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決して誰もが同じでない

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 気持ちを整理出来ずにいたジュディ・ムルティアも、次第に本当に自分は龍の姫巫女様の侍女になるのだと理解して緊張感に包まれていた。

「あまり気負わなくて良いです。
 リリィ様が王侯貴族と過ごし始めたのは最近の話で、本来は気さくな方です。
 研修では一通りの事を学んでこられたと思うので、ここからはリリィ様付きになる為に私がお手伝い致します。」

 無表情のアリスであるが、何処となく優しさが見えていた。

「ローラ様も短期間で研修を受けて来られたとお聞きしました。」

 佇むローラに目を向ければ、令嬢然とした笑顔ではなく柔らかい微笑みで頷いた。

「以前の礼儀作法は社交界で使えても、侍女としてお仕えするのとは事が違いますから、教えを乞いて参りました。
 至らぬ点が御座いましたら、御指摘頂ければ直します。
 どうぞ、宜しくお願いします。」

 アリスはローラの努力に納得すると頷いた。

「侍女となられる御2人に先に説明しておきます。
 基本的にリリィ様は自分の事は自分でされます。
 手伝いが必要な時はご自分でお願いしてくると思うので、それまで余計な世話は不要です。」

「えっ?」

 驚く、ジュディにアリスは初めて微笑んだ。

「リリィ様は、そういう方だという事を覚えていて下さい。
 慣れてくれば、問題ありません。」

 驚きで声が出ないジュディの代わりにローラはアリスに問いかけた。

「自由な方なのですね?
 ドレスなどお召しになる時は流石にお手伝いした方が良いでしょうね。」

「はい。
 式典の時や、外交などの時は必要になると思います。
 しかし、普段はリリィ様は御自分で仕立てられた緩いドレスを着られるので、1人で十分なんです。」

「自分で仕立てる!?」

 再び、ジュディがマヌケな声を出した。

「リリィ様は様々な事が出来ます。
 これ位で驚いていたら身が持ちませんよ。
 早めに慣れて下さいね。
 当分は、こちらの部屋の改装に時間を使う事になるでしょう。
 実は、当初の予定と大幅に変更される事になったのです。
 皇帝陛下の御言葉から始まったのですが、その分、仕事が増えてしまいました。
 本来なら研修生だったジュディさんには、見習いの期間を経て正式に侍女になって頂く予定だったのですが、そうも言ってられないので徐々に仕事に慣れて頂きます。」
 
 アリスの説明にジュディは顔を引き攣らせて頷いた。
 その後、リリィが部屋のリフォームの設計も工事も担うと聞き、これは大変な主人を持つ事になったとジュディだけじゃなくローラも冷や汗を掻き始めた。

「因みに、離宮もリリィ様が改築されたんですよ。
 後ほど案内いたします。
 楽しみにしていて下さい。」

「・・・承知しました。」

 柔和の顔を強張らせて頷くローラの気持ちが分かるのか、ジュディが小刻みに頷いているのが見えた。

「1番重要な事をお伝えします。」
 
 今までと違い、真剣な顔のアリスに2人の顔が引き締まる。

「リリィ様に御仕えする上で、他の令嬢と大いに違う事があります。
 リリィ様の側には必ず龍がおります。
 2人・・・いや、ロメオも加えて3人には龍との付き合い方も学んで頂きます。」

 既に脳の許容範囲を超えてしまったジュディは目眩で目の前がチカチカするのだった。
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