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旅路 〜秘境の台座〜

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「イオリに選択させるなど酷な事だ。」

 その頃、テオルド・ドゥ・ポーレットは執務室で通信魔道具の球体に向かい話しかけていた。

ーーー《・・・うむ。》

 通信相手の返事は実に重い。

「どうなるのかも分からないのに、彼に命を賭けて国の為に戦えと言うのか?
 本当に絶対神はそれを願っているのか?」

ーーー《・・・うむ。》

 テオルドはイオリから聞いた話から絶対神リュオンは、博愛主義であり時には当事者にとって厳しい試練を与えるが、“愛し子”であるイオリには親愛を持って接している様に感じていた。
 
 そんな絶対神がイオリに命を賭す事を求めている様には思えかった。

ーーー《落ち着け。テオ。》

 テオルドと似た声が興奮する彼を諌める。
 
「しかし、兄上。
 我が街の事もある。
 これは、あまりに不条理だ。」

ーーー《分かっている。》

 テオルドの通信相手はアースガイル国の国王ことアルフレッド・アースガイル、その人だった。

 双子であり、幼い頃から共に過ごして来た2人は、容姿も声もよく似ていた。
 国王と公爵、身分が変わっても2人の絆は変わらない。
 
 それでも、アルフレッドは国王である。
 国を司り、守る義務が彼にはある。
 テオルドは国王が非情な選択をするのではと恐れていた。

ーーー《一体、何故“明けない魔の森”なのだ?》

 それまでの会話から話をズラした兄王にテオルドは眉を顰めた。

ーーー《王位を受け継ぐ時に父上より過去の歴史について教えを受けた。
 それはお前も一緒だったな。》

「・・・はい。」

 不満そうなテオルドの返事を聞き、通信魔道具の向こう側から笑い声が聞こえた。

ーーー《クククッ。そう、剥れずに話を聞け。
 以前、イオリが王都に来た時にも初代国王であるマテオ・アースガイルの回顧録を読み聞かせた事があったな。
 あの折に、ダークエルフの剣は“中つ国”にあると、私は答えた。
 “中つ国”について書かれた書簡は、何処を探してもない。
 今回の報告を聞けば、“中つ国”とは“ドラゴンの国”であり、魔法陣にて時空を繋げる事で存在する世界だという。
 その時空の間を“ダンジョン”だと結論づけるのであるならば、イオリはダンジョンをクリアし報酬として“ダークエルフの剣”を得たと言う事なのだろう。》

 テオルドは兄王の話に相槌を打つ。

「私も、そう思う。」

ーーー《ならばだ。それならば“ダークエルフの剣”はイオリの物という事にならないか?》

「あぁ、なるほど。
 確かにそうなるな。」

ーーー《あくまでも“天空の王・スカイヤ”は“ダークエルフの剣”の管理者であって、所有者ではない。
 “ダークエルフの剣”がずっと持ち主を待っていたのは事実。
 “天空の王”はダンジョン攻略の報酬としてイオリに“ダークエルフ”の剣を与えた。
 そうだ。テオルドよ。
 選択ではない。
 イオリはのだ。》

 アルフレッドの閃きはテオルドを驚かせた。

「兄上・・・それは屁理屈だ。」

ーーー《屁理屈でも何でも構わん!
 イオリには世話になっているのだ。
 アースガイル国の王として奴に自由を与える事に何の躊躇いがあろうか。》

 テオルドは通信魔道具から聞こえてくる兄の言葉に苦笑をした。
 同時にアルフレッドが自分と同じくイオリを想っている事に喜んだ。

 そんな兄弟の話し合いは朝日が昇るまで続けられた。
 
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