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この時期、誰しもが忙しい

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 同じ席にいて、訳が分かっていないジュディは戸惑っていた。
 そんな彼女にローラは微笑むと事情を説明し出した。

「貴方くらいのお嬢さん達には遠い昔の話だけれど、私はかつて先代の皇帝ハイゴール・ウィリ様の弟君リチャード・リッチ第二皇子と婚約を結んでいたの・・・。」

 そこから始まったローラの昔話をジュディは真剣に聞いた。

 リチャード・リッチが血を分けた兄に騙され命を落とした事。
 その後、自分がハイゴール・ウィリの側室に選ばれ、拒絶した事。
 自分を売り飛ばそうとした父親に剣を向け幽閉した事。

 彼女の口から語られた壮絶な人生にジュディは驚くしかなかった。

「因縁は、いつまでも付き纏います。
 私がリリィ様付きの侍女になった事に不満を持つ貴族もおりましょう。
 もう、誰かの足手纏いになりたくないのです。」

 覚悟を決めている女性を前にリリィは楽しそうに微笑んだ。

「だったら、最初からこの話を断れば良かったじゃない?」

「皇妃にお仕えするのは貴族の女性にとって最も誉高き役職です。
 いつも実家を避けていた義弟がわざわざ赴いてまで打診をしてきた事を考えると、重要な事なのだと理解しました。
 それに、あのお方を・・・リチャード・リッチ様を追い落とした国が変わっていくのを見てみたかった。」

 ポツリと語るローラは、もう側にいない婚約者を今も想っている事を隠さなかった。

「良いんじゃない?
 間違ってないわ。
 貴方が覚悟を決めていると言うのなら、私が言えるのは決まってるわ。
 誰からも文句を言わせない侍女になりなさい。
 努力の末に何ともならない場面が来たら、私を利用しても良い。
 それに、貴族達は分かっていない。
 貴方を侮辱する者は、選んだ私を侮辱したと同じ事。
 貴方は私の侍女になると決めた時点で、自分の人生を前に進めたの。
 どうぞ、自信を持って悪口を言われなさい。
 そして、跳ね返してくるのよ。」

 堂々と微笑むリリィにローラは目を細めて微笑んだ。

「クレイが・・・義弟が言うよりも猛々しい方ですね。
 そして、何よりもお可愛らしい。
 ローラ・ウィットビル。
 龍の姫巫女様の侍女を誠心誠意務めさせていただきます。
 ジュディさん。
 よろしくお願いしますね。」

 ジュディは目にいっぱい涙を溜めるとコクンと頷いた。

「お任せ下さい!
 まだまだ未熟ですけど、リリィ様だけじゃなくてローラ様も守れるくらい成長して見せます!」

 気合いを入れるジュディにリリィは笑った。

 そんな時だった。

『気に入った!』

 どこからか、楽しそうな少年の声がしてローラとジュディがキョロキョロと辺りを見渡す。
 すると、目の前に小さな何かが現れてプカプカと2人に近づいた。

『ようこそ!
 僕は白銀の龍・ルーチェ。
 リリィの兄にして親友だよ。』

 ローラとジュディが初めて目にする龍は美しい白銀の龍だった。

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