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旅路 〜カプリース・天空の王〜
740〜記念〜 一方、その頃
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「ん?」
何かを感じたのか、フェンバインが分かりやすくキョロキョロと辺りを見回した。
「どうしました?」
象の獣人の大男が唐突にソワソワした様子に怪訝な顔をしたニコライが声を掛けた。
砂の国“デザリア”で国王ダマン・デザリアとの謁見を終え、ガレーの地を超えて“パライソの森”にやって来たニコライ達は、“ルーシュピケ”のエルフと獣人の代表者の2人との会談に挑んでいた。
「・・・あぁ、いや。
おい、爺さんよ。何だ今の?」
フェンバインが身震いするとエルフの代表者のハニエルを見下ろした。
「ふむ・・・。
人族の御方は気づかんかったかもしれんが、何処か遠くから何やら大きな生命の悲鳴を聞いた気がしたのだ。」
考え込むハニエルの言葉に要領の得ないニコライが顔を引き攣らせる。
「大きな生命の悲鳴?
大事ですか?」
「いや、そんな感じはしないな。
オイラも初めての経験だが、“パライソの主”が気にしていないのだから問題ないはずだ。」
フェンバインの首を振ると、ハニエルまでもが頷いた。
「客人達よ。
すまないな。
話を続けよう。」
ハニエルの視線を受けたニコライは隣に座る男に視線を送り頷いた。
砂の国より合流した男・・・それは、デザリアの筆頭魔法使いシモン・ヤティムだった。
「“ルーシュピケ”の民が人族を、どう思っているのかは理解しています。
しかし、ダークエルフ率いる“エルフの里”を相手にしなければいけない今、力添えを願いたい。」
ニコライとシモン・ヤティムの真っ直ぐな目にエルフのハニエルと象獣人のフェンバインは顔を合わせて微笑んだ。
「“デザリア”には恩がある。
それに、アースガイルのポーレット公爵家だったか?
我らは、その地からやってきた男に約束をした。
今こそ前を向くべき時なのだと、イオリに教えて貰ったのだ。」
ハニエルは、もう1人の客人に注目した。
終始、口を出さずに静かにしていた男はエルフの翁の視線を受け緊張した様に頭を下げた。
「“ミズガルド”の王弟イグナート・カレリン公爵殿。
今度こそ意味のある会談にしよう。
我らには話し合う事が沢山あるはずだ。」
以前と違い、エルフや獣人達が聞く耳を持ってくれていると感じたイグナートは目を見開いた。
何もかもが、あの真っ黒な青年のお陰であると気づくのに時間は掛からなかった。
「・・・ありがとうございます。」
イグナートは、そう言うだけで精一杯だった。
“ルーシュピケ”の思いの外の和やかな雰囲気に「ほうっ。」と安堵の息を吐いたニコライは木に背を預けていたリルラが心の底から誇らし気に微笑んでいるのを見つけるのだった。
何かを感じたのか、フェンバインが分かりやすくキョロキョロと辺りを見回した。
「どうしました?」
象の獣人の大男が唐突にソワソワした様子に怪訝な顔をしたニコライが声を掛けた。
砂の国“デザリア”で国王ダマン・デザリアとの謁見を終え、ガレーの地を超えて“パライソの森”にやって来たニコライ達は、“ルーシュピケ”のエルフと獣人の代表者の2人との会談に挑んでいた。
「・・・あぁ、いや。
おい、爺さんよ。何だ今の?」
フェンバインが身震いするとエルフの代表者のハニエルを見下ろした。
「ふむ・・・。
人族の御方は気づかんかったかもしれんが、何処か遠くから何やら大きな生命の悲鳴を聞いた気がしたのだ。」
考え込むハニエルの言葉に要領の得ないニコライが顔を引き攣らせる。
「大きな生命の悲鳴?
大事ですか?」
「いや、そんな感じはしないな。
オイラも初めての経験だが、“パライソの主”が気にしていないのだから問題ないはずだ。」
フェンバインの首を振ると、ハニエルまでもが頷いた。
「客人達よ。
すまないな。
話を続けよう。」
ハニエルの視線を受けたニコライは隣に座る男に視線を送り頷いた。
砂の国より合流した男・・・それは、デザリアの筆頭魔法使いシモン・ヤティムだった。
「“ルーシュピケ”の民が人族を、どう思っているのかは理解しています。
しかし、ダークエルフ率いる“エルフの里”を相手にしなければいけない今、力添えを願いたい。」
ニコライとシモン・ヤティムの真っ直ぐな目にエルフのハニエルと象獣人のフェンバインは顔を合わせて微笑んだ。
「“デザリア”には恩がある。
それに、アースガイルのポーレット公爵家だったか?
我らは、その地からやってきた男に約束をした。
今こそ前を向くべき時なのだと、イオリに教えて貰ったのだ。」
ハニエルは、もう1人の客人に注目した。
終始、口を出さずに静かにしていた男はエルフの翁の視線を受け緊張した様に頭を下げた。
「“ミズガルド”の王弟イグナート・カレリン公爵殿。
今度こそ意味のある会談にしよう。
我らには話し合う事が沢山あるはずだ。」
以前と違い、エルフや獣人達が聞く耳を持ってくれていると感じたイグナートは目を見開いた。
何もかもが、あの真っ黒な青年のお陰であると気づくのに時間は掛からなかった。
「・・・ありがとうございます。」
イグナートは、そう言うだけで精一杯だった。
“ルーシュピケ”の思いの外の和やかな雰囲気に「ほうっ。」と安堵の息を吐いたニコライは木に背を預けていたリルラが心の底から誇らし気に微笑んでいるのを見つけるのだった。
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