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後宮にも新たな風が吹く

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 その日の夜にリリィの離宮“百合の宮”に集まったのは、ディミトリオ・ハクヤにマドレーヌ、マムにそれぞれの侍従や侍女達である。
 
 そしてリリィの隣には皇帝ファヴィリエ・ルカが嬉しそうにオムライスを頬張っている。

「こうやって、皆でご飯を食べるのは美味しいですね。」

 息子が食べ物に夢中になっているのを苦笑してみていたマドレーヌにディミトリオ・ハクヤが微笑みながら頷いた。

「リリィ様の手作りを頂けて光栄ですわ。」

 頬に手を当てて小首を傾げて顔を綻ばしているのはマムである。

「そんなに気負う必要はありませんよ。
 王宮の料理人達の方が、豪華なものを作るでしょう。」

「私はリリィの料理が大好きです。」

 謙遜するリリィにファヴィリエ・ルカが褒め称えた。

「リリィの料理は初めて食べる物ばかりですが、心が温まります。」

 それを聞きリリィは優しく微笑んだ。

「ハクヤ様は龍王島で、このような物をお召し上がりになっていたのですか?」

 マドレーヌの問いにディミトリオ・ハクヤが頷いた。

「えぇ、その時からリリィの料理は格別でしたよ。」
 
 それを聞くとマドレーヌはクスクスと笑った。

「私達が心配するよりも随分と豪華な生活をされていたのですね。」

 揶揄うマドレーヌに皆が釣られる様に笑うとディミトリオ・ハクヤは困ったように頭を掻くと、話を逸らした。

「それではリリィ。
 ユニエ・アミとテムズ・ダンの話を聞かせてくれ。」

「フフフ。
 はいはい。」

 リリィはマドレーヌの前でしか見られないディミトリオ・ハクヤの表情を楽しむと恥ずかしがる彼を手助けして話を変えてやる事にした。

「あの子達は、自分達が何をしていいのか分からないのよ。
 生まれてから毎日、差し出された服をきて、並べられたご飯を食べ、周囲の言われるままに行動してきたの。
 あの子達から考える力を奪ったのは周りの大人達よ。
 あの子達を管理し、己達の思うままに誘導する。
 これは立派な虐待だわ。」

 リリィの言葉に聞いていた物達が眉間に皺を寄せた。

「虐待・・・。
 随分と強い言葉を使ったな。」

 ディミトリオ・ハクヤが戸惑いを見せてもリリィは尻込みしない。

「今だってそう。
 側にいる侍女が双子ちゃんを管理しているの。
 あれはダメ。これもダメ。
 私の言う通りになさい。
 こんな事を言われ続けてきたのよ。
 何も知らずに生きてきたあの子達に正解なんて分かるはずがない。
 だって、誰も教えてこなかったんだから。」

 ユニエ・アミとテムズ・ダンが互いに縋る様に手を握り合っているのは不安の現れだ。
 
「子供は誰よりも自由であるべきだわ。」

 リリィの目の奥に怒りの感情を読み取ったディミトリオ・ハクヤは驚いた様に目を見張った。
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