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決して誰もが同じでない

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 龍と直接会う事になる・・・。
 言われてみれば当然の事だった。
 
 実家にいた時にも耳に入っていた。
 突如、龍の姫巫女が王宮に現れた。
 当初は真偽を噂していたジュディの周囲も王宮から出た正式な発表に驚いたものだ。

 侍女になるべく研修を受けていた時も多くの噂は耳に入っていた。
 宝樹の復活は多くの者が目にしていたし、龍を目撃したと言う者もいた。
 あまりの美しさに前皇帝が側妃にと望んだが、手酷くフラれた話を聞いた時は、コッソリと笑った事は内緒だ。

 目通りしたリリィは、神々しく目を合わす事さえ憚られるが、話し方は気さくで爵位関係なく対応してくれる姿に異常なまでの緊張は控えめになっていた。

 しかし、目の前の女性は龍の姫巫女なのである。

 龍が側にいる事は当たり前である。
 今のところ、龍の姿を目にする事はない。

 思わず顔を見合わせたジュディとローズの考えている事が分かっているかのようにアリスは頷いた。

「龍は気ままです。
 人の事情で姿を現す事はありません。
 しかし、リリィ様のお側にいる事は間違いないのですよ。
 ほら。」

 アリスが示す先でリリィが1人でおしゃべりし、楽しそうに笑っている。
 
 他の人が同じ事をしていたら、その人の頭を心配するところだが、アリスの表情をみれば、これが日常なのだと悟った。

 クスクスと笑うリリィは美しく、誰もが見惚れる事だろう。
 キラキラとした白い髪に引き寄せられる男は数多といる筈だ。
 いつ何時でも龍と会話が出来るリリィにジュディは「素晴らしいですね。」と関心した。

 しかし、実際の彼女リリィと姿見えぬ龍の会話の内容とは・・・。
 
「本当にこの部屋は落ち着かないわ。
 宝石箱にでも入ったみたい。
 速攻に燃やしたい気分よ。」

『普通の人間は、派手なのを喜ぶんじゃないの?』

「多分、普通の人間は宝石は身につけるものであって、壁に埋め込むものじゃないって言うと思うわ。
 目がチカチカしてウザったいったらないわ。」

『リリィ。見て!見て!
 あの柱にある石さ、スイテンの鼻クソみたい。』

「やだ、あれはターコイズじゃない。
 結構、貴重な宝石よ。
 スイテンの鼻クソって・・・。
 あはははは!」

 離宮“百合の宮”にある池の底で居眠りをしているであろう青龍が鼻をモゾモゾさせている事を想像しリリィはゲラゲラと笑うのだった。

 リリィと白銀の龍・ルーチェが、どんな話をしているのか何となく大した事ではないと勘づいたアリスは、素直に関心するジュディに申し訳ない思いがするのだった。

「さぞ、ご立派な会話をされているのでしょうね。」

「・・・恐らく、違います。」

「え?」

「ジュディさん。
 ローズさんには主に皇妃としての政務のお手伝いをしていただきます。
 私も、仕事でリリィ様の側を離れる事があります。
 ですので、ジュディさんがリリィ様の側にいてくれると助かります。」

「へ?」

 さらっと、重要な事を言われたジュディは状況を飲み込むのに苦労した。

「皇帝陛下や皇妃殿下に付き従うだけの既存の侍女は必要ありません。
 他と違うからこそ、あなたは選ばれた。
 ・・・早く、慣れて下さいね。」

 あんぐりと口を開けたままのジュディにアリスは、それまでと違いにっこりと微笑んだ。
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