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決して誰もが同じでない

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 侍女の研修を受けていた筈のタマキは、何故に自分が皇帝夫婦の居室に呼ばれたのか分かっていなかった。
 案内された時、この部屋は皇帝陛下と後に結婚される龍の姫巫女様が憩いの場とされる部屋だと聞いた。
 その割には無駄に派手で全然落ち着かない部屋だと思ったのは必死に飲み込んだ。

 子沢山の子爵家の四女として産まれたタマキは上に5人の兄と姉がおり、既に長男が後を継ぎ、姉達は嫁いで行った。
 他の兄達も仕事を決め、幼い弟や妹がいるから自分も、いつまでも穀潰しでいるわけにはいかないと家を出る決意をした。

 何処ぞの高貴な貴族に雇われれば恩の字と思っていたところに、まさかの王宮で侍女の募集があると聞いた。

 貴族の爵位や平民に関係なく、研修から受けられると聞けば、掃除の係だろうと安定な収入が得られるのならば良いと飛び付いた。

 さして期待もせずに王宮に来てみれば、相部屋とはいえ過ごしやすい部屋を貰い、読み書きからの勉学にマナーの講座、そして皇帝陛下や皇妃殿下のお世話を担う侍従、侍女の研修も受けられた。
 
 兄弟が多く、もっと勉強したいと我儘も言えない環境にいたタマキにしたら幸運だった。

 有難い事だし、さして大きな不満もないが閉口するのは、自分よりも高位な貴族達の不真面目な態度である。

 折角の就職のチャンスも無駄にしてしまうかもしれない程に大声を上げて叱りつけたい感情に襲われるのは、悪戯っ子な弟と妹がいる姉の心境が疼くからかもしれない。

 高位貴族の子息と令嬢の目的が明らかに自分と違う事を理解していたタマキは冷静に馬鹿馬鹿しいと思っていた。
  
 侍従として取り立てられ、出世すれば雑用だけじゃない名誉ある仕事にありつけると目論む子息達。
 でも、貴族であり本当に国の中枢での仕事を望むのなら最初から文官として取り立てられているはずだ。
 恐らく学園とやらで落ちこぼれの烙印でも押されたのだろうと推測した。

 それ以上に呆れるのは、皇帝陛下の側室もしくは愛妾にならんとする令嬢達だ。
 皇帝陛下は即位を前に龍の姫巫女様を婚約者にと望まれた。
 そして、生涯に龍の姫巫女様しか娶らないし側にも置かないと宣言されたのだ。
 どんな奇跡を期待して、仕事すら全うぜずに侍女になろうとしているのだろう。

 誰に言うでもない愚痴に溜息を吐くと、タマキは自分と同じく呼び出されていた他の2人を横目で観察した。

 1人はベテラン感が満載であり、背筋もしっかりと伸び切った美しい女性だった。
 どこぞの奥方かと見まごうばかりの女性に見惚れていれば、目が合うと優しく微笑まれた。
 恥ずかしくなって会釈をすれば、今度は自分の弟と同じ位の歳の少年に目を向けた。

 こちらは落ち着きなく周囲を見渡している。
 不自然なお腹の膨らみが気になるところだが、この部屋に入るまでに持ち物や身なりのチェックを受けたタマキだ。
 きっと同じ事をされた少年が危険な物を持っているはずがないと結論付けた。

 その時だった。

「お待たせしたわ。」

 真っ白な美しい髪を持った天使かと見まごうばかりの女性が現れたのだった。
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