続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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影と黒 〜愛されし者達の対峙〜

771 〜その魂が陰るまで④〜

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 眩い光に彼は顔を顰めた。

 体を起こし辺りを見渡せば、緑色の草原が永遠に広がっている。
 空を見上げれば雲1つない青い空に吸い込まれそうだった。

「あっ!お目覚めですか?
 ようこそ!アナザーワールドへ!!」

 ビクッと肩を揺らした彼の前に現れたのは、にこやかに話す男だった。
 その男の髪は、何故か虹色に光っていた。

 怯える様に様子を伺う彼に虹色の髪をした男が顔をグイッと近づける。

「私は輪廻の案内役兼補佐をしている、言わば“神”です。
 よろしくお願いしますね。」

 ・・・神。

「おやっ?何かを思い出されました?」

 キョトンとする虹色の髪の男を、子供とは思えない射殺す様な彼の視線が刺さる。

 ・・・神などクソ喰らえだ。
    良い事など1つもない。

 これまでの不満のヘドロを吐き出すような彼の感情を受けて虹色の髪の男は眉を八の字に下げて悲しんだ。

「少し説明が必要ですね。
 私は貴方の生まれた世界の神とは別の者です。
 貴方が生まれた日に、貴方を愛した神・・・この場合、土地神とでも申しましょうか。
 土地神が貴方に加護を与えました。
 母を亡くし、父や継母に冷たく扱われる貴方を哀れに思ったのです。」

 虹色の髪の男の話を彼は信じられないでいた。

 ・・・加護なんてない

 そう呟く彼に虹色の髪の男は微笑んだ。

「そうでしょうか?
 貴方が外で寝ている時に雨が降らなかったのは何故でしょう?
 野犬や熊や蛇に襲われなかったのは何故でしょう?
 継母に言われて摘んでいた野苺が、すぐに籠いっぱいになったのは何故でしょう?」

 彼は驚いた様に顔を上げた。

「えぇ、そうです。
 土地神が貴方を助けようとしたのです。
 本来、人に干渉するなど神として禁じられた行動です。
 世界は生きている者達の物であり、神は見守り見届ける者です。
 それでも、土地神は貴方に何とか安心を与えたかった。
 それにより、その他の者達の心が歪んでいってしまったのを止める事が出来なかったのは痛恨の極みです。
 残念な事ですが、神と言えど万能ではないのですよ。」

 彼は気がついた。
 神がやった余計なお世話の所為で、彼の立場は益々酷くなっていったのだ。

 それでも、神は・・・土地神は彼を助けてくれようとしていた。

 不器用で、その場の空気に沿わない迷惑な助けであったが、確かに土地神は彼を愛していた。

「清らかな輝かしい魂を持った貴方が無惨にも命を落とした事に土地神は悲しみました。
 そして私に頼んできたのです。
 私の世界で生き返らせて欲しいと・・・。」

 唖然とする彼に虹色の髪の男は周囲を指さした。
 そこには、いつの間にか沢山の扉が現れた。

「ここにある扉たちは、それぞれ他の世界に行く事ができます。
 それを管理しているのが私です。
 どうです?
 もう一度・・・今度は私の世界で生きてみませんか?
 まだ、創って間もない世界です。
 貴方が生きやすい様に最大限のお手伝いをさせて頂きます。」
 
 生きる事は辛く苦しい。
 もう、誰にも傷付けられるのは嫌だ。
 それでも・・・もう一度、生きる事が出来るのなら・・・。

 彼は立ち上がり、虹色の髪の男が誘う幾何学模様が描かれた石の扉を開いた。
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