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老師との訓練という名の戯れ

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 ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエは目を見張った。

 煌めく金と銀の2匹の龍に囲まれ座る少女が自分を見下ろしていた。
 あまりの美しい光景に言葉を失ったディミトリオ・ハクヤは龍王の間に足を踏み入れるのを戸惑った程であった。

『ロンサンティエの血筋。
 ディミトリオ・ハクヤ・・・此方へ参られよ。』

 銀龍の透き通った声にディミトリオ・ハクヤはハッとした。

「ハッ!
 失礼致します。」

 アリスに続くディミトリオ・ハクヤに金龍・銀龍・リリィの視線が向かう。

「お別れの挨拶とお礼を申したく参りました。
 滞在中のお心使いに感謝致します。
 部下と共に安全に過ごす事が出来ました。」

 膝を付き首を垂れるディミトリオ・ハクヤに金龍の低い声が降り注ぐ。

『力を得たか・・・。』

 龍の王の声に反応してディミトリオ・ハクヤの体から3つの光が飛び出した。

 それは2人の男の子の姿になり1匹の蝶の姿になった。

 水妖精のジョーディが思わずといった様に姿を見せた事にディミトリオ・ハクヤは驚いた。

「父様の龍気に当てられて飛び出ちゃったのね。 
 こっちにおいで。」

 手招くリリィの誘いにジョーディとフロウ・・・2人と1匹の蝶・レアは番の龍王に挨拶をすると、座り込むリリィの膝に降り立った。

「可愛い子達。
 どうか、貴方達の契約者とその大切な者を助けて。」

 この数日で仲良くなったリリィの願いを妖精達は聞き届ける様に頷いた。
 そして、甘える様にリリィの周囲をピョンピョンと飛び回るのだった。
 
 ディミトリオ・ハクヤが見上げていると、金龍の低い声がディミトリオ・ハクヤの疑問に答えた。

『驚いたか?
 妖精達は契約者がいても、龍の巫女姫の声に応える。
 契約者が非道な事に妖精を使えば龍の姫巫女が取り上げる事も出来るのだ。
 精々、大事にするのだな。』

 ーーー妖精は契約者よりも龍の巫女姫を優先する。
 
 ディミトリオ・ハクヤは、如何にリリィが特別な存在であるかを知っていた。
 何故なら龍王を除けば、この島に住む生きとし生ける物の全てがリリィに心を砕いていた。

 当たり前の様に顔を出す龍達。
 朝晩問わずに集まる妖精達。
 野生の小動物はご機嫌を伺いに挨拶に来て、暴れる魔獣はリリィの一言で争いを止める。

 だからこそディミトリオ・ハクヤは契約したのが自分であろうともリリィに甘えるジョーディ達を見て微笑む事が出来た。

「承知致しました。
 多大な恩恵を享受できました事こそ誉れ。
 その思いを胸に妖精と共に生きて参ります。」

 番の龍王はディミトリオ・ハクヤの言葉にコクリと頷いた。

『『良き。』』

 ディミトリオ・ハクヤは思い出したように龍王を見上げた。

「滞在の間は有意義な時間を過ごす事が出来ました。
 一重に、リリィと老師殿のおかげです。
 ・・・老師殿も共にロンサンティエにお迎えする事は叶いませんか?」

 ハッとして眉を下げたのはリリィだった。
 その悲しそうな顔の意味をディミトリオ・ハクヤは知る事となった。

『それは叶いません。
 彼の者は既に肉体滅び、魂だけの存在なのです。』

 銀龍の涼やかな声が伝えた言葉の意味をディミトリオ・ハクヤが理解するのに時間が有するのは必然の事だった。
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