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龍の姫巫女のお出迎え
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「1番大切なものを奪われたのね?」
リリィの遠慮のない言葉がディミトリオ・ハクヤの、未だに癒えていない心に突き刺さった。
「・・・あぁ。
唯一、愛を捧げた人だった。
共に人生を歩めるなら、皇族の身分など捨て去ってしまっても良いと思えるくらい愛した人だった。」
虚ろな瞳のディミトリオ・ハクヤをルーチェが慰める様に手の平に顔を擦り付けた。
不思議な事にディミトリオ・ハクヤは白銀の龍の優しさに触れ、心が安らいでいくのを感じた。
「その人は今?」
「・・・皇帝の側室の1人だよ。
序列は正妃に続く2番目の最高位の側室だ。」
ディミトリオ・ハクヤの視線は、そこにあるであろう海の向こうの後宮を見つめていた。
「私達が恋人だった最後の日・・・彼女は泣きながら言ったんだ。
『情けなくとも、無様でも私は貴方に生きてほしい。』と・・・。
次の日、彼女は後宮に入り、私は皇帝命令で宦官になり後宮の管理を任された。」
皇帝の仕打ちにリリィは舌打ちをする勢いで顔を顰めた。
「・・・残酷ね。
決して貴方のモノにならない人を近くで見続けさせるなんて・・・。」
「私も母と同じ様に愛する人とは結ばれない運命だったんだ。」
リリィが自分を見つめているのは分かっていたが、ディミトリオ・ハクヤは彼女の顔を見る事が出来なかった。
彼は生きてきた年月、ずっと問い掛けてきた。
《何故、自分がこんな目に遭わなければいけなかったのか?》
《あの時、何者にも関係なく彼女を連れ去っていれば何かが変わっていたのだろうか?》
《自分が王子ではなく、彼女が貴族でなければ幸せに暮らせたのだろうか?》
そして最後は、この疑問すら無駄であると胸に仕舞い込むのだ。
「彼女と会う事はあるの?」
お構いなしにリリィがディミトリオ・ハクヤの郷愁を鷲掴む。
「・・・公式的にね。
ご機嫌伺いは役目として必要だから。
彼女は宴会や式典に殆ど出席する事はないんだ。
例え、そんな日があったら皇帝は見せつけるように彼女を側に置く。
私が苦しむ為に、皇帝は彼女を寵愛し続けているんだよ。」
「それは正妃や他の側室達にとっても気に入らない話でしょうね。」
揶揄う様にリリィが笑うとディミトリオ・ハクヤも鼻で笑いながら頷いた。
「そうだね。
でも、彼女達も強かだから私を利用して皇帝の寵を得ようと必死なんだ。」
訝しがるリリィに、ディミトリオ・ハクヤが意味深に微笑むと、彼女は理解したのか呆れた様に天を仰いだ。
「・・・あぁ、そういう事。
貴方にちょっかいかければ、皇帝が嫉妬するのね。
自分のオモチャを貴方に取られたくない皇帝は側室達の元へ向かうと。
馬鹿みたいな話。」
その時、ディミトリオ・ハクヤがリリィを見つめた。
それまでと違う彼の雰囲気にリリィは、その視線を受け止めた。
「恐らく、兄ウィリ・・・皇帝は君を手に入れようとするだろう。
巻き込んで申し訳ないと思うが、後宮の管理人として最大限に君を守ると誓うよ。」
真剣なディミトリオ・ハクヤにリリィはクスッと笑った。
今度、首を傾げたのはディミトリオ・ハクヤの方だった。
「勘違いをしているようだから、教えておくわね。
龍王は皇帝陛下を認めたんじゃない。
フランコ・トワ・ロンサンティエの血筋の1人である貴方・・・ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエを認めたの。
この私、龍の姫巫女・リリィを預けるに値すると龍王が認めたは貴方よ。」
