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書籍化記念SS
アーベル・グラトニーの良日
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アースガイル国に世界でも随一の商会がある。
その名をグラトニー商会という。
その起源は、アースガイル国初代国王マテオの時代まで遡ると言う。
有象無象が蔓延る商売の世界において、このグラトニー商会が絶対的な力を持つ事は有名な事だが、彼等は弱者にその権力を利用しない。
その代わり、貴族や王族相手にも飲めない条件は一切頷かず、逆にグラトニー商会を敵に回した貴族には滅びの未来が待っているとまで言われている。
その気骨は今の会頭ロス・グラトニーにも受け継がれていて、情勢変化の激しい商売の世界でトップに君臨している。
そのロス・グラトニーを育てた父である先代会頭アーベル・グラトニーは、アースガイル国のみならず、世界中で名を轟かせた。
歴代の中でも苛烈極まる男は、腐敗した貴族の撲滅にも力を注いできた。
その動きは若き頃の国王アルフレッド・アースガイルも苦笑せずにいられず、「程々にな」との言葉を発した程であった。
しかし、その国王の言葉にも「あんな愚かな貴族がいなければ駄目な国なら、いっそ滅んだ方が良い。」と言い放ったのは、彼の豪傑を表す一場面である。
そんなアーベルも歳には勝てず、商会を息子ロスに譲り、自由気ままに諸国漫遊していたのだが、ある日ポーレットの領主であるテオルドから声が掛かる。
『面白いものが見れる。』
その一言にアーベルはクスクスと笑った。
王弟であるテオルドの事は幼少期から知っていた。
天真爛漫な兄と比べて、真面目で人当たりの良いテオルドは、この手の冗談を好まない。
「このアーベルを引っ張ってまで何をなさる気なのか。」
簡単に答えを教えてくれそうにテオルドの罠に敢えて引っかかってやるかと、ポーレットの街に足を向けたのが、8年程前。
そこで出会った稀有な才能に魅了され、アーベルは今でもポーレットの街に魅了されている。
砂糖に塩、チーズやお菓子
ポーレットの街では次々と新しい商品が生み出されていた。
「フフフ。」
「あら?どうしたのアーベル?」
思わず笑い声が出たアーベルに柔かに話しかけたのはポーレット公爵夫人であるオルガだった。
「いやいや、最初に砂糖の話を聞かされた時の事を思い出しましてね。
それ以降、よくも多くの品が誕生したものです。」
アーベルの言葉にオルガは再び微笑みながら、自慢の庭を見渡した。
「己の欲しいものを作っただけど言うけれど、それでどれだけの他者が幸せになった事かしらね。」
「フフフ。
気づいていないふりをしているのか、本当に気づいていないのか。
それすら悟らせない不思議な子です。
目覚めてくれて良かった。」
「ええ・・・。本当に。」
この日、アーベルは久しぶりにポーレットを訪れていた。
表舞台を引退しているアーベルが急いで駆け付けた理由は、彼にとって興味が尽きない青年が長い眠りから目覚めたと報告を受けた為だった。
その青年はフラッと現れたかと思えば、様々な影響を残し、そして世界の危機に立ち向かって行方をくらませた。
その行方はグラトニー商会が手を尽くしても、国を上げさえも知れる事はなかった。
再びその存在に触れたかと思えば、今度は目覚めぬと言う。
この数年、多くの者が心配し彼の目覚めを願っていた。
アーベルもその1人である。
そして先頃、世界中に輝く光の玉が降り注ぐという奇妙な現象があったと思えば、青年の目覚めたという報告を受けた事で何を押しても駆け付けた次第である。
「また、騒がしくなったら嬉しいわ。」
微笑むオルガがハーブティーに口を付けると、アーベルは機嫌良く頷いた。
「えぇ、そうなりましょうとも。
誰もが彼を愛さずにはいられない。
放っておかないでしょうよ。」
この日もポーレット公爵邸の裏庭に咲き誇る花々やハーブの間を優しい風が吹き抜けていった。
※※※※※ ※※※※※
いつも『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
書籍化第3弾について報告させて頂きます。
2025年1月20日(月)に各書店に発送されます。
書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴い、1月20日(月)よりアルファポリス様に投稿している[164話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。
ご了承下さい。
表紙・挿絵はTAPI岡先生の作品です。
愛らしく逞しい子供達をご堪能ください。
書籍としての形に残るのも応援して下さる皆様のお陰です。
感謝申し上げます。
尚、当作品の続編『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の投稿をしております。
お時間の合間にお立ち寄り下さい。
