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老師との訓練という名の戯れ
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衝撃的な事実に驚いたディミトリオ・ハクヤは龍王との最後の別れをした後、リリィとアリスと共に龍王の間を後にした。
「・・・老師殿が死人であったとはな。
どこか不思議な御仁であったのも、そもそもの世界が違ったのが理由かもしれないな。」
何処か納得するように頷くディミトリオ・ハクヤにリリィとアリスが顔を見合わせた。
「元々は国のお抱え魔法使いだったみたいだよ。
古代の王に使えた最強の魔法使い。
他に転生してきた先生達が老師の事を、そう言ってた。」
「・・・最強の魔法使い。」
驚くディミトリオ・ハクヤにリリィは苦笑した。
「聞いた話だと、予知も出来て戦術にもたけていたんだって。
政治にも長けた最古の魔法使い、なんて言い方もされていたかな。
まぁ、本人は話さないけどね。」
「そんな凄い人だったのか?」
コツコツと3人の足音が響く。
ディミトリオ・ハクヤは自分の驚いた声に驚き口に手を当てた。
クスクス笑うリリィの隣でアリスが思案顔で首を捻った。
「たしか、老師はドラゴンと戦った事があると言っていました。」
「ドラゴン!」
ドラゴンはロンサンティエ帝国内でも時々、目撃情報がある。
対処の為に軍が派遣され多くの犠牲が出る事もしばしばだ。
「はい。
ドラゴンも龍も興味深いと言ってましたね。
元は国のしがらみに縛られて自由に研究が出来なかったから龍王島が楽園だったとも。」
アリスは寂しそうに微笑んだ。
「でも、リリィ様が島を離れるのなら老師のお役目も本当に終わりです。」
ーーー成仏。
魂が浄化され天に召されれば、もはや会う事も叶わないだろう。
3人がしんみりとしながら神殿の外に出ると人影が見えた。
「老師殿。」
呟くディミトリオ・ハクヤの表情を察し老師が優しく微笑んだ。
「その様子じゃ、何かを聞いたのだな。」
「・・・はい。」
老師は小さく何度も頷いた。
「そうか・・・。
大公殿よ。
短い間であったが役に立つ力を教えたつもりだ。
我が愛弟子であるリリィをよしなに頼む。」
「はい。」
「大公殿は難しい御立場におられるのだろう。
人の心など移ろい惑うもの。
己の引けない事を目印になさい。
進むべき道を見失ったら、その目印を頼りなさい。
目印さえあれば、分かれ道も何処かで再び繋がるやもしれない。」
「はい。
お教えを胸に生きて参ります。」
師と仰ぐ老師の最後の言葉を聞き逃すまいとディミトリオ・ハクヤは真剣な顔で聞き届けた。
「リリィよ。」
「うん。」
「ロンサンティエ帝国とは実に不快で醜悪な空気が蔓延っているようだ。
生意気な小娘が暴れ回っても、どうって事なかろう。
自由に好きに生きなさい。
我等の姫よ。
再び、心を渡せる者に出会えた事に
感謝する。
どうか、健やかであれ。」
言い終えた老師の体を光が包み込んだ。
「・・・さよならじゃ。」
別れの言葉と共に光は天に昇って行った。
「老師殿・・・。」
「バイバイ。」
「老師。お疲れ様でした。」
ディミトリオ・ハクヤ、リリィ、アリスは空を見上げて老師との別れを惜しんだ。
「なんてなぁぁ!!
まだ、成仏せんぞーい!!