誇り高く微笑むリリィにディミトリオ・ハクヤは、その言葉に目を見開いて驚くのだった。
リリィの遠慮のない言葉がディミトリオ・ハクヤの、未だに癒えていない心に突き刺さった。
「・・・あぁ。
唯一、愛を捧げた人だった。
共に人生を歩めるなら、皇族の身分など捨て去ってしまっても良いと思えるくらい愛した人だった。」
虚ろな瞳のディミトリオ・ハクヤをルーチェが慰める様に手の平に顔を擦り付けた。
不思議な事にディミトリオ・ハクヤは白銀の龍の優しさに触れ、心が安らいでいくのを感じた。
「その人は今?」
「・・・皇帝の側室の1人だよ。
序列は正妃に続く2番目の最高位の側室だ。」
ディミトリオ・ハクヤの視線は、そこにあるであろう海の向こうの後宮を見つめていた。
「私達が恋人だった最後の日・・・彼女は泣きながら言ったんだ。
『情けなくとも、無様でも私は貴方に生きてほしい。』と・・・。
次の日、彼女は後宮に入り、私は皇帝命令で宦官になり後宮の管理を任された。」
皇帝の仕打ちにリリィは舌打ちをする勢いで顔を顰めた。
「・・・残酷ね。
決して貴方のモノにならない人を近くで見続けさせるなんて・・・。」
「私も母と同じ様に愛する人とは結ばれない運命だったんだ。」
リリィが自分を見つめているのは分かっていたが、ディミトリオ・ハクヤは彼女の顔を見る事が出来なかった。
彼は生きてきた年月、ずっと問い掛けてきた。
《何故、自分がこんな目に遭わなければいけなかったのか?》
《あの時、何者にも関係なく彼女を連れ去っていれば何かが変わっていたのだろうか?》
《自分が王子ではなく、彼女が貴族でなければ幸せに暮らせたのだろうか?》
そして最後は、この疑問すら無駄であると胸に仕舞い込むのだ。
「彼女と会う事はあるの?」
お構いなしにリリィがディミトリオ・ハクヤの郷愁を鷲掴む。
「・・・公式的にね。
ご機嫌伺いは役目として必要だから。
彼女は宴会や式典に殆ど出席する事はないんだ。
例え、そんな日があったら皇帝は見せつけるように彼女を側に置く。
私が苦しむ為に、皇帝は彼女を寵愛し続けているんだよ。」
「それは正妃や他の側室達にとっても気に入らない話でしょうね。」
揶揄う様にリリィが笑うとディミトリオ・ハクヤも鼻で笑いながら頷いた。
「そうだね。
でも、彼女達も強かだから私を利用して皇帝の寵を得ようと必死なんだ。」
訝しがるリリィに、ディミトリオ・ハクヤが意味深に微笑むと、彼女は理解したのか呆れた様に天を仰いだ。
「・・・あぁ、そういう事。
貴方にちょっかいかければ、皇帝が嫉妬するのね。
自分のオモチャを貴方に取られたくない皇帝は側室達の元へ向かうと。
馬鹿みたいな話。」
その時、ディミトリオ・ハクヤがリリィを見つめた。
それまでと違う彼の雰囲気にリリィは、その視線を受け止めた。
「恐らく、兄ウィリ・・・皇帝は君を手に入れようとするだろう。
巻き込んで申し訳ないと思うが、後宮の管理人として最大限に君を守ると誓うよ。」
真剣なディミトリオ・ハクヤにリリィはクスッと笑った。
今度、首を傾げたのはディミトリオ・ハクヤの方だった。
「勘違いをしているようだから、教えておくわね。
龍王は皇帝陛下を認めたんじゃない。
フランコ・トワ・ロンサンティエの血筋の1人である貴方・・・ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエを認めたの。
この私、龍の姫巫女・リリィを預けるに値すると龍王が認めたは貴方よ。」
誇り高く微笑むリリィにディミトリオ・ハクヤは、その言葉に目を見開いて驚くのだった。
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