加えてコミカライズ化もされております。
合わせてお楽しみ頂ければ幸いです。
引き続き宜しくお願いします。
ぽん
その名をグラトニー商会という。
その起源は、アースガイル国初代国王マテオの時代まで遡ると言う。
有象無象が蔓延る商売の世界において、このグラトニー商会が絶対的な力を持つ事は有名な事だが、彼等は弱者にその権力を利用しない。
その代わり、貴族や王族相手にも飲めない条件は一切頷かず、逆にグラトニー商会を敵に回した貴族には滅びの未来が待っているとまで言われている。
その気骨は今の会頭ロス・グラトニーにも受け継がれていて、情勢変化の激しい商売の世界でトップに君臨している。
そのロス・グラトニーを育てた父である先代会頭アーベル・グラトニーは、アースガイル国のみならず、世界中で名を轟かせた。
歴代の中でも苛烈極まる男は、腐敗した貴族の撲滅にも力を注いできた。
その動きは若き頃の国王アルフレッド・アースガイルも苦笑せずにいられず、「程々にな」との言葉を発した程であった。
しかし、その国王の言葉にも「あんな愚かな貴族がいなければ駄目な国なら、いっそ滅んだ方が良い。」と言い放ったのは、彼の豪傑を表す一場面である。
そんなアーベルも歳には勝てず、商会を息子ロスに譲り、自由気ままに諸国漫遊していたのだが、ある日ポーレットの領主であるテオルドから声が掛かる。
『面白いものが見れる。』
その一言にアーベルはクスクスと笑った。
王弟であるテオルドの事は幼少期から知っていた。
天真爛漫な兄と比べて、真面目で人当たりの良いテオルドは、この手の冗談を好まない。
「このアーベルを引っ張ってまで何をなさる気なのか。」
簡単に答えを教えてくれそうにテオルドの罠に敢えて引っかかってやるかと、ポーレットの街に足を向けたのが、8年程前。
そこで出会った稀有な才能に魅了され、アーベルは今でもポーレットの街に魅了されている。
砂糖に塩、チーズやお菓子
ポーレットの街では次々と新しい商品が生み出されていた。
「フフフ。」
「あら?どうしたのアーベル?」
思わず笑い声が出たアーベルに柔かに話しかけたのはポーレット公爵夫人であるオルガだった。
「いやいや、最初に砂糖の話を聞かされた時の事を思い出しましてね。
それ以降、よくも多くの品が誕生したものです。」
アーベルの言葉にオルガは再び微笑みながら、自慢の庭を見渡した。
「己の欲しいものを作っただけど言うけれど、それでどれだけの他者が幸せになった事かしらね。」
「フフフ。
気づいていないふりをしているのか、本当に気づいていないのか。
それすら悟らせない不思議な子です。
目覚めてくれて良かった。」
「ええ・・・。本当に。」
この日、アーベルは久しぶりにポーレットを訪れていた。
表舞台を引退しているアーベルが急いで駆け付けた理由は、彼にとって興味が尽きない青年が長い眠りから目覚めたと報告を受けた為だった。
その青年はフラッと現れたかと思えば、様々な影響を残し、そして世界の危機に立ち向かって行方をくらませた。
その行方はグラトニー商会が手を尽くしても、国を上げさえも知れる事はなかった。
再びその存在に触れたかと思えば、今度は目覚めぬと言う。
この数年、多くの者が心配し彼の目覚めを願っていた。
アーベルもその1人である。
そして先頃、世界中に輝く光の玉が降り注ぐという奇妙な現象があったと思えば、青年の目覚めたという報告を受けた事で何を押しても駆け付けた次第である。
「また、騒がしくなったら嬉しいわ。」
微笑むオルガがハーブティーに口を付けると、アーベルは機嫌良く頷いた。
「えぇ、そうなりましょうとも。
誰もが彼を愛さずにはいられない。
放っておかないでしょうよ。」
この日もポーレット公爵邸の裏庭に咲き誇る花々やハーブの間を優しい風が吹き抜けていった。
※※※※※ ※※※※※
いつも『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
書籍化第3弾について報告させて頂きます。
2025年1月20日(月)に各書店に発送されます。
書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴い、1月20日(月)よりアルファポリス様に投稿している[164話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。
ご了承下さい。
表紙・挿絵はTAPI岡先生の作品です。
愛らしく逞しい子供達をご堪能ください。
書籍としての形に残るのも応援して下さる皆様のお陰です。
感謝申し上げます。
尚、当作品の続編『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の投稿をしております。
お時間の合間にお立ち寄り下さい。
加えてコミカライズ化もされております。
合わせてお楽しみ頂ければ幸いです。
引き続き宜しくお願いします。
ぽん
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