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決して誰もが同じでない

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 騒動から暫くして、王宮内に龍の姫巫女の姿が見られた。
 
 皇帝と、その婚約者は寛ぐには決して向いていない部屋を見渡していた。

 柱1つとっても金や宝石が使用された部屋は穏やかな居室・・・リビングとは程遠い。

「何度見ても、ロンサンティエの皇帝って悪趣味よね。」

「それに私も含まれてる?」

 赤の壁紙には金糸を使った刺繍が施され、まるで自分がこの部屋の支配者の様に威嚇しているようだ。

「歴代の皇帝が、自分の権威を示す為に好き様々に手を加えているんだ。
 それでは装飾に纏まりもないのも仕方無いと思わないかい?」

 皇帝ファヴィリエ・ルカは婚約者である龍の姫巫女が王宮にやって来ると聞いて、公務の合間に顔を見せに来ていた。

「安心して。
 これが変だと気が付いているのだから、貴方はまともよ。
 もしかして、皇帝じゃないのかも。」

「・・・あぁ、安心した。
 ロンサンティエの皇帝っぽいと言われたらどうしようかと思った。
 あんな輩にはなりたくないから、一生言わないで。」

「それは貴方次第じゃない?」

「精進しよう。」

 互いにクスクスと笑いながら会話するファヴィリエ・ルカとリリィは以前よりも互いの距離が近くなった事に心地良さを感じていた。

 2人の仲の良さに安心した様に、共についてきた宰相フィリックス・ガルシアが問いかけた。

「それで?新しい侍従と侍女は見つかりました?
 ここに来るまでに見て来られたと聞きましたよ?」

 最初に会った時よりかは肩の力を抜いているフィリックスにリリィは微笑むと先程まで見聞きした話をした。
 
 ファヴィリエ・ルカとフィリックスは特にデリーヌ・ピュメロン侯爵令嬢の話に眉を顰めていたが、リリィが問題にもしないで話続けるので耳を向けていた。

「それで、その少年はちゃんと育つのかい?」

 最後まで聞き終えたフィリックスの問いに、隠し扉などないか探していたコテツが肩を竦めた。

「本人次第でしょう。」

 素っ気なく答えるコテツにリリィは苦笑した。

 ーーー俺とアリスで育てる

 コテツがそう言ったのだ。
 この際、少年の素質について考える必要はない。
 コテツとアリスの手に掛かれば絶対に、あの少年は素晴らしい従者に育つに決まっている。

 ファヴィリエ・ルカも真意を読み取ったようで、楽しそうに微笑んで「そう。」と答えた。

「リリィ様がお気に召したのも理解しました。
 あの場でリリィ様が、その少年を欲すれば角も立ったでしょうが・・・罰を理由にしたコテツ殿が上手く纏めてくれて何よりです。
 上手く育てば、後々ブランチ辺境伯家の誰かの養子にしてしまえば良いでしょう。」

 簡単に事を運ばせるフィリックスにファヴィリエ・ルカもコクっと頷いた。

「そうだな。
 ブランチ辺境伯家なら問題ないだろう。」

「ちょっと!
 ブランチ辺境伯家からは家臣は、これ以上取れないんじゃなかったの?
 それで良いなら、最初から面倒な選別なんていらないでしょう!」

 そこに待てを叫んだリリィにフィリックスが哀れな子を見る様に眉を下げた。

「良いわけないでしょう。
 問題はリリィ様には絶対的なブランチ辺境伯家味方がおりますが、ルカ様は、まだ見極め中って事です。
 当然、我がガルシア侯爵家が誠心誠意お支え致しますが、仲間は多い方が良いでしょう。
 ですので、もう1人の目をつけられた女性についても調べておきます。」

 如才ないフィリックスにリリィは諦めた様に頷いた。

「それは確かに大切。
 やっぱり、人は面倒ね。」
 

 
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