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ロンサンティエ帝国の明暗
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皇帝の龍への暴言の前に静まり変えった大広間に、それまで黙っていた龍の姫巫女・リリィの笑い声が響き渡った。
脱ぎ捨てたベールから現れた美しく妖艶な娘に大人達が一瞬見惚れたのも束の間。
リリィは鋭い目で皇帝であるハイゴール・ウィリを睨め付けた。
「ならばロンサンティエの皇帝よ。
何故、私を求めた。
枯れた宝樹、衰退していく国。
その大きな体の割に小さい脳みそで考えた事はあったか?
お前が女を侍らせ、贅を尽くす中で苦しむ民の事を・・・。
考えた事などないだろうな。
ないからこそ、その醜い体でも平気で生きて居られるのだ。」
美しい娘から発せられる毒舌に大広間は静寂した。
リリィはコツコツと足音を立てて皇帝に近づいた。
「しかし良い。
お前はそれで良いのだ。
哀れで愚者な者に今さら改心され崇高な皇帝になって頂く必要などないのだから。
お前は勝手に滅んでいけ。」
吸い込まれる様な空色の瞳に皇帝は怯えてながらフラついたが、抵抗とばかりにリリィに手を伸ばした。
「龍の姫巫女よ。
何でも与えてやろう。
皇帝として余に出来ぬ事などないのだ。
其方の力や龍の力を有効に利用出来るのは皇帝である余だ!」
龍の姫巫女に対する皇帝のあまりに失礼な態度に近隣諸国の要人達が顔を顰める中、リリィはトントンと2歩下がると蔑む様に目を細めて皇帝を見つめた。
「教えてやろう。
龍の姫巫女は自由だ。
力を使うも使わぬも姫巫女次第。
私は龍王より認められしディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエの誠実な心に触れ、その願いを聞き入れた。
ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエは皇位を望んでいない。
ならば、お前に出来た唯一の方法はディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエに助力を乞う事であった。
しかし、出来ぬであろう?
お前には絶対に出来ぬ事だ。
愚かしい人間よ。
その醜い嫉妬心を捨てる事すら出来ていれば、皇帝という座はいつまでもお前の物だったというのに。」
「なっ・・・なっ・・。」
今や顔面蒼白なハイゴール・ウィリは戦慄く事しか出来ずにいた。
「争いが起こるぞ。
お前のさえ居なくなれば、新たな皇帝が生まれ世の乱れはマシになるだろう。
ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエが新たな皇帝に手を貸せば国はより良いものになる。
近隣諸国も今より怯える事なく国交を結ぶ事が出来るだろう。
お前が己を守る為に散りばめたフランコ・トワ・ロンサンティエの血筋は今や世界中に存在する。
いつの日か、世界の中心はロンサンティエではなくなるやも知れないな。」
リリィの言葉にカーライル・ザッツ・ノルデンを始めとした近隣諸国の要人達が納得したように頷いた。
ブルブルと震えるのは皇帝と宰相。
そして、その甘い汁に縋っていたロンサンティエの貴族達であろう。
「そう。
お前の命1つで国は良き方向に向かうのだ。
何と簡単な話だろうな。
皇帝も所詮、ただの人間だと言う事だ。」
死の宣告を受けた皇帝ハイゴール・ウィリ・ロンサンティエ意識が朦朧とし始めた時。
リリィはニッコリと微笑み、片手を天井に向けた。
「それに私は自分の力の使い方は知っている。」
この日、満天の空に光り輝く大きな白銀の龍が姿を現した事で帝国中の人々が龍の姫巫女の帰還を知ったのだった。
脱ぎ捨てたベールから現れた美しく妖艶な娘に大人達が一瞬見惚れたのも束の間。
リリィは鋭い目で皇帝であるハイゴール・ウィリを睨め付けた。
「ならばロンサンティエの皇帝よ。
何故、私を求めた。
枯れた宝樹、衰退していく国。
その大きな体の割に小さい脳みそで考えた事はあったか?
お前が女を侍らせ、贅を尽くす中で苦しむ民の事を・・・。
考えた事などないだろうな。
ないからこそ、その醜い体でも平気で生きて居られるのだ。」
美しい娘から発せられる毒舌に大広間は静寂した。
リリィはコツコツと足音を立てて皇帝に近づいた。
「しかし良い。
お前はそれで良いのだ。
哀れで愚者な者に今さら改心され崇高な皇帝になって頂く必要などないのだから。
お前は勝手に滅んでいけ。」
吸い込まれる様な空色の瞳に皇帝は怯えてながらフラついたが、抵抗とばかりにリリィに手を伸ばした。
「龍の姫巫女よ。
何でも与えてやろう。
皇帝として余に出来ぬ事などないのだ。
其方の力や龍の力を有効に利用出来るのは皇帝である余だ!」
龍の姫巫女に対する皇帝のあまりに失礼な態度に近隣諸国の要人達が顔を顰める中、リリィはトントンと2歩下がると蔑む様に目を細めて皇帝を見つめた。
「教えてやろう。
龍の姫巫女は自由だ。
力を使うも使わぬも姫巫女次第。
私は龍王より認められしディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエの誠実な心に触れ、その願いを聞き入れた。
ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエは皇位を望んでいない。
ならば、お前に出来た唯一の方法はディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエに助力を乞う事であった。
しかし、出来ぬであろう?
お前には絶対に出来ぬ事だ。
愚かしい人間よ。
その醜い嫉妬心を捨てる事すら出来ていれば、皇帝という座はいつまでもお前の物だったというのに。」
「なっ・・・なっ・・。」
今や顔面蒼白なハイゴール・ウィリは戦慄く事しか出来ずにいた。
「争いが起こるぞ。
お前のさえ居なくなれば、新たな皇帝が生まれ世の乱れはマシになるだろう。
ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエが新たな皇帝に手を貸せば国はより良いものになる。
近隣諸国も今より怯える事なく国交を結ぶ事が出来るだろう。
お前が己を守る為に散りばめたフランコ・トワ・ロンサンティエの血筋は今や世界中に存在する。
いつの日か、世界の中心はロンサンティエではなくなるやも知れないな。」
リリィの言葉にカーライル・ザッツ・ノルデンを始めとした近隣諸国の要人達が納得したように頷いた。
ブルブルと震えるのは皇帝と宰相。
そして、その甘い汁に縋っていたロンサンティエの貴族達であろう。
「そう。
お前の命1つで国は良き方向に向かうのだ。
何と簡単な話だろうな。
皇帝も所詮、ただの人間だと言う事だ。」
死の宣告を受けた皇帝ハイゴール・ウィリ・ロンサンティエ意識が朦朧とし始めた時。
リリィはニッコリと微笑み、片手を天井に向けた。
「それに私は自分の力の使い方は知っている。」
この日、満天の空に光り輝く大きな白銀の龍が姿を現した事で帝国中の人々が龍の姫巫女の帰還を知ったのだった。
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