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波乱の宴

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 宴が始まりを見せると、人々は好き様々に語り合いながらも、その視線は龍の姫巫女リリィへと向けられていた。

 初めて龍の巫女を見たという者は勿論の事、謁見の折に目にしていた者達でさえ、この日のリリィには目を奪われていた。

 艶やかに装う他の側妃や愛妾達と違い、リリィが身に纏うシンプルな白い衣装は余計な情報がない分、彼女自身の美しさを際立たせている。

 先程まで、気絶させられた恥ずかしさからリリィに良い感情を持たず、この宴の意味すらも腹立たしく思っていた皇帝ハイゴール・ウィリも、何かに惑わされるようにリリィから視線を動かす事が出来ずにいた。

 そんな皇帝の変化を後宮の女達が見逃すはずがなかった。

 新たなライバルが協力であればあるほど、皇帝の達は棘や毒を出す。

 その相手が龍の姫巫女であろうと、皇帝の寵愛を奪い合う者達にとっては関係ない様子だ。

 楽師達が奏でる音色が宴の場を包み込み、参加者達に雅を見せつける。
 そんな中、皇帝の手が上がる。

「始めよ。」

 いつもの事だった。
 宴が始まり暫くすると皇帝は側室や愛妾達に楽器を持たせたり、舞を披露させた。

 それは宴に参加した者達にとっても楽しみの1つであった。
 
 楽器の得意の者、舞が得意な者、歌が得意の者・・・よりどりみどりの女達が皇帝を喜ばす為に花を添える。
 
 女達は、皇帝の関心を得る為日々の練習を欠かさない。
 
 琴が得意な皇妃メッサリーナ
 横笛を好む第1側妃マドレーヌ
 三絃を扱う第2側妃ハリエ、第3側妃カラ
 皇妃と同じく琴を嗜むのは第4側妃ロザンナであり、舞を好むのは愛妾ラン・ジュオ子爵令嬢である。
 それに継承順位第2位であり、皇帝の愛娘であるアブリエル・エマが歌で加わる。

 舞台に集まる皇妃や側室達を悔しそうに見つめるのは、現段階において絶賛皇帝からの寵愛を得る愛妾ベルナであった。

 しがない商人の娘として生まれたベルナにとって、後宮の女達が幼い頃から磨き上げてきた芸術の才には到底及ばない。
 努力をして練習をしているが人前では拙さが目立つために控えに徹するしか出来ないのだ。
 
 チラリと見上げた皇帝ハイゴール・ウィリがご機嫌に皇妃や側室達を見つめているのを見てしまえば、いくら皇帝の寵愛を得ていると言っても、こんな時ばかりは劣等感が湧き上がってくる。

 ポロロン♪

 皇妃メッサリーナが琴の弦を弾いた。
 
 それに第4側妃ロザンナが合わせ、加えて第2側妃ハリエと第3側妃カラが三絃を奏で始めた。

 第1側妃マドレーヌの横笛が会場に響き渡ると見ていた人々達が惚けるような溜息を吐いた。

 アブリエル・エマ皇姫の小鳥のような歌声に皇帝は微笑むと、優雅に舞い踊る愛妾ランを楽しげに見つめた。

 皇帝の達は見事に役目を果たし、宴に集まった人々を魅了したのだった。
 
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