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旅路 〜カプリース・天空の王〜
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混沌とした時代。
世界に宣戦布告をしたダークエルフ・ルミエールに人族、獣人、エルフ族・・・様々な種族が立ち上がった。
ダークエルフの強大な力は徐々に彼ら連合軍の力を削ぎ、甚大な被害を生み始めていった。
そこに現れたのがドラゴン族だった。
他種族の争いに興味のなかったドラゴン達であったが、騒々しい世界情勢にウンザリしたのだ。
『まぁ、実際の話は、当時ダークエルフ率いる“エルフの里”の奴らが、西の山を根城にしていたドラゴンの居眠りを邪魔した上に尻尾を槍で突っついた事から始まった。』
「槍で突っついた?」
スカイヤは芳醇な香りのブランデーに舌鼓を打ちながら、イオリが盛り付けた唐揚げを口に放り込んだ。
『そうだ。
岩の様な塊が尻尾だと思わなかったんだろう。
何だ、これ?
と興味本位で突っついたそうだ。』
「それでドラゴンが怒っちゃったの?」
イオリは大きなフライパンを振りながらスカイヤの話を聞いていた。
『元々、ドラゴンなんてのは荒っぽい奴らなのさ。
寧ろ、ダークエルフが現れるまではドラゴンが引き起こした事件の方が問題だった。
他種族の者達はそれを“天災”と呼んだのだ。』
ドラゴンが移動するだけで竜巻が起こり、餌を獲ようするだけで大地が変形したりするなど、人々の生活は脅かされる事もしばしばだった。
ーーー他種族との共存が難しいかった。
“知識への献身”ジェモーが言っていたのはこの事だったのだろう。
とにかく、当時のドラゴン達はキレたのだ。
この煩わしい元凶が“エルフの里”と言う辺境の種族にあると知ると、猪突猛進の如くの戦いで大戦争を掻き回したのだった。
『ドラゴンが戦争を終わらせる・・・。
そう上手い話ではなかった。』
スカイヤはジッとブランデーに映る自分の顔を見つめて呟いた。
『ダークエルフ・ルミエールの力はドラゴンをも凌いで見せたのだ。
雲を操り、大雨を降らせ雷を落としてはドラゴン達の命を奪っていった。』
この大戦争で当時のドラゴン達の被害も大きかったのだ。
『ドラゴン達がカプリースと言う魔境に引っ込んだのは、そんな事情もあったのだ。
もう、面倒事に巻き込まれるゴメンだと・・・。』
「スカイヤも戦ったんですか?」
イオリが問い掛ければ、スカイヤは『ハッ!』と笑った。
『それはもう、呆れるほどにな。
ワシも若かった。
あの時代に生き、他種族と共にダークエルフと戦ったドラゴン達は“始祖のドラゴン”と呼ばれる様になった。
残っているのはワシとヴァルソーくらいなもんだろうさ。』
恥ずかしいのか、ブランデーをグビッと飲み干し、おかわりを求めるスカイヤであったが、何処か懐かしそうに眼を細めた。
『生き残ったドラゴン達は楽園を求めて絶対神より“カプリース”を得た。
大地に降りた奴らと共に行動する道もあったが、ワシは空に残る事を選んだのだ。』
スカイヤの目は遠くの何かを見つめるように霞を帯びている様だった。
世界に宣戦布告をしたダークエルフ・ルミエールに人族、獣人、エルフ族・・・様々な種族が立ち上がった。
ダークエルフの強大な力は徐々に彼ら連合軍の力を削ぎ、甚大な被害を生み始めていった。
そこに現れたのがドラゴン族だった。
他種族の争いに興味のなかったドラゴン達であったが、騒々しい世界情勢にウンザリしたのだ。
『まぁ、実際の話は、当時ダークエルフ率いる“エルフの里”の奴らが、西の山を根城にしていたドラゴンの居眠りを邪魔した上に尻尾を槍で突っついた事から始まった。』
「槍で突っついた?」
スカイヤは芳醇な香りのブランデーに舌鼓を打ちながら、イオリが盛り付けた唐揚げを口に放り込んだ。
『そうだ。
岩の様な塊が尻尾だと思わなかったんだろう。
何だ、これ?
と興味本位で突っついたそうだ。』
「それでドラゴンが怒っちゃったの?」
イオリは大きなフライパンを振りながらスカイヤの話を聞いていた。
『元々、ドラゴンなんてのは荒っぽい奴らなのさ。
寧ろ、ダークエルフが現れるまではドラゴンが引き起こした事件の方が問題だった。
他種族の者達はそれを“天災”と呼んだのだ。』
ドラゴンが移動するだけで竜巻が起こり、餌を獲ようするだけで大地が変形したりするなど、人々の生活は脅かされる事もしばしばだった。
ーーー他種族との共存が難しいかった。
“知識への献身”ジェモーが言っていたのはこの事だったのだろう。
とにかく、当時のドラゴン達はキレたのだ。
この煩わしい元凶が“エルフの里”と言う辺境の種族にあると知ると、猪突猛進の如くの戦いで大戦争を掻き回したのだった。
『ドラゴンが戦争を終わらせる・・・。
そう上手い話ではなかった。』
スカイヤはジッとブランデーに映る自分の顔を見つめて呟いた。
『ダークエルフ・ルミエールの力はドラゴンをも凌いで見せたのだ。
雲を操り、大雨を降らせ雷を落としてはドラゴン達の命を奪っていった。』
この大戦争で当時のドラゴン達の被害も大きかったのだ。
『ドラゴン達がカプリースと言う魔境に引っ込んだのは、そんな事情もあったのだ。
もう、面倒事に巻き込まれるゴメンだと・・・。』
「スカイヤも戦ったんですか?」
イオリが問い掛ければ、スカイヤは『ハッ!』と笑った。
『それはもう、呆れるほどにな。
ワシも若かった。
あの時代に生き、他種族と共にダークエルフと戦ったドラゴン達は“始祖のドラゴン”と呼ばれる様になった。
残っているのはワシとヴァルソーくらいなもんだろうさ。』
恥ずかしいのか、ブランデーをグビッと飲み干し、おかわりを求めるスカイヤであったが、何処か懐かしそうに眼を細めた。
『生き残ったドラゴン達は楽園を求めて絶対神より“カプリース”を得た。
大地に降りた奴らと共に行動する道もあったが、ワシは空に残る事を選んだのだ。』
スカイヤの目は遠くの何かを見つめるように霞を帯びている様だった。
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