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書籍化記念SS
オーブリー・ポートマンの憂鬱
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「そう言えば、オーブリー様?
いつになったら正式な結婚式をなさるのですか?
ご婚約から8年程経たれていらっしゃるかと思いますが、今だに正式な婚姻が結ばれないのは何か問題がお有りなのかしら?」
「まぁ、それは・・・。
王太子殿下のお気持ちが変わられてないか心配ですわね。」
オーブリーは目の前にいる名前を覚えるのも億劫な貴族令嬢にニッコリと微笑むと紅茶が入ったカップに口を付けた。
オーブリー・ポートマンは軍人を輩出するポートマン公爵家の娘だった。
その類まれなる才能は剣技だけにとどまらず、頭脳の方も優秀で若くしてアースガイル国軍の将軍であるザックス・ヒルの副官として長年務めてきた。
ずっと軍人として生きていくと思っていた8年前、アースガイルの王太子であるギルバートに突如プロポーズされた。
戸惑うオーブリーであったが、彼女は王太子と共に国を支える覚悟を決めた。
女性としての生き方をしてこなかったオーブリーであったが周囲の支えもあり、今ではドレス姿も慣れ、ギルバートとの仲も良好だ。
軍の仕事も一線から離れた。
ザックス・ヒルの副官の後釜にはオーブリーが信頼する人物が任命されたが、ザックス・ヒルのメチャクチャな行動を諌めて欲しいと泣きつかれる事も多い。
軍人としての仕事はしていない為に、もっぱらザックス・ヒルの躾け係と言ったとろこだろうか。
今でも毎日、剣を振っている事が心を落ち着かせていた。
冒頭に戻ろう。
王太子の婚約者である公爵令嬢として、貴族の令嬢や夫人との交流は不可欠だ。
どんなに苦手でもオーブリーが、茶会などの交流を止める事はなかった。
貴族の女性、特に年配になればなるほど、己の心を隠す事を覚えるが、目の前の自分と同い年や若い令嬢達は感情を隠すのが下手だ。
嫁ぎ時な若き令嬢や、どこぞの貴族の子息に既に嫁ぎ、今では奥方になっているような者でさえ、オーブリーが王太子ギルバートに選ばれた事が、許せずにいる者は茶会の席で嫌味の1つも言ってやろうと意気込んでいる。
オーブリーも慣れたものではあるが、ウンザリする事は間違いない。
許されるのなら持っていた扇子で相手を打ちのめしてやりたいが、相手にするだけ疲れるので笑っているのに限る。
これは、王妃シシリアに学んだ事だ。
ただ、王妃シシリアの微笑みは妖精のように朗らかなのに対して、オーブリーはキリッとして美しい。
今まで男装する事も多かったオーブリーに頬を染める令嬢も多いと聞く。
「オーブリー様、聞いていらっしゃいます?」
先ほどから、親切を理由に心配を口にしならがもオーブリーを笑い者にしようとしている令嬢が追い立ててくる。
オーブリーはバレないように小さな溜息を吐いた。
「殿下のご友人が件の戦いの折りより目覚めておられないのです。
私達の結婚はご友人が目覚めてからになるでしょう。」
「なんて事でしょう。
いつ目覚めるか分からぬ者を待っているだなんて、オーブリー様はお気の毒です。
殿下は結婚の意思が薄れていらっしゃるのでは?」
意地悪く笑う令嬢にオーブリーは鋭い目を向けた。
「殿下はご友人が目覚めるのを信じて待っておられます。
ご友人は、この国の・・・いえ、世界の英雄です。
我々が、こうして茶を楽しめているのも、かの方のおかげでしょう。
目覚められるその日が楽しみです。」
思いの外、厳しい目で睨まれた令嬢は一瞬で怯えた顔色になった。
怯えるくらいなら、最初から喧嘩を売ってくるな。
オーブリーが目にも明かな呆れ顔をした時だった。
空が唐突に輝き、光の玉が降り注いできたのだ。
「何事だっ!」
王城にいた人々が外に出て来ては空を見上げる中、王太子ギルバートも姿を現した。
神がかった光景を前に人々が騒然とする中、目を合わせたギルバートとオーブリーは、この不思議な光景の正体に勘づき、互いにニッコリと微笑むのだった。
英雄が目覚めたのだと。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
◯書籍化第二弾のご報告と詳細について◯
『続・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難う御座います。
この度、アルファポリス様より『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第二弾を出して頂ける運びとなりました。
2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴い、5月22日(水)よりアルファポリス様に投稿している[106話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。
どうぞ、ご了承下さい。
この様な機会に恵まれましたのも、楽しんで下さる皆様のお陰です。
是非、手に取って頂けたら幸いです。
引き続き、イオリとゼン、そして仲間達を宜しくお願い致します。
ぽん
いつになったら正式な結婚式をなさるのですか?
