115 / 473
皇帝が欲しかったもの
114
しおりを挟む
「失礼致します。」
リリィの和やかなダイニングリビングにディミトリオ・ハクヤの侍従クレイが入ってきた。
その顔は一応に暗い。
「何かあったか?」
問いかけるディミトリオ・ハクヤにクレイはコクンと頷いた。
「国王陛下が龍の姫巫女リリィ様の離宮へ訪問されると通達がありました。
・・・今夜です。」
それが何を意味するのか誰もが分かっていた。
「そうか・・・今夜か。」
呟くディミトリオ・ハクヤは隣に座っているファヴィリエ・ルカが握りしめる手が白くなっているのに気がつくと肩をポンと叩いた。
「大丈夫です。
リリィは安全ですから。」
「・・・でも。」
もう父とは思えない皇帝であるが、好色である事は子供の頃より知っていた。
ファヴィリエ・ルカは後宮で生き残った皇子の中でも皇帝と距離をとっている1人である。
皇帝が何を理由にリリィの元を訪れようとしているかは一目瞭然だった。
初めて会った時に、あれ程の醜態を晒しておいて、今更リリィを所望する理由は先の宴の時に目にしたリリィの妖艶な舞を目にしたからだろう。
「リリィは皇帝を拒否する事のできる唯一の存在です。
それにほら、ご覧なさい。」
ディミトリオ・ハクヤはキッチンから聞こえるリリィの笑い声に微笑んだ。
そこには白銀の龍ルーチェと戯れるリリィの姿があった。
「龍達がリリィを守ってくれます。
兄上・・・皇帝陛下が痛い目を見る事なく事態が収まればいいのですが。」
後宮に身を置いているという事は皇帝陛下の所有物を意味する。
恐らく皇帝ハイゴール・ウィリは今もそう思っているのだろう。
ディミトリオ・ハクヤは兄を哀れに思った。
もはや、兄の足元は崩れ始めているのだ。
気づいていないのか、気づいていて今も醜態を晒そうとしているか・・・。
ディミトリオ・ハクヤは大きな溜息を吐いた。
「頼むから、王宮を壊すような真似だけはしないでくれ。
修繕やら撤去に金がかかり過ぎる。」
ディミトリオ・ハクヤの言葉を聞いたリリィがキッチンから顔を出す。
「それは彼次第でしょう。
龍の怒りは誰にも止められない。
何を犠牲にし、何を得るのか・・・そろそろ覚悟を決めなさい。」
ファヴィリエ・ルカは叔父とリリィの会話の意味を理解しようと必死だった。
『君にできる事は何もないよ。』
纏わり付くルーチェがファビリエ・ルカに言った。
「・・・しかし。」
『君の出番はまだ先の事。
今は、静観して事態を観察でもしてるんだね。
生き残る・・・それが、君の仕事だ。』
ルーチェの金色の目がファヴィリエ・ルカを縛り付けて逃がさない。
ファヴィリエ・ルカは龍の助言を受け入れると素直に母の元へ帰って行った。
リリィの和やかなダイニングリビングにディミトリオ・ハクヤの侍従クレイが入ってきた。
その顔は一応に暗い。
「何かあったか?」
問いかけるディミトリオ・ハクヤにクレイはコクンと頷いた。
「国王陛下が龍の姫巫女リリィ様の離宮へ訪問されると通達がありました。
・・・今夜です。」
それが何を意味するのか誰もが分かっていた。
「そうか・・・今夜か。」
呟くディミトリオ・ハクヤは隣に座っているファヴィリエ・ルカが握りしめる手が白くなっているのに気がつくと肩をポンと叩いた。
「大丈夫です。
リリィは安全ですから。」
「・・・でも。」
もう父とは思えない皇帝であるが、好色である事は子供の頃より知っていた。
ファヴィリエ・ルカは後宮で生き残った皇子の中でも皇帝と距離をとっている1人である。
皇帝が何を理由にリリィの元を訪れようとしているかは一目瞭然だった。
初めて会った時に、あれ程の醜態を晒しておいて、今更リリィを所望する理由は先の宴の時に目にしたリリィの妖艶な舞を目にしたからだろう。
「リリィは皇帝を拒否する事のできる唯一の存在です。
それにほら、ご覧なさい。」
ディミトリオ・ハクヤはキッチンから聞こえるリリィの笑い声に微笑んだ。
そこには白銀の龍ルーチェと戯れるリリィの姿があった。
「龍達がリリィを守ってくれます。
兄上・・・皇帝陛下が痛い目を見る事なく事態が収まればいいのですが。」
後宮に身を置いているという事は皇帝陛下の所有物を意味する。
恐らく皇帝ハイゴール・ウィリは今もそう思っているのだろう。
ディミトリオ・ハクヤは兄を哀れに思った。
もはや、兄の足元は崩れ始めているのだ。
気づいていないのか、気づいていて今も醜態を晒そうとしているか・・・。
ディミトリオ・ハクヤは大きな溜息を吐いた。
「頼むから、王宮を壊すような真似だけはしないでくれ。
修繕やら撤去に金がかかり過ぎる。」
ディミトリオ・ハクヤの言葉を聞いたリリィがキッチンから顔を出す。
「それは彼次第でしょう。
龍の怒りは誰にも止められない。
何を犠牲にし、何を得るのか・・・そろそろ覚悟を決めなさい。」
ファヴィリエ・ルカは叔父とリリィの会話の意味を理解しようと必死だった。
『君にできる事は何もないよ。』
纏わり付くルーチェがファビリエ・ルカに言った。
「・・・しかし。」
『君の出番はまだ先の事。
今は、静観して事態を観察でもしてるんだね。
生き残る・・・それが、君の仕事だ。』
ルーチェの金色の目がファヴィリエ・ルカを縛り付けて逃がさない。
ファヴィリエ・ルカは龍の助言を受け入れると素直に母の元へ帰って行った。
110
あなたにおすすめの小説
今さら「間違いだった」? ごめんなさい、私、もう王子妃なんですけど
有賀冬馬
恋愛
「貴族にふさわしくない」そう言って、私を蔑み婚約を破棄した騎士様。
私はただの商人の娘だから、仕方ないと諦めていたのに。
偶然出会った隣国の王子は、私をありのまま愛してくれた。
そして私は、彼の妃に――。
やがて戦争で窮地に陥り、助けを求めてきた騎士様の国。
外交の場に現れた私の姿に、彼は絶句する。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる