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道端に咲く野菊
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「此方にお通しして。」
「えっ。」
「何よ。
私のお客様を私が何処に通しても問題ないでしょう?」
リリィは戸惑うディミトリオ・ハクヤにお構いなしで客を迎える準備を始めた。
このダイニングリビングにディミトリオ・ハクヤ達以外を迎え入れる事は初めて事である。
様子を伺っていたクレイが黙って自分を見つめている事に気がついたディミトリオ・ハクヤは片手を上げた。
「お通ししなさい。」
「畏まりました。」
下がって行ったクレイが1人の若者と老人を連れて戻ってきた。
若者・・・ファヴィリエ・ルカは馴染みのない内装に戸惑いながらダイニングリビングに入ると、頭を下げた。
「龍の姫巫女様。叔父上。
御機嫌よう。
リリィ様。先日は母の離宮にお越し頂きまして有難う御座いました。
これは、母から持たされた桃の実でございます。
どうぞ、お召し上がり下さい。」
「ご丁寧に有難う御座います。
マドレーヌ様に御礼をお伝え下さい。
どうぞ、其方の椅子にお座り下さい。」
「失礼します。」
頭を下げたファヴィリエ・ルカがピンク色の髪をかき上げた。
「その後、マドレーヌ様はいかがお過ごしですか?」
頃合い良く用意した紅茶をリリィが注ぎながら問いかけるとファヴィリエ・ルカは眉を下げて微笑んだ。
「リリィ様がいらした日より、随分と心穏やかに過ごしております。
先程も庭を散歩して桃の花を楽しんでおいででした。」
それを聞いて、誰よりも優しく微笑んだのはディミトリオ・ハクヤだった。
「良い事です。」
ファヴィリエ・ルカは嬉しそうに頷いた。
「はい。私も、そう思います。」
年老いた侍従から桃を受け取ったコテツが礼を言いながらキッチンに向かった。
それをファヴィリエ・ルカは珍しそうに目で追っている。
「食事をする場所からキッチンが見えるのですか?」
「はい。
この間取りをダイニングキッチンと申します。
温かい料理が冷める事なく美味しく食べられます。」
「・・・温かい料理。」
考え込むファヴィリエ・ルカの気持ちが分かるディミトリオ・ハクヤは悲しそうに眉を下げた。
基本、皇族が口にする料理は冷めている事が多い。
それは料理人が作った料理が何人もの毒味を通じてやってくる為に冷めてしまうのだ。
皇子時代には当たり前と思っていた事も、今や温かい料理に慣れ、リリィの料理を知ってしまった自分は、もう以前には戻れないディミトリオ・ハクヤだった。
「それでは何か、召し上がっていかれますか?」
考え込んでいたディミトリオ・ハクヤの耳にリリィの予想外の提案が入る。
「是非!」
ファヴィリエ・ルカの楽しそうな声に目を細めたディミトリオ・ハクヤだった。
「えっ。」
「何よ。
私のお客様を私が何処に通しても問題ないでしょう?」
リリィは戸惑うディミトリオ・ハクヤにお構いなしで客を迎える準備を始めた。
このダイニングリビングにディミトリオ・ハクヤ達以外を迎え入れる事は初めて事である。
様子を伺っていたクレイが黙って自分を見つめている事に気がついたディミトリオ・ハクヤは片手を上げた。
「お通ししなさい。」
「畏まりました。」
下がって行ったクレイが1人の若者と老人を連れて戻ってきた。
若者・・・ファヴィリエ・ルカは馴染みのない内装に戸惑いながらダイニングリビングに入ると、頭を下げた。
「龍の姫巫女様。叔父上。
御機嫌よう。
リリィ様。先日は母の離宮にお越し頂きまして有難う御座いました。
これは、母から持たされた桃の実でございます。
どうぞ、お召し上がり下さい。」
「ご丁寧に有難う御座います。
マドレーヌ様に御礼をお伝え下さい。
どうぞ、其方の椅子にお座り下さい。」
「失礼します。」
頭を下げたファヴィリエ・ルカがピンク色の髪をかき上げた。
「その後、マドレーヌ様はいかがお過ごしですか?」
頃合い良く用意した紅茶をリリィが注ぎながら問いかけるとファヴィリエ・ルカは眉を下げて微笑んだ。
「リリィ様がいらした日より、随分と心穏やかに過ごしております。
先程も庭を散歩して桃の花を楽しんでおいででした。」
それを聞いて、誰よりも優しく微笑んだのはディミトリオ・ハクヤだった。
「良い事です。」
ファヴィリエ・ルカは嬉しそうに頷いた。
「はい。私も、そう思います。」
年老いた侍従から桃を受け取ったコテツが礼を言いながらキッチンに向かった。
それをファヴィリエ・ルカは珍しそうに目で追っている。
「食事をする場所からキッチンが見えるのですか?」
「はい。
この間取りをダイニングキッチンと申します。
温かい料理が冷める事なく美味しく食べられます。」
「・・・温かい料理。」
考え込むファヴィリエ・ルカの気持ちが分かるディミトリオ・ハクヤは悲しそうに眉を下げた。
基本、皇族が口にする料理は冷めている事が多い。
それは料理人が作った料理が何人もの毒味を通じてやってくる為に冷めてしまうのだ。
皇子時代には当たり前と思っていた事も、今や温かい料理に慣れ、リリィの料理を知ってしまった自分は、もう以前には戻れないディミトリオ・ハクヤだった。
「それでは何か、召し上がっていかれますか?」
考え込んでいたディミトリオ・ハクヤの耳にリリィの予想外の提案が入る。
「是非!」
ファヴィリエ・ルカの楽しそうな声に目を細めたディミトリオ・ハクヤだった。
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