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後宮にも新たな風が吹く

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 白銀の龍・ルーチェはこの日、リリィから離れて散歩をしていた。

 赤龍のカシャに変わりを頼んだら大喜びでリリィの側に飛んでいったから問題はないだろう。

 後宮の至る所から大工仕事の音がする。
 
 離宮の手入れや屋敷の改装に騒がしくなるってディミトリオ・ハクヤが言っていたから、この事だろうと納得するとルーチェは“桃華の宮”を覗きに行った。

 いつもながらに美しい桃の花が咲き誇る庭園にはマドレーヌとマムがテーブルを挟んでルーチェに気づく事なく談笑している。

「ご両親から手紙が届いたと聞きましたよ。」

「そうなんです。
 無事を報告したら安心してくれました。
 全て、リリィ様やマドレーヌ様。
 皇帝陛下や大公閣下のお陰です。」

「私は私の出来る事をしようと決めただけです。
 リリィ様のお言葉に励まされているのですよ。」

「はい。
 私もです。
 新たな人生を頂いた気分です。」

 和やかな雰囲気の2人にルーチェが満足していると、マドレーヌが神妙な顔をした。

「あれから、“芍薬の宮”の様子は如何ですか?」

 母から離された皇子や皇姫達を気にかけるマドレーヌにマムも悩ましそうに顔を顰めた。

「やはり、年上のユニエ・アミ様とテムズ・ダン様が心配ですね。
 下の子供達と比べて、物事を理解されてますから、自分達が置かれた状況を性格に理解しているようです。
 母君であるロザンナ様と離れ離れになったのも不安でしょう・・・。」

 ユニエ・アミとテムズ・ダンの双子の母である、前皇帝の愛妾ロザンナは散財を理由に実家であるオンブロー伯爵家に戻されている。

 オンブロー伯爵家としても、娘が愛妾であった事で恩恵を受けていたが、出戻りになれば扱いに困っているようで、もう暫くしたら自領の田舎に送る予定であるようだ。

 後宮の屋敷で暮らしていたユニエ・アミとテムズ・ダンにとって離宮とは縁遠く、そして落ち着かない場所なのだろう。
 常に2人で手を握って移動しているのが見受けられ、マムは心配していた。

「やはり、そうですか・・・。」

 マドレーヌは困った様に考え込んだ。

 継承順位を持つ皇子や皇姫は、いつ誰に利用されるか分からない。
 彼らを守る為にも後宮に残す事を決めた皇帝ファヴィリエ・ルカであるが、それはただ囲い込む為ではない。
 後宮に残された子供らには将来的に自立させたいと考えている。

 皇族である事以上に好きな事を見つけ羽ばたいて欲しいと大人達は考えているのだ。

「さて、どうしましょうか。
 2人を引き離すのは簡単ですが、母親から離れた子供達を再び無理やりに分けるのは良い事に思えません。
 ・・・まだ、離宮での暮らしが始まったばかりです。
 様子を見ましょう。」

「そうですね。
 毎日、顔を見て参ります。」

 マドレーヌとマムの会話を聞き終えるとルーチェはフラァ~と飛び立っていった。
 
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