続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜秘境の台座〜

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 雲1つ無い真っ青の空の下に草原が果てしなく続いている。
 その草原に並ぶ無数の扉の中心で男が瞳を閉じていた。 
 不思議な事に辺りは風1つ無いのに男の虹色の髪だけが靡いている。

ザワリ

 不快な風が吹き、何処からともなく影が現れると、みるみる間に虹色の髪の男を囲い込んだ。 

「・・・もう我慢も出来なくなりましたか。」

 瞳を開ける事のない虹色の髪の男の言葉に影が愉快そう揺れる。

『我慢?
 知らぬ言葉だ。
 その言葉は弱者しか使う、我には必要のないものだろう。』

「此処に何しに参ったのです?
 いよいよ彼に追い詰められたのですか?」

 虹色の髪の男は影の主の見当違いを知っていた。
 彼が送り出した“愛し子”を誤った人物で認識していたのだ。

『ようも謀ったものだ。』

 影の主の怒りを感じ虹色の髪の男の口が緩む。

「彼に随分と惑わされているようですね。」

『黙れっ。
 滅びゆくお前の抵抗など、我には羽虫の様に愚かしく見える。』

「愚かなのは、叶わぬ欲望を強請る貴方の方です。」

『欲ではない。
 これは宿命なのだ。
 我は何者をも支配する者ぞ。
 例え、神と名乗る貴様が立ちはだかったとしても運命は決まっている。』

 波打つ影が虹色の髪の男を威嚇する。

「既に肉体が滅び、魂は器を失い彷徨い続けています。
 貴方は最早、赤子同然だ。」

『剣がある!
 奪われた我が愛刀を取り戻しさえすれば、我は復活する。
 そして、周囲のエネルギーを吸収し続けていけば、いつか完全なる肉体も手に入るだろう。』

「他者から奪い取ったからと言って、肉体は己の物になど出来ません。」

『だから、貴様は愚かなのだ。
 私は出来ぬ事などせぬ。
 我が愛刀は貴様が創り出した宝剣ぞ。
 アレは真の持ち主である我にエネルギーを代わりに、他者のエネルギーを
 我以外、決して誰も扱えやしない。』

「・・・なるほど。
 貴方・・・剣が何処にあるのか、分かっているね?」

 影は楽しそうに揺れている。

『無論だ。
 貴様が用意した“愛し子”など、の“愛し子”である我の代わりに過ぎぬ。
 ただ、強大な力を持っているのも確か。
 最後まで利用させてもらおう。』

「彼の・・・イオリさんのエネルギーを奪うのですか?」

『フン。
 奪うのではない。
 世界の支配者に奴が己の力を献上するは当然の事。
 これ程に有能な使い方もなかろう。』

 狂喜に染まる影の姿が薄まってきた。

『世界の出来事に関わらないと決めた己の決断を恨め。
 我が復活を果たせば貴様は用済みだ。
 滅びの時間が来るまで怯えて待て。
 貴様に出来る事は、もう何もない。』

 影の存在が消えると虹色の髪の男は静かに瞳を開いた。

「ルミエール。
 混沌を力に変える貴方に未来はありません。
 恐怖で人を支配すれば、おのずと反発が起きるのです。
 それでは争い終わらない。
 私の“愛し子”は心に芯を持つ朗らかな人です。
 決して、貴方の力に恐れはしないでしょう。」

 虹色の髪の男・・・絶対神リュオンは幾何学の紋様に囲まれた扉を優しく撫でた。

「相沢さん・・・貴方は自由に生きて良いのです。」

__________

「・・・リュオン様?」

 イオリは自分を見守る絶対神の気配を感じ、辺りを見渡すのだった。
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