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道端に咲く野菊
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マムは夢を見ていた。
ヒラヒラと百合の花が舞い散る花畑を娘が楽しそうに駆け回っていた。
「ぅぅん。」
小さな息を吐き目を開いたマムは、見慣れぬベッドに気づくと自分が何処にいるのか思い出し、飛び上がった。
「あぁっ!!」
「おはよう御座います。」
そこには真っ白な衣装を器用に捌きながら近寄ってくる少女がいた。
「龍の姫巫女様・・・。」
少女はニッコリと微笑むと小さなティーカップに茶を注ぐとマムに差し出した。
「リリィとお呼びくださいな。」
戸惑いながら小さなティーカップを受け取ったマムは口を付ける事なく見つめた。
「毒など入っていませんよ。
目覚めに優しい薬草茶です。」
クスクスと笑うリリィが楽しそうにティーカップに口をつけた。
慌てたのはマムだった。
「そんな事は・・・。」
瞬時にカップの茶を飲むと、マムはホウッ頬を赤く染めた。
「・・・美味しい。」
「随分とお疲れでしたからね。」
マムはリリィの優しい声にコクンと頷いた。
しかし、娘がいない事に気づくと再び慌てるようにベッドから出ようとした。
「大丈夫。
今は、カルアとアンディと共に食事をしています。
安心して下さい。」
リリィが摩るマムの手は、何処となく痩せていた。
それにも気付きながら無理矢理自分に話を聞こうとしないリリィを見つめたマムの目から涙が溢れた。
「私を罰して下さい。
・・・お優しい龍の姫巫女様を、私は自分可愛さに害そうとしたです。」
マムの口から聞いた話はリリィの想像通りの事だった。
マムの両親は愛妾となった娘の恩恵を受けて働かなくても良い程の褒美を取らされた。
娘を売ったようだと怒れる両親も皇帝相手に喧嘩を売るわけにもいかない。
実際は平民である両親の後見役を名目に褒美は伯爵家に搾取され、身柄も監視されている状態だった。
娘を平民の侍女如きに傷つけられたと復讐の思いもあるのだろうが、こればかりはマムや、その親達には預かり知らぬ事だった。
そして、今回は伯爵家の息のかかった使用人がマムを訪れ、龍の姫巫女の暗殺を命令してきたのだ。
両親、そして娘の命を引き換えに・・・。
「リリィ様の暗殺を一度でも頭を過った私は愚かな者です。
どうか、どうか私を罰して下さい。」
涙を流すマムをリリィは困ったように顔を顰めた。
「人とは何と愛おしいのでしょうね。
貴方は私を害そうとする以前に、両親と娘を守ろうとしたのでしょう?
それを罰する必要がありますか?」
リリィの言葉にマムは涙も拭かずにキョトンとした。
「ほら、ご覧になって。
私、ピンピンしています。
貴方に怪我1つ負わされていないわ。」
クルクルと回ってみせるリリィにマムの目には再び涙が溢れていた。
「でも。それでも・・・私は・・・。」
望んだわけでもない。
永遠の愛を求める事もない。
逃げたしたい思いに蓋をし、両親や子を人質に取られた哀れな愛妾に、何を罰する事ができるのだろう。
リリィは考え込むと、真剣な顔でマムの肩を掴んだ。
「本当に罰してくれと言うのなら、私の言う事が聞けますか?」
マムは涙を拭うと、それまでとは違う決意の顔で頷いた。
「何なりと。」
すると、リリィは姫巫女とは思えない悪い顔でニヤリと笑った。
「それなら死んで下さい。」
その日の深夜、皇帝ハイゴール・ウィリの元に愛妾マムの死の報告が齎された。
ヒラヒラと百合の花が舞い散る花畑を娘が楽しそうに駆け回っていた。
「ぅぅん。」
小さな息を吐き目を開いたマムは、見慣れぬベッドに気づくと自分が何処にいるのか思い出し、飛び上がった。
「あぁっ!!」
「おはよう御座います。」
そこには真っ白な衣装を器用に捌きながら近寄ってくる少女がいた。
「龍の姫巫女様・・・。」
少女はニッコリと微笑むと小さなティーカップに茶を注ぐとマムに差し出した。
「リリィとお呼びくださいな。」
戸惑いながら小さなティーカップを受け取ったマムは口を付ける事なく見つめた。
「毒など入っていませんよ。
目覚めに優しい薬草茶です。」
クスクスと笑うリリィが楽しそうにティーカップに口をつけた。
慌てたのはマムだった。
「そんな事は・・・。」
瞬時にカップの茶を飲むと、マムはホウッ頬を赤く染めた。
「・・・美味しい。」
「随分とお疲れでしたからね。」
マムはリリィの優しい声にコクンと頷いた。
しかし、娘がいない事に気づくと再び慌てるようにベッドから出ようとした。
「大丈夫。
今は、カルアとアンディと共に食事をしています。
安心して下さい。」
リリィが摩るマムの手は、何処となく痩せていた。
それにも気付きながら無理矢理自分に話を聞こうとしないリリィを見つめたマムの目から涙が溢れた。
「私を罰して下さい。
・・・お優しい龍の姫巫女様を、私は自分可愛さに害そうとしたです。」
マムの口から聞いた話はリリィの想像通りの事だった。
マムの両親は愛妾となった娘の恩恵を受けて働かなくても良い程の褒美を取らされた。
娘を売ったようだと怒れる両親も皇帝相手に喧嘩を売るわけにもいかない。
実際は平民である両親の後見役を名目に褒美は伯爵家に搾取され、身柄も監視されている状態だった。
娘を平民の侍女如きに傷つけられたと復讐の思いもあるのだろうが、こればかりはマムや、その親達には預かり知らぬ事だった。
そして、今回は伯爵家の息のかかった使用人がマムを訪れ、龍の姫巫女の暗殺を命令してきたのだ。
両親、そして娘の命を引き換えに・・・。
「リリィ様の暗殺を一度でも頭を過った私は愚かな者です。
どうか、どうか私を罰して下さい。」
涙を流すマムをリリィは困ったように顔を顰めた。
「人とは何と愛おしいのでしょうね。
貴方は私を害そうとする以前に、両親と娘を守ろうとしたのでしょう?
それを罰する必要がありますか?」
リリィの言葉にマムは涙も拭かずにキョトンとした。
「ほら、ご覧になって。
私、ピンピンしています。
貴方に怪我1つ負わされていないわ。」
クルクルと回ってみせるリリィにマムの目には再び涙が溢れていた。
「でも。それでも・・・私は・・・。」
望んだわけでもない。
永遠の愛を求める事もない。
逃げたしたい思いに蓋をし、両親や子を人質に取られた哀れな愛妾に、何を罰する事ができるのだろう。
リリィは考え込むと、真剣な顔でマムの肩を掴んだ。
「本当に罰してくれと言うのなら、私の言う事が聞けますか?」
マムは涙を拭うと、それまでとは違う決意の顔で頷いた。
「何なりと。」
すると、リリィは姫巫女とは思えない悪い顔でニヤリと笑った。
「それなら死んで下さい。」
その日の深夜、皇帝ハイゴール・ウィリの元に愛妾マムの死の報告が齎された。
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