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混沌なる後宮
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「これが離宮を与えられ側妃と呼ばれる方々と、その御子様達でございます。」
ディミトリオ・ハクヤの従者クレイの説明をリリィは湖を見つめながら聞いていた。
「そして最後にリリィ様が与えられた離宮“百合の宮”で現在存在する離宮は全て埋まりました。」
元は冷遇された側妃が押しやられる為の建物をものの1日で造り変えてしまったリリィ。
既に王宮内でも話題となり、次第に“百合の宮”と呼ばれる様になった。
「あの変態の事だもの。
他にも女性はいるのでしょう?」
揶揄う様なリリィにクレイは苦笑した。
「はい。
認定していないのも含めれば大変な人数になるでしょうが、とりあえず愛妾様との間にいる御子様を御教えしましょう。」
クレイは1度紅茶を口に含めると再び話し始めた。
「離宮ではなく後宮に部屋を与えられている方々がいます。
継承順位第8位アグスト・カリュー様
第9位エイリュール・マリク様
第10位シモツキ・レイ様です。
御三人とも未だ幼く、母君はそれぞれ下級侍女でありました。
とりあえず継承に関しては気になさる事はないとは思います。
それに続き、継承順位第11位となられるスゥーイエ・アンジュ様がおられます。
母君はジュオ子爵家という下級貴族出身ではありますが皇妃メッサリーナ様の侍女を勤めていたラン様という方です。」
「あらあら、皇妃は自分の侍女にまで夫を取られたの?」
クスクスと笑うリリィにクレイは顔を顰めた。
「笑い事じゃないですよ。
実際、愛妾や愛人にはいずれかの側室方の侍女が多いです。
スゥーイエ・アンジュ様の誕生の折には、皇妃の機嫌がすこぶる悪く後宮内も荒れに荒れました。
そのくだらない出来事に主様も巻き込まれたんですから。」
夫からの愛を試す妻により追いかけ回されたディミトリオ・ハクヤの気苦労はいかほどだったろう。
皇妃だけではない。
あの頃は、その他の側妃がディミトリオ・ハクヤに無理難題を押し付けては憂さを晴らしていた。
「それも落ち着いてきたところだったんですがね・・・。」
「まだいるの?」
呆れ気味のリリィにクレイは弱々しく微笑んだ。
「現在、最も寵愛を受けているのがベルナ様です。
これまでと違うのはベルナ様が庶民であり、王宮にも後宮にも勤めていなかった事でしょう。
父親は商人です。
王宮に出入りしている父親の手伝いで登城した時に皇帝陛下がたまたまご覧になられ、気に入られたのです。」
「・・・たまたまねぇ。」
「えぇ。
ご自身達は運命だなんだと吹聴していますが、誰かの思惑が絡んでいると思って間違いないかと・・・。
商人である父親も羽振りが良くなったそうですよ。
そのベルナ様に先頃、ディザンブル・ヒューゴ様という男児が誕生しました。
まだ継承権は認められていませんが、順当にいけば継承順位12位になられる筈です。」
リリィはクレイの長い説明に感謝しながら温かい紅茶を淹れなおしてやった。
本来、その女達の中にリリィも入れる予定だったのだろう。
後宮の女達の胸のざわつきを予想すれば笑わずにはいられない。
しかし、皇帝ハイゴール・ウィリはリリィと会った日に気絶をしてから目覚めても公務を放り投げてベットで過ごしていると聞く。
皇帝がリリィと距離を置いてる現在、側妃や愛妾と呼ばれる女達は静観している。
そんな中、ロンサンティエ帝国に龍の姫巫女が帰ってきたと大々的に知らせる為に王宮に近隣諸国の君主達を招いての宴が開催される事が決まった。
ディミトリオ・ハクヤの従者クレイの説明をリリィは湖を見つめながら聞いていた。
「そして最後にリリィ様が与えられた離宮“百合の宮”で現在存在する離宮は全て埋まりました。」
元は冷遇された側妃が押しやられる為の建物をものの1日で造り変えてしまったリリィ。
既に王宮内でも話題となり、次第に“百合の宮”と呼ばれる様になった。
「あの変態の事だもの。
他にも女性はいるのでしょう?」
揶揄う様なリリィにクレイは苦笑した。
「はい。
認定していないのも含めれば大変な人数になるでしょうが、とりあえず愛妾様との間にいる御子様を御教えしましょう。」
クレイは1度紅茶を口に含めると再び話し始めた。
「離宮ではなく後宮に部屋を与えられている方々がいます。
継承順位第8位アグスト・カリュー様
第9位エイリュール・マリク様
第10位シモツキ・レイ様です。
御三人とも未だ幼く、母君はそれぞれ下級侍女でありました。
とりあえず継承に関しては気になさる事はないとは思います。
それに続き、継承順位第11位となられるスゥーイエ・アンジュ様がおられます。
母君はジュオ子爵家という下級貴族出身ではありますが皇妃メッサリーナ様の侍女を勤めていたラン様という方です。」
「あらあら、皇妃は自分の侍女にまで夫を取られたの?」
クスクスと笑うリリィにクレイは顔を顰めた。
「笑い事じゃないですよ。
実際、愛妾や愛人にはいずれかの側室方の侍女が多いです。
スゥーイエ・アンジュ様の誕生の折には、皇妃の機嫌がすこぶる悪く後宮内も荒れに荒れました。
そのくだらない出来事に主様も巻き込まれたんですから。」
夫からの愛を試す妻により追いかけ回されたディミトリオ・ハクヤの気苦労はいかほどだったろう。
皇妃だけではない。
あの頃は、その他の側妃がディミトリオ・ハクヤに無理難題を押し付けては憂さを晴らしていた。
「それも落ち着いてきたところだったんですがね・・・。」
「まだいるの?」
呆れ気味のリリィにクレイは弱々しく微笑んだ。
「現在、最も寵愛を受けているのがベルナ様です。
これまでと違うのはベルナ様が庶民であり、王宮にも後宮にも勤めていなかった事でしょう。
父親は商人です。
王宮に出入りしている父親の手伝いで登城した時に皇帝陛下がたまたまご覧になられ、気に入られたのです。」
「・・・たまたまねぇ。」
「えぇ。
ご自身達は運命だなんだと吹聴していますが、誰かの思惑が絡んでいると思って間違いないかと・・・。
商人である父親も羽振りが良くなったそうですよ。
そのベルナ様に先頃、ディザンブル・ヒューゴ様という男児が誕生しました。
まだ継承権は認められていませんが、順当にいけば継承順位12位になられる筈です。」
リリィはクレイの長い説明に感謝しながら温かい紅茶を淹れなおしてやった。
本来、その女達の中にリリィも入れる予定だったのだろう。
後宮の女達の胸のざわつきを予想すれば笑わずにはいられない。
しかし、皇帝ハイゴール・ウィリはリリィと会った日に気絶をしてから目覚めても公務を放り投げてベットで過ごしていると聞く。
皇帝がリリィと距離を置いてる現在、側妃や愛妾と呼ばれる女達は静観している。
そんな中、ロンサンティエ帝国に龍の姫巫女が帰ってきたと大々的に知らせる為に王宮に近隣諸国の君主達を招いての宴が開催される事が決まった。
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