続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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影と黒 〜愛されし者達の対峙〜

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「ぬあぁぁぁぁぁぁ!!」
 
 満身の力を込めるイオリのエネルギーが、ルミエールが覆い尽くす影から溢れ出る。

『貴様・・・神となる我の力を抑え込むだとっ。』

 苦しそうな声と共に影が大きく揺れる。
 
「人は神にはなれないよ・・・。
 力を得ようと、恐怖を与えようと、君は君でしかない。」

『黙れっ!
 貴様とて、大いなる力に酔いしれ英雄と崇めたてられているのだろう?
 奴に与えられた物を利用している事に変わりはないではないかっ。』

 吠えるルミエールにイオリは微笑んだ。

「そうだね。
 しがない猟師である俺には分不相応なものだ。
 だから・・・まぁ、力を失ったら大変かもしれないけど、なんとかしてみるよ。」

『・・・何を企んでいる?』 

 イオリがリュオンから貰った全ての力を本気で注いでいるなど信じられないルミエールが戸惑っている。

「大きな力なんてなくったって、ご飯さえあれば人は生きていけるよ。
 世界を変える?英雄になる?そんなの俺は要らない。
 ささやかな幸せが、大いなる野望より格下なんて誰が決めたんだい。
 むしろ、俺は御免だね。
 面倒を背負うくらいなら、ささやかな幸せを選ぶ。」

 ルミエールの影が怒りで激しく波打ち始めた。

『愚者が・・・俗物が・・・偽善者が・・・。
 ささやかな幸せ?
 我は、それさえも・・・。』

 その怒りがルミエールの力となる。
 影はイオリを押し潰すように、益々と巨大になっていった。

 増幅する怒りや恨みの前に対話など不可能。
 我を忘れて力を使うルミエールは荒れ狂っていた。
 膨れ上がっていた影がイオリを締め付ける。
 苦しみの声を上げるイオリにルミエールの笑い声が聞こえた。

『同じ“愛し子”とて情けない。
 今までの奴らさえ我にかかれば是弱であったが、貴様は1番の愚鈍だな。
 国を得る気もなければ信念もない。
 英雄と祀られ良い気になっても、利用価値がないと分かれば人は裏切り、ゴミの様に捨て去られるぞ。
 1人で敵に立ち向かっても、味方に背を預けるほど愚かしいものはない。
 貴様の努力など、小石の大きさもない。砂塵ほどの価値しかないのだ。
 覚えておけ。大いなる力の前には人は畏怖するか甘い汁を吸おうと擦り寄って来るしかないのだ。』

 押され気味だったルミエールも再び力を得たように高笑いをする。

「・・・1人じゃない。」

 イオリの呟きに影が機嫌が悪そうに悪態をつく。

『何だ?愚鈍。
 まだ懲りぬのか?』

バウッ!!

 唐突に真っ白な毛玉がルミエールの影に喰らいつく。

『余計な獣めがッ!!』

 イオリとの戦いに集中していたルミエールの影がドキリと揺れる。

「俺は決して1人じゃない。」

 真っ白な毛玉・・・ゼンがイオリと共に力を解放していく。
 抱え切れないエネルギーに遂にルミエールの剣にヒビが入り、瞬く間に砕け散った。
 悲鳴にもならない押し殺したような苦しそうな声だけが辺りに響き渡る。
 その砕け散った剣の欠片の1つ1つから輝きが失われていった。

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