続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜秘境の台座〜

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「「ただいまー!!」」
 
 自分達だけで夜の“おつかい”を成功させた事が自信に繋がっているのだろう。
 誇らしげなナギとニナが泉の道を歩いてくる。

「「おかえりいー!!」」

 出迎えるスコルとパティが頭を撫でたり抱きしめたりと、大いに労う。

「おかえり。
 お疲れ様。」

 イオリが声を掛けると、2人は満面の笑みで駆け寄ってきた。

「僕できたよ。」
「ニナも!」

「信じてたよ。
 ありがとう。」

「「えへへ。」」

 照れる2人はヒューゴやヴァルト達に次々と労われる。

 そんな様子を微笑みながら見ていたエルノールにイオリが声をかけた。

「エルノールさん。お久しぶりです。
 ご足労願ってすみません。」

「いいえ。
 ご無事のお戻りで何よりです。
 それでも、まさか夜のギルドにナギとニナの2人が来るとは思いませんでしたよ。」

「ご心配お掛けしました。」

 エルノールは冒険者ギルドのサブマスターであり、ナギとニナの師匠である。
 イオリとは違う目線で2人の事を見守っていた。

「でも、ナギには驚かされました。
 ポーレットの街から“明けない魔の森”への瞬間移動。
 そして、魔の森の中を一気に越えての泉への到着。
 無駄な魔力も使わずにスキルが実に洗練されています。
 イオリさんが送り出すのも理解しました。
 それにしても・・・アレが?」

 エルノールの視線は魔法陣の中央に浮かぶ剣に向かった。

「はい。
 さて、どうしたもんかと困ってます。」

 腰に手を当てて溜息を吐くイオリの言葉に頷くエルノールであったが、意識は剣に集中している。

「まさか、本当に・・・。」

 エルノールにとって“エルフの里”や“ダークエルフ”とは世界に混沌の時代を招き、里を捨てざるえなかった自分達の祖先達の苦悩の象徴であった。
 苦々しい気持ちが湧き上がっても不思議ではない。
 一方で、里は自分の出自のルーツであり、強大な力を持つダークエルフの剣にも興味が尽きないのも無理はない事だった。

「実に奇怪な事になりましたね。
 恐らく、“天空の王”の管理の元に隠されていたのでしょう。
 何処にあるのだか分からぬはずであった“ダークエルフ・ルミエール”の剣が突如として“明けない魔の森”に現れた・・・。
 争いの種になる事は間違いありませんね。」

「サブマス。
 我らはそれを恐れている。
 何か出来る事はないだろうか?
 ポーレットを戦場にするわけにはいかない。」

 真剣に訴えるヴァルトにエルノールは頷いた。

「全く同感です。
 もう、エルフがきっかけの戦火など御免ですよ。」

 吐き捨てる様に言ったエルノールは再び、ダークエルフの剣を見つめた。

「長い年月の間に隠し続けてきた神獣である“天空の王”が神の意向を無視するとは思えません。
 ならば、意図的にイオリさんに託したという事でしょう。」

「託した?
 ・・・俺に?」

「イオリさん。
 随分、信頼されてしまったものですね。」

 たった1人に運命を託すと言っているのだ。
 エルノールの顔色は良いとは言えない。

ーーー煮るなり焼くなり好きにしろ。

 ニヤリと笑うスカイヤの声が聞こえた様でイオリのコメカミがビキッと音を立てて引き攣った。

「一体、どうすりゃ良いですかあぁぁぁ!」

 声が届くすら分からないが、イオリは空の上のドラゴンに叫んだ。

 


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