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ロンサンティエ帝国の明暗
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「お待ち下さい!」
騒然とする騒ぎの中、宰相ムク・フランは慌てて白銀の龍に言い縋った。
「大公閣下は皇帝陛下の勅命を受けて“龍王島”に渡った身。
この国の皇帝陛下はハイゴール・ウィリ・ロンサンティエ様に御座います。
龍の使者と言うのなら、皇帝陛下こそ相応しのです!」
宰相の言葉に白銀の龍は一瞥するだけだった。
『それは人間が勝手に決めた役割であって、我ら龍には関係のない話だ。
龍の使者を選ぶ上で大事なのはフランコ・トワ・ロンサンティエの血筋が“龍王島”に赴き、龍王並びに龍の姫巫女に認められる事。
此度、選ばれたのはディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエであり“龍王島”に足を運ぶ事すらしなかった者達には、その資格はない。』
ルーチェの宣言に我慢出来なくなった皇帝ハイゴール・ウィリは巨体を振るわけ怒り狂った。
「ワシが皇帝だ!
龍の使者の直径の子孫であり、勇逸の絶対君主はワシだ!
弟が使者だと!?
龍を騙し、ワシに変わって皇帝にでもなる気か!ハクヤっ!!」
貴族や他国の要人がいるのも忘れ、荒れ狂う皇帝は自分の立場を奪いかねない弟を指差し怒号の声を上げた。
喚き散らす皇帝に首を垂れていたディミトリオ・ハクヤは顔を上げた。
それは覚悟した男の顔だった。
誰しもがハッとするような美しいディミトリオ・ハクヤに騒然としていた大広間が静かになった。
「私は国に忠誠を誓った身。
皇位に興味はありません。
国を豊にする為に私は龍王より与えられた力を使います。」
平身低頭なディミトリオ・ハクヤに皇帝は、どこか安堵した様に笑った。
「やはり、其方は情けない奴よ。
力を得ながら使い方も知らぬのだ。
国に忠誠を誓ったと言うのなら、その使者としての力を余に寄越せ!
それは国を導く気のない者には不要な物だ。
使者としての権利、龍の姫巫女、そして白銀の龍は余が所有する!」
言い放つ皇帝に・・・いや、兄を見上げディミトリオ・ハクヤは悲しそうに眉を下げた。
「兄上・・・。
龍の使者という立場は差し上げる事が出来ません。
筆や宝石の様に簡単に譲れる物ではないのです。」
兄であるハイゴール・ウィリは幼い頃と何も変わっていなかった。
かつて奪い取られた物と同じ様に、ディミトリオ・ハクヤから龍の使者の立場を奪おうとする。
本当に、それが欲しいのかも分からず弟から奪う事だけを繰り返す兄をディミトリオ・ハクヤは哀れに思っていた。
「その目は何だっ!
皇帝の言う事が聞けんと言うのか!
その生意気な目をくり抜いてやろうか。
ハクヤッ!
我こそがロンサンティエの皇帝であり、世界の覇者であるぞ!!」
ディミトリオ・ハクヤが答えずにいると白銀の龍がせせら笑った。
『何度でも言おう。
それは人が決めた役割であって、龍と人の世界を結ぶ使者の事ではない。
確かに今までの使者はロンサンティエの君主ばかりであったが・・・今回は違った様だ。』
白銀の龍・ルーチェの言葉は大広間にいる一部の人間にとって聞き逃す事の出来ない重要な出来事であると知る事になる。
騒然とする騒ぎの中、宰相ムク・フランは慌てて白銀の龍に言い縋った。
「大公閣下は皇帝陛下の勅命を受けて“龍王島”に渡った身。
この国の皇帝陛下はハイゴール・ウィリ・ロンサンティエ様に御座います。
龍の使者と言うのなら、皇帝陛下こそ相応しのです!」
宰相の言葉に白銀の龍は一瞥するだけだった。
『それは人間が勝手に決めた役割であって、我ら龍には関係のない話だ。
龍の使者を選ぶ上で大事なのはフランコ・トワ・ロンサンティエの血筋が“龍王島”に赴き、龍王並びに龍の姫巫女に認められる事。
此度、選ばれたのはディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエであり“龍王島”に足を運ぶ事すらしなかった者達には、その資格はない。』
ルーチェの宣言に我慢出来なくなった皇帝ハイゴール・ウィリは巨体を振るわけ怒り狂った。
「ワシが皇帝だ!
龍の使者の直径の子孫であり、勇逸の絶対君主はワシだ!
弟が使者だと!?
龍を騙し、ワシに変わって皇帝にでもなる気か!ハクヤっ!!」
貴族や他国の要人がいるのも忘れ、荒れ狂う皇帝は自分の立場を奪いかねない弟を指差し怒号の声を上げた。
喚き散らす皇帝に首を垂れていたディミトリオ・ハクヤは顔を上げた。
それは覚悟した男の顔だった。
誰しもがハッとするような美しいディミトリオ・ハクヤに騒然としていた大広間が静かになった。
「私は国に忠誠を誓った身。
皇位に興味はありません。
国を豊にする為に私は龍王より与えられた力を使います。」
平身低頭なディミトリオ・ハクヤに皇帝は、どこか安堵した様に笑った。
「やはり、其方は情けない奴よ。
力を得ながら使い方も知らぬのだ。
国に忠誠を誓ったと言うのなら、その使者としての力を余に寄越せ!
それは国を導く気のない者には不要な物だ。
使者としての権利、龍の姫巫女、そして白銀の龍は余が所有する!」
言い放つ皇帝に・・・いや、兄を見上げディミトリオ・ハクヤは悲しそうに眉を下げた。
「兄上・・・。
龍の使者という立場は差し上げる事が出来ません。
筆や宝石の様に簡単に譲れる物ではないのです。」
兄であるハイゴール・ウィリは幼い頃と何も変わっていなかった。
かつて奪い取られた物と同じ様に、ディミトリオ・ハクヤから龍の使者の立場を奪おうとする。
本当に、それが欲しいのかも分からず弟から奪う事だけを繰り返す兄をディミトリオ・ハクヤは哀れに思っていた。
「その目は何だっ!
皇帝の言う事が聞けんと言うのか!
その生意気な目をくり抜いてやろうか。
ハクヤッ!
我こそがロンサンティエの皇帝であり、世界の覇者であるぞ!!」
ディミトリオ・ハクヤが答えずにいると白銀の龍がせせら笑った。
『何度でも言おう。
それは人が決めた役割であって、龍と人の世界を結ぶ使者の事ではない。
確かに今までの使者はロンサンティエの君主ばかりであったが・・・今回は違った様だ。』
白銀の龍・ルーチェの言葉は大広間にいる一部の人間にとって聞き逃す事の出来ない重要な出来事であると知る事になる。
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