こんな楽しい島、味わい尽くすのに時間はまだまだ必要じゃ!!」
両手を上げて高笑いする老師を前に悲しの涙を瞬時に引っ込めたリリィ。
「ウルセェジジィ。
さっさと成仏しろ。」
リリィは暴言を吐き、怒気を込めて老師を睨みつけた。
「そうだな。
我が帝国に亡くなった御霊を送る儀式があるぞ。
教えようか?」
流石の大公もイラっとしたのだった。
「・・・老師殿が死人であったとはな。
どこか不思議な御仁であったのも、そもそもの世界が違ったのが理由かもしれないな。」
何処か納得するように頷くディミトリオ・ハクヤにリリィとアリスが顔を見合わせた。
「元々は国のお抱え魔法使いだったみたいだよ。
古代の王に使えた最強の魔法使い。
他に転生してきた先生達が老師の事を、そう言ってた。」
「・・・最強の魔法使い。」
驚くディミトリオ・ハクヤにリリィは苦笑した。
「聞いた話だと、予知も出来て戦術にもたけていたんだって。
政治にも長けた最古の魔法使い、なんて言い方もされていたかな。
まぁ、本人は話さないけどね。」
「そんな凄い人だったのか?」
コツコツと3人の足音が響く。
ディミトリオ・ハクヤは自分の驚いた声に驚き口に手を当てた。
クスクス笑うリリィの隣でアリスが思案顔で首を捻った。
「たしか、老師はドラゴンと戦った事があると言っていました。」
「ドラゴン!」
ドラゴンはロンサンティエ帝国内でも時々、目撃情報がある。
対処の為に軍が派遣され多くの犠牲が出る事もしばしばだ。
「はい。
ドラゴンも龍も興味深いと言ってましたね。
元は国のしがらみに縛られて自由に研究が出来なかったから龍王島が楽園だったとも。」
アリスは寂しそうに微笑んだ。
「でも、リリィ様が島を離れるのなら老師のお役目も本当に終わりです。」
ーーー成仏。
魂が浄化され天に召されれば、もはや会う事も叶わないだろう。
3人がしんみりとしながら神殿の外に出ると人影が見えた。
「老師殿。」
呟くディミトリオ・ハクヤの表情を察し老師が優しく微笑んだ。
「その様子じゃ、何かを聞いたのだな。」
「・・・はい。」
老師は小さく何度も頷いた。
「そうか・・・。
大公殿よ。
短い間であったが役に立つ力を教えたつもりだ。
我が愛弟子であるリリィをよしなに頼む。」
「はい。」
「大公殿は難しい御立場におられるのだろう。
人の心など移ろい惑うもの。
己の引けない事を目印になさい。
進むべき道を見失ったら、その目印を頼りなさい。
目印さえあれば、分かれ道も何処かで再び繋がるやもしれない。」
「はい。
お教えを胸に生きて参ります。」
師と仰ぐ老師の最後の言葉を聞き逃すまいとディミトリオ・ハクヤは真剣な顔で聞き届けた。
「リリィよ。」
「うん。」
「ロンサンティエ帝国とは実に不快で醜悪な空気が蔓延っているようだ。
生意気な小娘が暴れ回っても、どうって事なかろう。
自由に好きに生きなさい。
我等の姫よ。
再び、心を渡せる者に出会えた事に
感謝する。
どうか、健やかであれ。」
言い終えた老師の体を光が包み込んだ。
「・・・さよならじゃ。」
別れの言葉と共に光は天に昇って行った。
「老師殿・・・。」
「バイバイ。」
「老師。お疲れ様でした。」
ディミトリオ・ハクヤ、リリィ、アリスは空を見上げて老師との別れを惜しんだ。
「なんてなぁぁ!!
まだ、成仏せんぞーい!!
こんな楽しい島、味わい尽くすのに時間はまだまだ必要じゃ!!」
両手を上げて高笑いする老師を前に悲しの涙を瞬時に引っ込めたリリィ。
「ウルセェジジィ。
さっさと成仏しろ。」
リリィは暴言を吐き、怒気を込めて老師を睨みつけた。
「そうだな。
我が帝国に亡くなった御霊を送る儀式があるぞ。
教えようか?」
流石の大公もイラっとしたのだった。
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