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皇帝が欲しかったもの
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良い事を思い付いたと気持ち良い目覚めを迎えた朝。
ベッドを飛び出たハイゴール・ウィリは声高に言った。
「あの女が欲しい!
今すぐに、連れて来い。」
最初、ハイゴール・ウィリが何を言っているのか分からなかった侍従や侍女達も、次第に顔色をを青褪めて慌てて駄目だと言い始めた。
「私が欲しいと言っているのだ!」
これ程までに駄目と言われた事のないハイゴール・ウィリの癇癪は凄まじかった。
「あの方は御父君の奥方様でございます。
誰であろうと皇帝陛下の物を奪う事は叶いません。」
侍従の言葉に騒いでいたハイゴール・ウィリはピタリと止まった。
「父上の物は奪ってはいけないのか?」
「そうです。
皇帝陛下の物は誰も奪う事は出来ません。」
「・・・何故だ?」
納得のいなかいハイゴール・ウィリが頬を膨らますと侍従が言い聞かせるように膝をついた。
「皇帝陛下こそが、人類の頂点であり、龍王と話す事の出来る唯一の方なのです。
ハイゴール・ウィリ様は、その方の1番目の皇子様にございます。
今は、まだ皇帝陛下の庇護下にあられます。
皇帝陛下の奥方様を所望する事は叶いません。」
大人達の常識などハイゴール・ウィリには分からない。
どうにかして諦めさせようとする侍従や侍女達を振り切って、扉に走って行った。
「もう良い!
自分で父上に申し上げる!!」
扉を開け、言い放ったハイゴール・ウィリの前に煌びやかな布が立ち塞がった。
「・・・騒がしい。」
滅多に会う事もない母がハイゴール・ウィリを見下ろしていた。
ぶつかる事さえなかったが、勢い余ってハイゴール・ウィリは転んでしまった。
「情けない姿を見せるでない。
何を騒いでいたのだ?」
問いかける母にハイゴール・ウィリは急いで立ち上がって言った。
「父上に父上の物を下さいとお願いしに参るのです。。」
自信たっぷりの息子に母である皇妃は眉間に皺を寄せた。
詳細を侍女から囁かれた皇妃は、今までに見た事もない蔑んだ顔で息子を睨みつけた。
「所詮。お前もあの男と同じであったか。
穢らわしい女を欲しがるとはな。
良いか。
この離宮であの女の事を口にしてみろ。
例え、息子であろうとも容赦なく鞭を打つ。」
暖かい眼差しで見られた記憶はない。
しかし、今の様な恐ろしい顔で見られた覚えもない。
ハイゴール・ウィリは母の怒りの前に全身が震えるのが分かった。
息子の返事を待たずに去って行く母の背を泣きながら見つめた。
寂しさなのか恐怖なのか、この時のハイゴール・ウィリには分からなかった。
いや、大人になっても分からないのかもしれない。
あの日、ハイゴール・ウィリは初めて欲しい物を手に入れる事が出来なかった。
美しい女性・・・。
それこそがディミトリオ・ハクヤの母である側妃カヤノであった。
ベッドを飛び出たハイゴール・ウィリは声高に言った。
「あの女が欲しい!
今すぐに、連れて来い。」
最初、ハイゴール・ウィリが何を言っているのか分からなかった侍従や侍女達も、次第に顔色をを青褪めて慌てて駄目だと言い始めた。
「私が欲しいと言っているのだ!」
これ程までに駄目と言われた事のないハイゴール・ウィリの癇癪は凄まじかった。
「あの方は御父君の奥方様でございます。
誰であろうと皇帝陛下の物を奪う事は叶いません。」
侍従の言葉に騒いでいたハイゴール・ウィリはピタリと止まった。
「父上の物は奪ってはいけないのか?」
「そうです。
皇帝陛下の物は誰も奪う事は出来ません。」
「・・・何故だ?」
納得のいなかいハイゴール・ウィリが頬を膨らますと侍従が言い聞かせるように膝をついた。
「皇帝陛下こそが、人類の頂点であり、龍王と話す事の出来る唯一の方なのです。
ハイゴール・ウィリ様は、その方の1番目の皇子様にございます。
今は、まだ皇帝陛下の庇護下にあられます。
皇帝陛下の奥方様を所望する事は叶いません。」
大人達の常識などハイゴール・ウィリには分からない。
どうにかして諦めさせようとする侍従や侍女達を振り切って、扉に走って行った。
「もう良い!
自分で父上に申し上げる!!」
扉を開け、言い放ったハイゴール・ウィリの前に煌びやかな布が立ち塞がった。
「・・・騒がしい。」
滅多に会う事もない母がハイゴール・ウィリを見下ろしていた。
ぶつかる事さえなかったが、勢い余ってハイゴール・ウィリは転んでしまった。
「情けない姿を見せるでない。
何を騒いでいたのだ?」
問いかける母にハイゴール・ウィリは急いで立ち上がって言った。
「父上に父上の物を下さいとお願いしに参るのです。。」
自信たっぷりの息子に母である皇妃は眉間に皺を寄せた。
詳細を侍女から囁かれた皇妃は、今までに見た事もない蔑んだ顔で息子を睨みつけた。
「所詮。お前もあの男と同じであったか。
穢らわしい女を欲しがるとはな。
良いか。
この離宮であの女の事を口にしてみろ。
例え、息子であろうとも容赦なく鞭を打つ。」
暖かい眼差しで見られた記憶はない。
しかし、今の様な恐ろしい顔で見られた覚えもない。
ハイゴール・ウィリは母の怒りの前に全身が震えるのが分かった。
息子の返事を待たずに去って行く母の背を泣きながら見つめた。
寂しさなのか恐怖なのか、この時のハイゴール・ウィリには分からなかった。
いや、大人になっても分からないのかもしれない。
あの日、ハイゴール・ウィリは初めて欲しい物を手に入れる事が出来なかった。
美しい女性・・・。
それこそがディミトリオ・ハクヤの母である側妃カヤノであった。
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