ご婚約から8年程経たれていらっしゃるかと思いますが、今だに正式な婚姻が結ばれないのは何か問題がお有りなのかしら?」
「まぁ、それは・・・。
王太子殿下のお気持ちが変わられてないか心配ですわね。」
オーブリーは目の前にいる名前を覚えるのも億劫な貴族令嬢にニッコリと微笑むと紅茶が入ったカップに口を付けた。
オーブリー・ポートマンは軍人を輩出するポートマン公爵家の娘だった。
その類まれなる才能は剣技だけにとどまらず、頭脳の方も優秀で若くしてアースガイル国軍の将軍であるザックス・ヒルの副官として長年務めてきた。
ずっと軍人として生きていくと思っていた8年前、アースガイルの王太子であるギルバートに突如プロポーズされた。
戸惑うオーブリーであったが、彼女は王太子と共に国を支える覚悟を決めた。
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軍の仕事も一線から離れた。
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軍人としての仕事はしていない為に、もっぱらザックス・ヒルの躾け係と言ったとろこだろうか。
今でも毎日、剣を振っている事が心を落ち着かせていた。
冒頭に戻ろう。
王太子の婚約者である公爵令嬢として、貴族の令嬢や夫人との交流は不可欠だ。
どんなに苦手でもオーブリーが、茶会などの交流を止める事はなかった。
貴族の女性、特に年配になればなるほど、己の心を隠す事を覚えるが、目の前の自分と同い年や若い令嬢達は感情を隠すのが下手だ。
嫁ぎ時な若き令嬢や、どこぞの貴族の子息に既に嫁ぎ、今では奥方になっているような者でさえ、オーブリーが王太子ギルバートに選ばれた事が、許せずにいる者は茶会の席で嫌味の1つも言ってやろうと意気込んでいる。
オーブリーも慣れたものではあるが、ウンザリする事は間違いない。
許されるのなら持っていた扇子で相手を打ちのめしてやりたいが、相手にするだけ疲れるので笑っているのに限る。
これは、王妃シシリアに学んだ事だ。
ただ、王妃シシリアの微笑みは妖精のように朗らかなのに対して、オーブリーはキリッとして美しい。
今まで男装する事も多かったオーブリーに頬を染める令嬢も多いと聞く。
「オーブリー様、聞いていらっしゃいます?」
先ほどから、親切を理由に心配を口にしならがもオーブリーを笑い者にしようとしている令嬢が追い立ててくる。
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「殿下のご友人が件の戦いの折りより目覚めておられないのです。
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「なんて事でしょう。
いつ目覚めるか分からぬ者を待っているだなんて、オーブリー様はお気の毒です。
殿下は結婚の意思が薄れていらっしゃるのでは?」
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「殿下はご友人が目覚めるのを信じて待っておられます。
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思いの外、厳しい目で睨まれた令嬢は一瞬で怯えた顔色になった。
怯えるくらいなら、最初から喧嘩を売ってくるな。
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空が唐突に輝き、光の玉が降り注いできたのだ。
「何事だっ!」
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英雄が目覚めたのだと。
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是非、手に取って頂けたら幸いです。
引き続き、イオリとゼン、そして仲間達を宜しくお願い致します。
ぽん
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