な顔立ちで艶のある真っ黒な髪をしたファヴィリエ・ルカの揃った姿は大変な評判となり、欲まみれの親達の欲望は若き者達の純粋な心に打ち消されてしまった。
好評な内に茶会は何の問題もなく終了したのだった。
「問題は夜会です。」
険しい顔を見せたのはリリィの侍女として加わったローラ・ウィットヴィルだった。
先帝の弟と婚約していた彼女は経験から社交界に対して警戒心を持っていた。
「先の粛清の折に腐敗した多くの貴族がいなくなったとはいえ、影響力を持った貴族は他にもいます。
寧ろ、有力な貴族が少なくなった事で力を増していると言った方が良いでしょう。
皇帝陛下が即位して、まだ日が浅い。
その時期に自分達の立場を主張してくるはずです。
それには、自分の娘や親戚筋の娘を皇帝の側室に押し込むのが一番の近道なのです。
夜会では必ず仕掛けてきます。」
ローラが熱弁を振るう相手は現在、ペンを耳に刺して針仕事に取り組んでいた。
「うーん。ここに刺繍入れた方が良い?」
「そうですね。
美しいと思いますが、この腰のラインの邪魔になりませんか?
あの・・・リリィ様、話聞いてました?」
社交界の話よりもドレスの刺繍の方を気にしているリリィにローラは不安そうに問いかけた。
「うん。聞いてたよ。
まぁ、想像通りという感じね。
でも、龍の姫巫女だって人間に挑んでくるわけだから素晴らしいお嬢さん達なんでしょうね。」
皇帝陛下を誘惑しようとしてくる者を相手にしてもしていないリリィにローラは自分の浅はかさを知った。
そして、自分の主人は何者も恐れぬ強さを持っているのだと胸を張る。
「いいえ。
頭が足りない馬鹿達でしょう。」
言い切ったローラにリリィは顔を上げると「やっぱり貴方とは仲良くなれそうね。」と楽しそうに笑った。
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