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老師との訓練という名の戯れ

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 その頃、ディミトリオ・ハクヤは黄色の龍に導かれるリリィの後を追うように歩いていた。

 唐突に出来た石畳の坂はリリィの家から砂浜へと一直線に出来ている。

「この島での事は何が起こっても、もう驚かんと決意していたのにな。
 これは諦めるしか致し方ない。」

 苦笑するディミトリオ・ハクヤに侍従のクレイも護衛のスサとセキエイも笑うしかない。

 そんな中、コテツが黄色の龍を指差した。

「それもこれも、あの黄色の龍のリリィへの手向けだ。・・・です。
 龍にも苦手と得意があって、あの黄色の龍は土に干渉するのが得意なんです。
 リリィの服が汚れるのを嫌がったのかもしれません。」

 そう、この日のリリィは見事なまでの豹変ぶりだった。

 妖艶で美しい容赦は相変わらずだが、この世の者とは思えない神々しさを醸し出しているのは、身に纏う薄く光沢のある純白な衣装の力のお陰でもあった。

「龍王が用意した衣装です。
 歴代の姫巫女も、あの姿で海を渡ったそうです。
 ですが、龍達の話によると銀の髪を持っていたのは初代とリリィだけだそうですよ。」

 興味深くコテツの話を聞いていたディミトリオ・ハクヤは此方を振り返ったリリィと一瞬だけ目が合った気がした。

「コテツ。
 歴代の姫巫女様は皆様同じ力を持っているのですか?」

 気心がしれた中になったクレイが問い掛ければ、コテツは首を横に振った。

「宝樹に龍気を満たすというのは共通するが、歴代の姫巫女の力は1人1人違うらしい。
 それぞれ、その時代に必要な力を身につけていたと聞いた事がある。」

 ーーーその時代に必要な力
 
 それを聞き、ディミトリオ・ハクヤは大きな溜息を吐いた。

「ならば、100もの賢人の教育を得たリリィの力が、今のロンサンティエ帝国に必要な力という事だな。
 何と情けない事だ・・・。
 皇室の血が流れている身としたら、恥ずべき事を突きつけられた様だ。」

 顔を顰めるディミトリオ・ハクヤにコテツは首を竦めた。

「龍王は姫巫女に出来ない事を強要しない。
 リリィは出来た。
 ただ、それだけだ。」

 何でもな気に言うコテツにディミトリオ・ハクヤは小さく頷いた。

「努力をしたリリィに失礼な物言いだったな。
 ・・・うむ。
 ならば、歴代の中でもリリィは最も有能だという事だろうか。」

「うん。
 その方が良い。
 俺の主人は歴代最強。
 うん、良いね。」

 ニコリと笑うコテツにディミトリオ・ハクヤ達も微笑んだ。

「ほら、男共。
 変な話してないで、砂浜に着くよ。
 あぁ~あ。
 老師が悪戯してるよ。」

 振り返ったリリィの言葉に首を伸ばして見れば、沖合で停泊していた筈の大型船が飛沫を上げて近づいてくるのが見えた。

「・・・アレは?」

 首を捻るディミトリオ・ハクヤに楽しそうなリリィが返事する。

「老師が魔法で船を操ってるの。」

 船を操る・・・普段、飄々とした老魔法使いの賢人たる姿が、そこにあった。

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