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旅路 〜秘境の台座〜
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しおりを挟むーーー“神の愛し子”の力を絶対神にお返ししようと思います。
そう言い切ったイオリにヴァルトを初め、一同が驚愕した。
「お・・おま・・・お前、何を言って・・・。」
口籠るヴァルトにイオリは楽しそうに微笑んだ。
「銃の他には右目の力ですかね。
視力を失った瞳に力をくれた。
お陰で遠くを見通す力と鑑定の力を得ました。
魔道具のテントや水筒・・・あぁ、マジックバックもそうでした。」
イオリは名残惜しそうに腰バックを撫でた。
この世界に来てから、ずっと身に付けていた物との別れは寂しさを感じた。
右目の力・・・魔眼だけではない。
身体強力・魔力最大・精神安定・共通言語と、リュオンはバーゲンセールの様に様々なスキルをイオリに与えた。
「それから・・・ゼン。」
純白のフェンリルは甘える様にイオリに擦り付いた。
「まさか、ゼンの力も返すというのか?」
驚くヒューゴにイオリはコクリと頷いた。
「ダークエルフ・ルミエールの剣の力を無効化するには同じく神の力が宿っている俺が対抗する事が道筋と考えました。
それには、リュオン様から頂いた力の全てを注ぎ込む必要性があります。」
『僕はイオリと一身一体。
どんな事も一緒に成し遂げるよ。』
ゼンは楽しそうにイオリの頬を舐めた。
『神獣・フェンリルとしての力を使い果たすという事は・・・ただの狼に戻り、こうやって会話する事も出来なくなるかもしれませんよ?』
心配そうなルチアにイオリとゼンは頷いた。
『そうですか・・・決めたのですね。』
悲しそうなルチアにゼンが『ゴメンネ。』と呟く。
「お前達、それを話す為に朝いなかったんだな。」
天を仰ぐヴァルトにイオリは小さく笑った。
「くそ!いつもだ!」
ヴァルトは大きな声で吠えた。
「いつもいつも。イオリに頼らなければ、危機を乗り越える事が出来ずにいる!
英雄王マテオ・アースガイルの血脈を受け継いだ癖に、私はあまりにも無力ではないかっ!!」
全てを犠牲にしようとしているイオリを想いヴァルトの瞳から一筋の涙が流れた。
「まぁ、貴族を相手にしろって言うならヴァルトさんに押し付けて逃げるところですけどね。
相手は神の力を得た引き篭もりの面倒なエルフですからね。
俺が適任でしょう。」
軽口を叩く、イオリにヴァルトは溜息を吐く。
「お前は、こんな時にも・・・。」
「それに!」
イオリは声を張り上げると、一同をゆっくりと見渡した。
「俺に力がなくなったとしても、みんな友達でいてくれるでしょ?」
イオリがこの世界に来て得たのは力だけじゃ無い。
ヴァルト達との出会いに始まり、多くの人と巡り合う事で彼の世界は広がっていた。
武力ばかりが自分を守ってくれるわけではない。
イオリは、それ以上の大きな宝・・・友人達を手に入れていたのだ。
微笑むイオリに“明けない魔の森”の優しい日差しが降り注ぐ。
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